表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

第9話

午後。

控室に戻ったカタリナは、いつものように背筋を伸ばして座っていた。

だが、どこか落ち着かない空気を纏っている。


「……あの、セシル?」

カタリナの声は、ほんの少し震えていた。


廊下の影から現れたセシルは、深呼吸ひとつ。

そして彼女の前に丁寧に跪く。


「お嬢様。……大事なお知らせがあります」


「な、何ですか……?」


セシルは手に持つ書類と小さな魔導式水晶球を差し出す。


「カタリナ様を陥れた、全ての“証拠”を確認しました」


カタリナの瞳が揺れる。

息を呑む音まで、彼女の耳に届く。


「……私……本当に、無実なんですか……?」


「はい。

すべての魔力痕と映像を解析した結果、書類の改ざんはリリア嬢によるものです」


セシルが水晶球を淡く光らせると、昨夜の廊下でのリリアとニーナの動きが再現される。


カタリナは手を口に当て、思わず小さな声を漏らした。


「……っ……そ、そう……なの……」


セシルはそっと彼女の手を取り、握る。

背が大きい彼の手は、いつもよりずっと温かく、力強い。


「お嬢様、もう心配は無用です。

誰も、カタリナ様を責めません。私は……ずっと、守り続けます」


「……セシル……ありがとう……」


涙をこらえていたカタリナが、思わず肩を震わせた。

セシルはそっと膝に手を置き、彼女の背中を軽くさすりながら優しく微笑む。


「……もう泣かなくても大丈夫ですよ」

耳元で低く囁くその声に、カタリナの心はほぐれていく。


「……本当に……本当に、あなたがいてくれてよかった」


「お嬢様が無事でいてくださるなら、私は何もいりません」


背の高さで包み込むように座るセシル。

カタリナは思わず身を寄せ、頭を彼の肩にのせる。


二人だけの静かな時間。

事件の影はまだ消えないが、少なくともこの瞬間、カタリナの心は守られたのだ。


「……ねぇ、セシル」

カタリナが小さく呟く。


「はい、お嬢様?」


「……私……もう少し、甘えてもいい?」


「もちろんです。

お嬢様が望むなら、私は一生、傍にいます」


二人の距離が自然に縮まり、部屋には静かで温かい幸福感が漂った。


最後まで読んでくださりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ