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BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
RESET Project編
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遭逢 - 水瀬 友紀②

さぁ、どうしよう?


見知らぬ女子に話しかけられて、僕は動けないでいる。


あの退屈な毎日を過ごしていた頃の僕なら、気づかないふりをしてそのまま校門を通っていたと思う。


でも、その選択を迷うことなくできないのが今の僕だ。


こういう知らない人に話しかけられた場合、普段なら2つの可能性しかない。


1番確率の高い1つ目は、こっちの勘違い。


今は授業開始15分前くらいだ。校門の付近には僕以外の生徒もちらほらいる。


他の知り合いの生徒に声を掛けた可能性があるんだ。ていうか、こういったシチュエーションのほとんどがこれ。


何の面識もない僕に話しかける可能性は限りなく低い。


そして、2つ目。僕が考えるもう1つの可能性。


それは、勘違いではなく本当に用事があるパターン。告白してくることも僅かだけどあるにはあると思う。


ひょっとすると、ついにモテ期が?


ま、まぁ…、そういう浮ついた話は置いといて…。


重要なのはここからだ。今の()()は3つ目の可能性も考慮しないといけない。



「ええと、聞こえてる? 校門の前で硬直してる君に言ってるんだけど」



すぐ後ろから例の女子の声が聞こえてくる。


僕を断定してきたということは、1つ目の可能性は無くなった。


だとすると、2つ目か今言おうとした3つ目の可能性になる。


僕は恐る恐る声のする方へ、ゆっくりと身体を向けていく。


僕が1番恐れているのは3つ目の可能性だ。


それは……、






半年ぶりの敵の襲来。






これがもし、思い過ごしだったとしてもまだ恐れるべきことはある。


仮に2つ目の可能性、本当に用事があった場合だとしよう。それはつまり、突然のモテ期到来と知らない子からの告白…。


普通に考えたら、それはめっちゃ喜ばしいことだと思う。退屈な毎日は一変し、僕はリア充たちの仲間入りだ。


ただ、1つだけ問題が…。


彼女のほうにただ振り返るだけのこの瞬間がとても長く感じられた。


恐怖、警戒心、不安…。僕の中にあるこれらの感情がそうさせたんだろう。


敵に対する恐怖と警戒心。そして、告白に対する不安。


なんで不安なのかって?


僕は……、




まだ彼女の顔や姿を見てないんだ…。




タイプじゃなかったらどうしよう?


告白って凄く勇気がいるものだと思う。それを断るってなると…。


いよいよ、見知らぬ女子との対面だ。僕の身体は完全に振り返り、校門に背を向けた。



「めっちゃゆっくりね…。マイペースって感じ?」



首を傾げる彼女を見て、僕は安心する。ひとまず、2つ目の可能性に対する不安はなくなった。


丸い輪郭にぱっちりとした二重瞼。黒髪で少し短めのポニーテール。


服装はグレーの前ポケット付きのパーカーに、同系色のスウェットパンツ。結構、ラフな感じだ。


身長は155センチ行かないくらいかな? ちょうど170センチある僕の顔1つ分くらい彼女は小さい。


そんな彼女は一応、ストライクゾーンに入っている。ボールかストライクで言うと、まぁストライクって感じ。


いや、勇気を出して告白してくれる人のことをそんな風に思うのはダメだ。


僕も誠意を持って応えないと…!



「ええと、大丈夫?」



考え事をしている僕に対し、首を傾げる彼女。


「あ、あの……!」


僕は若干の恥ずかしさを抱えながらも、彼女の目をしっかりと見据えた。



「僕で……良ければ………お願いします」



心臓の鼓動が早くなるのを感じる。多分、顔も赤くなっているに違いない。


恥ずかしさが最高潮に達し、僕は思わず彼女から目をそらした。


告白の返事をするだけでこの緊張感だ。だとしたら、彼女は一体どれだけの緊張と覚悟を持って僕に…。




いや、ちょっと待った。




彼女に声を掛けられたところまで記憶をさかのぼろう。


そして、彼女が僕に発した言葉を1つ1つ思い出すんだ。


彼女が発した言葉は決して多くはない。それなのに思い出せない。


記憶にないんだ…。ど、どのタイミングなんだ?



いつ彼女が僕に告白したんだ?



「ほんとに? それは良かったわ!」


僕の返事に対し、彼女は両手を合わして目をキラキラとさせた。


やってしまった…。完全なるフライングをしてしまったんだ。


いや、そもそも彼女は元から告白しようなんて思ってなかったのかも…。



「ちょっと聞きたいことがあるの。ええと……何て言ったら良いかな……」



僕をモテさせるために偽札を渡してきたけいが頭に浮かぶ。


けい、僕がモテるのはしばらく先になりそうだ…。


「最近、君の周りで不吉なこととか起こってない?」


彼女は少し考えてから僕にそう聞いた。


不吉なこと? そんなの考えるまでもない。起きまくりだよ…。最近っていうのがどの範囲かにもよるけど。


けいの鬼に追いかけ回され、3校との学生大戦で殺されかけた。3人の神憑かみつきに乗っ取られた生徒会とも戦ったよ。


まぁ、僕は見てるだけのことが多いけど…。


何人かは怪我をしたし、男虎おのとら先生は死んだ。


これらの出来事は誰がどう聞いても不吉だと答えると思う。


でも、たぶん彼女はどの出来事も知らない。国民がパニックにならないよう、テレビでは報道されなかったから。


それに、“神の力”とか“唾液で滑る少年”とかってニュースで言うのも何か変だと思うし…。


“緑の災害の原因は吉波高校に通っている樹神こだまくんのブロッコリーでした”なんて絶対、報道しないだろう。



「ほんとマイペースね…。そんなに考えること?」



顔をしかめ、地面を足の爪先でとんとんと叩く彼女。


彼女には伏せておこう。言ったとしても信じてもらえないと思うから。


それに告白じゃないとしたら3つ目…、敵の可能性だってある。


特質や神憑かみつきなどの情報に、探りを入れようとしているのかもしれない。



「魂抜けてるの? まぁ、ほんとに抜けてたら見えるんだけどね…。あ、今の忘れて! 冗談よ、冗談! 私、何も見えないわ!」



固まっている僕を見てニヤけていた彼女は、途端に焦りの表情を見せて何かを取り繕おうとする。


やっぱり怪しい。今の言動で敵の可能性はより高くなった。


ここは無難に、何も起こってないと言うのが正解だ。


あ、そういえばこの子の名前…、まだ聞いてなかったな。名前聞くくらいならまずいことにはならないよね?


何もないことを伝えた後で名前を聞く。よし、これで行こう!



「き、君の名前は……?」


「え、何、映画の話? 先に私の質問に答えてくれる?!」



順番、間違えた…。


ダメだ、なんでこんな緊張するんだ? 男女共学の高校に通っているクセに、なんで僕は女性慣れしてないんだよ!


あ、そうだ! こういう恋愛関連のことはれいに聞けば良い。


確か彼は、恋愛経験豊富だって自分で言ってたから。堅苦しい生真面目系男子って意外とモテるのかな?


あ、また魂抜けてるとか言われる前に早く答えないと。


僕が彼女に返事をしようと顔を上げたときには既に遅かった。


グレーのパーカーを着た彼女は、前ポケットに手を突っ込んで僕に背中を向けていたんだ。


あぁ、僕はフラれてしまったんだ…。ぎりぎりストライクの女の子に。


きっと脳の処理速度が遅い超のろま男子と思われたに違いない。


れい、彼に女性慣れしていないことをもっと早い段階で相談していれば…。


けい、あのとき君がくれた偽札を受け取っていれば違う結果になったかもしれない。



「ねぇ……あの人、知り合い?」



彼女は頭を抱える僕を見ながら、前方を指さしてそう言った。


授業開始までもう5分前くらいだろうか?


彼女の指の先にいるのは、自転車を立ち漕ぎしている吉波よしなみ高校の生徒だ。


そして、僕の友達であり“BREAKERZブレイカーズ”の1人でもある能力持ちの高校生。


空中からの攻撃で封殺する孤高のオナラ使い、日下部くさかべ みやびがやや焦った顔で学校に向かってきている。



「友達だけど、彼に何の用事?」



僕の中で警戒心が再び湧き上がった。


まさか、狙いは日下部くさかべ? それとも、シリウス?


景川かげかわに憑いていた神もシリウスに用があったみたいだけど、彼女もそうなのか?



「顔、恐いんだけど…。友達なのね? だから……君にも……。訳のわからないこと聞いてごめんね」



さっきまでのサバサバしている雰囲気とは打って変わり、彼女は真剣な眼差しを日下部くさかべに送る。


恐い……本当に恐い。今まで男虎おのとら先生以外死んでないのは奇跡だ。


また何か起これば、今度こそ死人や大怪我をする人が出るかもしれない。


全く関係ない普通の生徒や一般人を巻き込む可能性も…。


「君の目的は何? なんで校門の辺りをうろうろしていたんだ?」


僕は恐る恐る彼女に理由を聞く。額に冷たい汗が滲むのを感じた。


彼女はこちらに振り返らず、まだ遠くにいる日下部くさかべを見つめたまま力強くこう言った。




「安心して。君と……君の友達を必ず救ってあげるから」





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