真相 - 文月 慶①
全員、御影の能力によって体育館の外へ吹き飛ばされた。
入院している的場と朧月、停学中の新庄を除いたジミーズの総戦力でも厳しかったか。
ジミーズ…、よくこんなダサい名前にしようと思ったな。
まぁ、彼女の能力は数で何とかなるようなものじゃないから仕方ない。
今のところ、僕の予想通りに進んでいる。協力してくれた水瀬の母親には感謝しているよ。
まぁ、いくつか不測の事態も起こりかけたが…。
主に水瀬、お前のせいだ。お前の行動全てが僕をヒヤヒヤさせた。
中学からの同期ならもっと信頼してほしい。僕が人を死なせるようなことをするわけないだろ。
御影たちは人を殺すような真似はしない。例外を除いては…。
僕は体育館の床に広がった血だまりに目をやる。
あれはさっき踏み潰された不知火の血だ。
僕は獅子王たちの戦いを監視していた。不知火が不死身であることを伝えていたから潰したんだろう。
この程度ではこいつは死なない。再生が始まる前に血液を採取させてもらう。
僕はホログラムでここにいるから、直接触ることはできない。小型のロボットを転送し採取させるつもりだ。
水瀬の面接に来たと聞いたときから、こいつには興味があった。
あのとき証明こそできなかったが、不死身が本当ならサンプルを採取したいと思っていたんだ。
僕はカプセル型転送装置を机の引き出しから取りだし、採取ロボットを入れて発射した。ホログラムの電源を入れたまま。
転送装置が刑務所の天井に小さな穴を空ける。
僕がこの天井を突き破って抜け出したのはまだ数週間前の話か。この短期間で色々起こりすぎだ。
御影「何をしているの? その動き、とても変よ」
ホログラムの僕を見て、顔をしかめる御影。
体育館にいる彼女からは僕がパントマイムでもしているように見えたんだろうな。
でも、僕の動きを不審がってる様子はない。弁明を求められると面倒だから助かる。
僕は不知火の血だまりを指さした。
文月「奴の血液を採取しようと思いまして。不死の身体…、医学にあまり興味はないが、研究する価値はある」
採取した血液を培養して都合の良いようにDNAを書きかえる。そして、他人の身体に上手く適合させれば…。
不知火、お前は不死以外にも何かある。あの成体時の強さは圧巻だった。
それらも詳しく調べさせてもらうぞ。
御影「そう……。良い研究になると良いわね…。参考にはならないかもしれないけど、彼について私たちが知っていることを話すわ」
そう言って彼女は、不知火について話し始めた。
あぁ、わかってる。御影が報酬から話を逸らそうとしているのはお見通しだ。
だが、聞いておいたほうが良いだろう。あいつの過去から何かわかることがあるかもしれない。
不知火以外の特質や神憑に関することでも何かわかれば…。
そういう考えがあって、彼女の話を黙って聞いてやったんだ。決して相手の思惑に引っかかったわけじゃない。
___不知火 真羽の過去。
まず、こいつについては、不明なことが多いのが大前提だ。
国の戸籍にも登録されていない。ある団体が山奥で発見し保護しなかったら、こいつの存在は誰にも認知されなかった可能性がある。
もちろん両親は不明。発見したときには既に4、5歳くらいの見た目で身の回りにあるものを見境なく口に運んでいたらしい。
--お腹を空かせている。捨てられたのか? このまま放っておけば死んでしまう…。
ある団体に所属していた1人の人間がそう思い、自分たちの団体の施設に連れ帰った。
さっきも言ったが、僕は不知火と獅子王たちの戦いを一部始終見ている。
あいつが戦闘で使った脱皮は、当初から確認されていた。自切という行動もだ。
自切というのは、節足動物やトカゲなどが外敵から逃げるためにする、足や尾を自ら切り捨てる行動のこと。
人に触られることをやけに嫌い、腕を掴まれた際は腕を引きちぎって逃走していた。
抱きしめられたりしたときには脱皮して拘束を逃れようとしたらしい。
そんな彼が気味悪がられるのに、そう時間はかからなかった。
--普通の子どもじゃない。悪魔に取り憑かれている。
そんな感じのことを思ったのか、彼らは不知火を施設の地下に幽閉したそうだ。
十数年に渡って幽閉されていた彼だったが、ある日転機が訪れる。
その団体の中で最も権力のある一家の娘が不知火を見てこう言ったらしい。
御影「“かわいそう”ってね。その娘のお陰で彼は解放され、この学校に来たのよ」
なるほど…。そいつのたった一言で解放されたのか。
10年以上、誰にもそう言われなかった不知火には同情する。
さぁ、続きを…。
御影「私たちが知っているのはここまでよ。このことを知ったのはつい最近…。まぁ、とにかく良かったわね」
ちょっと待て。無理矢理終わらせようとするな。
ある団体とは何者だ? なんで、この学校にいきなり送り込まれた?
この学校に集まってきたり、発現したりする特質や神憑と何か関係があるのか?
…………。
落ち着け、これは罠だ。
あえて疑問点を残すことで質問させようとしているな。
そして、その質問に答えて新たな疑問点をまた残す。それに対してまた質問するの無限ループを狙っている。
報酬から話を逸らすにはもってこいの作戦。
そして、生徒たちが恐怖に屈するまでの…、猿渡が意識を取り戻すまでの時間稼ぎにもなる。
僕がそんな子供騙しに引っかかるわけがない。
「ふっ……」
思わず笑みが零れてしまう。
そのお堅い頭をほぐしてよく考えた時間稼ぎがこんなものとはな。
僕は御影に手を差し出し、強く言い放った。
「その手には乗らない。早く報酬を渡せ」
彼女は顔をしかめて首を真横に振る。
契約違反をするつもりか? 応酬を受けとった僕からの報復を恐れている?
御影「あれを個人が扱うのは危険すぎる」
それが、お前らの対応か…。最初から信用していなかったが、どこか期待していた自分もいた。
だから、もう一度…、あのときのように全てを捨てる気で契約したんだ。
彼女は悪びれず、言葉を連ねた。
御影「騙して悪いと思っているわ。協力してくれたことにこちらは感謝をしている。他に何か欲しいものは? それで手をうちましょう」
全ての真相を話そう。
彼女の正体や目的、僕が生徒会側についていた理由と与えられた任務など。
水瀬の母親に何を協力してもらったのか。
獅子王たちが戦った場所は何なのか。
僕が知っている範囲で全て話すとしよう。




