死の閃光 - 羽柴 徹③
私が貴方たち、神憑を始末する理由。
簡単に言えば、神憑は災いを引き寄せるからです。誰かが言ったわけではなく、科学的根拠もない。
つまり、これは私の持論。はっきり言って自分勝手な憶測でしかありません。
そんな理由で殺されるのは納得いかないでしょうが、私はそう言い切れるほどの経験をしているのです。
貴方たちがこの能力のことを何と言っているかはわかりませんが、私たちは“神憑”と呼んでいます。
そう名付けたのは、最初の学生大戦を起こした人物。当時、吉波高校で最強の存在だった者。
あまり言いたくはありませんが、彼は私の仲の良い友達の1人でした。
神憑。神に憑かれた者。あるいは神に何かしらの力を与えられた者と言った意味。
私たちは最初、普通の人間だったのです。この吉波高校に来るまでは…。
私は当時、最強の彼を含めた4人の人物と仲が良かった。ほとんどが地元の中学校から集まってきている生徒たちで既にグループが出来上がっていました。
別の地域から来た私がクラスで孤立していたところ、彼らに声をかけられ共に過ごすように。
楽しい学校生活でした。最初は声をかけてくれた彼らと仲良くなり、気づけばクラス全員とも話せるようになっていました。
私のクラスは皆、優しく親切な人たちばかりで非常に居心地が良かった。
そんな充実した日々を送っていたある日、悲劇が起こるのです。
「…………。いや、突然の裏切りとかイジメとか、そんな胸クソの悪い話ではないですよ」
私と新庄君は、数メートルの距離をあけて対峙していた。
彼の後ろには、片膝を着いて私を睨む剣崎君、怪我をして座り込んでいる的場君と朧月君の3人が近くで固まっている。
新庄「えっと……、話長すぎてほとんどわかってないっす」
欠伸をしながら首を傾げ、頭をぽりぽりと掻いている新庄君。
「貴方が聞いてきたのですよ? 最後まで聞いて理解する努力をしなさい。まだ話は半分も終わっていません」
さて、続きを話しますか。
その悲劇とは、私の教室内で起こった無差別殺人事件です。
ある日の授業中、不審な男が刃物を持って教室に入ってきました。
そして、そいつは近くにいる生徒から次々に刺し殺していきます。
丸腰の私の抵抗は虚しく、脇腹を深く刺され、感じたことのない痛みに悶絶しました。
あぁ、私は死んでしまうんだ…。
刺された脇腹からは血がドクドクと流れ出し、床を真っ赤に染め上げる。視界もだんだんと暗くなっていき、手足の感覚も徐々に薄れていきました。
他の生徒を滅多刺しにしている男の足元には仲の良かった4人が血を流し転がっている。
死に対する絶望や悲しみ、恐怖。そして、親友を傷つけた奴に対する憤怒の感情。
あいつを……殺してやりたい。
あいつが………私たちを刺した分だけの苦しみを味合わせてから……。
いっそ死んだほうがマシだと…。一思いに殺してくれと懇願するほどの激痛を……。
私は奴に震える手を伸ばした。瀕死の状態で何もできないとわかっていても何か……一矢を報いてやりたくて。
死ね……。
死ね死ね死ねぇ………。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえぇ!
死いいぃねえええええええええぇぇぇぇぇぇ!!
そこからはあまり覚えていません。
遠のく意識の中、私が見たのは紫色の光と首から上が無くなった殺人犯の身体。
「次に目が覚めたのは、病院のベッドの上でした」
新庄「あ、はい、あざ~っす。うん……理由はわかりました、はい」
彼は後ろを確認し、私の話を微妙なところで遮った。まだ核心に迫っていないのですが…。
「良いのですか? まだ話しきっていませんよ? 貴方のお友達は訳もわからないまま、私に始末されることになりますが…」
彼は前方にいる私を見据え、圧のある声でこう答える。
新庄「良いっすよ___
もう充分、時間稼げたんで……」
なるほど、理由を聞き出したのは時間稼ぎですか。いや、もしくは私が話している内に平静を取り戻し、戦う準備をしていた?
もし、そうだとすれば、今まで平和に暮らしていた高校生とは思えない胆力です。
ですが、何のための時間稼ぎでしょうか? もしや、他にも仲間がいる…?
さっと辺りを見渡したが、増援は見当たらない。
だが、いつの間にか彼の後ろ側に複数の砂山が出来上がっていた。どれも膝の下くらいまであるものばかりですね。
「まさか、その砂山を作るために時間稼ぎを? 最期に砂遊びをしたかったとでも言うのですか?」
まぁ、何をしようとしているのかを始める前から答えるわけないか。
ただただ砂山を作っていたわけではないはず。ああは言ったものの、高校生にもなって死ぬ間際にしたいことが砂遊びなんてことは恐らくないでしょう。
私は学生大戦を一部始終、校舎から見ていました。
的場君、彼が砂を蹴り上げ何度も弓矢を撃ち落としていたことは知っています。
新庄「俺のダチ、殺すってんなら…悪りぃけど容赦しねぇぞ」
彼は私の質問を無視し、右手に持ったバットを肩に乗せてこちらを睨んできた。
もの凄い威圧感ですね。まさか、神憑ではないただの生徒に尻込みするとは…。
新庄「凌、行くぞ」
今の発言で、あの砂山で何をしようとしているかおおよそ理解できた。
やはり鍵になるのは的場君、あの砂山は彼の力を発揮するためでしょう。
的場「的場凌! メンタル完全復活! イタズラ大作戦・高校生エディション………開始じゃぁぁ!」
彼が立ち上がりそう叫ぶと同時に、新庄君がバットを持って向かってくる。
そして、的場君。彼は私に片方の太ももを撃たれたにも関わらず立ち上がった。
地面を踏みしめるだけで激痛が走るはず。とても、元気ですね。
貴方に与えられた力は、その無限に湧き上がる元気でしょうか?
ですが、残念なことに…、その作戦は私に通用しそうにありません。
ただの金属バットで私を倒すのは無理です。そして、あの砂山は私の目にかけて潰すといった感じですかね?
私は大事な生徒の命を奪い、如何なる罰であっても受ける覚悟でここにいるのです。
そんな悪ガキが思いつくようなことで私が怯むわけがない。
新庄君、悪いが貴方には気絶してもらいます。
貴方のバットを受け流し、首に手刀を入れ、気を失っている間に神憑の命を奪って死体を回収する。
彼にトラウマを植えつけたくありませんから、さっさと終わらせてしまいましょう。
ここで私たち“神憑”による負の連鎖を断ち切ります。




