面接 - 水瀬 友紀⑤
はぁ……、かなり疲れたな……。
授業が終わって、くたくたになりながらも再び生徒指導室の席に着く。
今、やっと昼休みになったところだ。1日ってこんなに長かった?
個性的な人ばかりでかなり疲れた。自分から能力持ってますって言いにくるくらいだから変な人が多いんだろう。
内申点狙いで嘘をついてる人もいる。それを見分けるのも一苦労だ。
朝の休み時間のときに来た小さい子なんて大変だった。
小さい子って言っても同級生なんだけど。
彼の名前は、不知火 真羽と言うらしい。
彼の能力は、彼いわく底知れない生命力と再生能力。
何と彼はその絶対的な生命力のお陰で何があっても死なないらしい。
手足を切り落とされようが、頭を吹き飛ばされようが、欠損した部分は瞬時に再生するとのこと。
これが本当なら生物学者もびっくりな能力だ。
だけど口でなら何とでも言える。現に悪ふざけで来た生徒や内申点欲しさに嘘をつく生徒も何人かいた。
彼に限らず、この面接では自分で言った能力を目の前で証明してもらうことにしていたんだ。
証明できれば作戦に参加するかどうかは関係なく合格。校長先生に申請し内申点を上げてもらう。
彼に自身の能力を証明するよう伝えたら笑顔でポケットからナイフを取りだし、自分の首の頸動脈を切ろうとしたんだ。
もう僕は必死になって彼を取り抑えたよ…。もし、彼の思い込みで本当はそんな力なかったら死んでしまう。
不知火『何をするんだ! 放せよ! 僕の無限の生命力は毎日飲んでいるプロテインから来ているんだ! 嘘なんかじゃない! 証明させろ!』
と不可解なことを叫びながらジタバタと暴れた。
僕も力は強いほうじゃない。いくら貧相な彼でも暴れられると抑えるのは大変だった。
たまたま先生が通りかかって助けてくれなかったら、どうなっていたことやら…。
その後も何人か面接して今のところ2人、本物を見つけている。
けれど、今回の作戦には不向きだった。
後1人、適任が見つかればいい。だけど、その1人が中々見つからない。
明日までに見つけないとまずいのに。時間は刻一刻と迫っていて、だんだんと余裕はなくなってきている。
コンコンコンコン!
ドアがかなり強めにノックされた。昼休みになってからは初めてだ。
疲れてる場合じゃないな。早く適任者を見つけないと…。
「どうぞ、お入りください」
ドン!
僕がドアに向かって返事をするのとほぼ同時に、勢いよくドアが開かれた。
あぁ、彼を見るだけでパチンコ店内のBGMが流れてくる気がする。
パチンコ屋、行ったことないけど…。
そこに立っていたのは僕の知っている生徒。
悪い意味で、鬼ごっこで大活躍した同じクラスの樹神 寛海だ。
樹神「うぃ~っす! 水瀬さん、繁盛してまっか~?」
彼は大げさに手を上げながら、僕の前にやって来た。
早く追いださないと彼を相手するだけで昼休みが終わってしまう。
「樹神、悪いな。パチンコの話はまた今度にしよう。今はそれどころじゃないんだ」
樹神、君がパチンコについて語りたいのはわかるけど…。パチンコネタに付き合うのは、学生大戦を未然に防いだ後だ。
僕の発言に対して、彼は慌てたような顔をして両手を振る。
樹神「え? 違う違う! 俺は面接に来たんだよ! パチンコは来月の小遣い貰うまではお預けっすわ!」
………え? 親に貰った小遣いでパチンコやってたんだ。
てっきり自分でバイトして貯めたお金でしてたのかと思った。
パチンコの話じゃない? 本当に面接に来たのか。う~ん…、彼に何か力があるとは思えないけど。
まぁ一応、聞いてあげよう。
「あぁ、そうなんだ。ええと…じゃあ、自分の能力についてまずは説明してくれるかな?」
“俺の能力は確変操作だぜ”とかしょうもないこと言ったらぶっ飛ばすよ?
樹神は得意気に膨れあがった髪の毛を触りながら、能力について説明し始めた。
樹神「まぁ、1つ目はアフロブレイクだな! この髪型で頭突きしたら………ヤバい」
ヤバいって威力がかな? 髪型で頭突きの威力が変動するとは思えないけど…。
変動……? 確……変……?
まずい、彼といるだけで僕もパチンコ中毒になってしまいそうだ。
てか、アフロブレイクって……鬼に向かってただ叫んでただけじゃないか。
さっさと切り上げよう。多分、樹神は作戦に使えない。
樹神「でぇ~2つ目は……えー、何て言ったらいいんだ?」
マイペースな樹神は、両手で髪の毛をフサフサと触りながらゆっくり考えている。
早く言ってくれ! 休憩時間の長い昼休みとは言っても、このペースじゃすぐに時間がなくなる。
樹神「ええとなぁ、俺が地面に埋まるって感じ?」
………は? 何言ってるんだ? 全く意味がわからない。
ドン!
机に勢いよく手をついて僕は立ち上がった。
「冷やかしならやめてくれ! こっちは時間に追われてるんだ」
樹神「違うって! 説明しづらいんだよ! 俺が地面に埋まって巨大ブロッコリーを大量に養殖してブロッコリー王国を造るんだ!」
ダメだ、不採用だ。不採用というか今すぐ追い払わないと……。
彼の言ってることが全くもって理解できない。彼の頭の中は、お花畑ならぬブロッコリー畑だ。
帰ってもらおう。
「お前、採用」
僕が彼に不採用と伝えようとしたとき、ちょうど開きっぱなしになっていたドアのほうから声が聞こえてきた。
生徒指導室のドアの前にいたのは、皇 尚人。
いつの間にいたのか、彼は腕を組んでドアにもたれ掛かっている。
樹神「え?! マジ? やったー! これで勉強大嫌いな俺でも進学できるぜぇ!」
僕と皇の間で、飛び跳ねてガッツポーズする樹神。
何だって? 採用…? いや、どう考えても怪しいだろ。
それにまだブロッコリー的な能力を証明してもらっていない!
皇は樹神のことを知らないと思う。でも、同じクラスの僕は知っている。
彼と今まで一緒に過ごしてきたけど、能力を持っているようには思えない。
皇は人さし指を樹神に向けてピンと立てた。
皇「ただし、今日の放課後、水瀬の教室に来い。そして俺たちの言うことに従え。逆らえばお前は不合格だ」
「ま、待て……!」
僕は採用の方向で話を進めようとする彼を止めようと手を伸ばすけど…。
樹神「え、じゃ、俺の教室じゃん。放課後残れば言いんだな? りょうか~い! ふぉ~!」
樹神は歓喜の奇声を上げながら生徒指導室から出ていった。
マジかよ……最悪だ。僕は頭を抱えて唸る。
皇「どうしたぁ? これで役者は揃っただろ?」
僕は、樹神の素性と彼の言った能力の証明をさせてないことを伝えた。
そして…彼も多分、面接に来た多くの生徒と同じで、内申点のために嘘をついてるだけだと言うことも。
しかし、皇はいつものニヤついた顔で平然と答えた。
皇「一部始終、見てたから全部知っているぜ。あのアホみたいな奴があんな嘘を思いつくと思うか? 勘だがあれはマジだ。俺たちが欲しかった人を傷つけずに足止めできる範囲型の能力だぜぇ♪」
樹神が器用な嘘をつけないと言う考えは一理ある。そこまで頭回らないと思うから。
それに嘘をつくとしたら、もっとまともそうな能力を言うだろう。
だけど、これは皇の直感でしかない。
「もし、違ったら作戦はどうなる?」
皇「もし違わなくても、次の段階で躓くかもしれねぇだろ? 今より次のほうがクソムズいんだからよ。逆に次が上手くいけば1人分の穴くらいあいつなら融通利かせられると思うぜ」
確かに次の段階のほうが遙かに難しいし危険だ。それに、今日だけで戦力を揃えれば1日余裕ができる。
僕は顔を上げ、皇の目を見て頷いた。
「わかった。君と樹神を信じる」
皇「あざっす! じゃ、放課後にお前の教室で!」
今日の授業が全て終わり、僕らは集まった。帰りのホームルームが終わってからだいぶ経っている。
皇、陽、日下部、そして戦力になるか怪しい樹神。
夕陽が差し込む僕の教室には、僕を含めてこの5人だけ。
樹神は何も知らないので来たる第2次学生大戦とそれを阻止する作戦について説明。
危ない目に遭うのは嫌がると思ったけど、何も考えてないのか素直に参加すると言ってくれた。
そして、みんなの意向を確認した上で作戦の次の段階について打ち合わせをする。
日下部「本当にそれをやるのかい? 危険が2つもあるのだけど……」
皇「危険は1つだけだ、オナラ大王。なぁ、水瀬!」
獅子王「おい! 協力してくれる人に向かってそれはないだろ!」
皇「黙れクソゴリラ! お前らジミーズは俺の配下にあるんだぜ♪」
日下部「彼に制裁を……あ、ダメですか……。かしこまりました、シリウス様」
樹神「お! 喧嘩か? 俺のアフロブレイク喰らうか?」
こんなので本当に大丈夫か……?




