全校集会 - 獅子王 陽②
「何言ってるんだ? さっき集会でも話したとおり大戦はしないことが決定したんだ」
デタラメを言って僕の正体をあぶり出したいのか?
僕の発言に対し、彼は人差し指を立てて左右に振った。
皇「チッチッチ…。あんなの口から出任せだ。俺らを油断させておいて奇襲を仕掛ける。それが奴らのやり方」
「そこまでして殺し合いたいって言うのか? 誰も死にたくないだろうし、犠牲者なんてどの学校も出したくないはずだ」
いったいどこの情報なんだ? テキトーなこと言うにしても、僕を騙すメリットとかあるのか?
彼はまた人差し指を立てて今度は大きく左右に振る。
何か……その動きムカつくな。投票数を遊び心で改竄した文月と同じ臭いがする。
皇「チッチッチッチ…。昨日、習っただろ? 奴らは俺たちを数十年に渡って恨んでいる。自分たちの命よりも祖先の仇を討つことのほうが大事なんだよ。わかるかい、ゴリラ会長」
「だ、か、ら! ゴリラじゃないって! でも、それはあくまで君の憶測だろ?」
はぁ、さっきからゴリラゴリラって…。彼と話すのは疲れるな。
皇の言い分にも一理あるけど、証拠がなければ動くことはできない。
あくまで仮にだけど……何の証拠もなく、奇襲の前にこちらが先に仕掛けたら、僕らはみんな傷害罪で逮捕されてしまう。
彼は人差し指を立てて今度は首も一緒に、より大きく左右に振った。
この動き、ほんと腹が立つ。人を怒らせる天才なのか。
抑えるんだ。僕は一応、生徒会長。決して手を上げてはいけない。
皇「証拠ならあるぜぇ♪ 鬼ごっこの直後、こうなることを予想した校長が奴らの高校に謝罪しにいったんだよ。そのとき、校長は命懸けで盗聴器をしかけた。これがその証拠ってわけだ」
彼はポケットからスマホとワイヤレスイヤホンを取りだした。
皇「イヤホンをつけろ。他の生徒に聞かれるとパニックになる」
僕がイヤホンを耳に着けたのを確認し、彼はある音声データを再生した。
まず、最初に流れたのは校長先生の声。今から盗聴器を各学校の職員室にしかけると言っている。
そこから恐らくだけど編集でカットされていて、重要な部分だけが流れた。
この音声がもし本当なら、1週間後に彼らは3校一斉に攻撃を仕掛けてくるだろう。
一通り音声を聞き終えた僕は、イヤホンを外して皇に返す。
彼は受けとったイヤホンをポケットに入れながら、友紀が今していることについて話しだした。
皇「水瀬は昨日、校長に鬼ごっこのときに発覚したような能力持ちの生徒を探すように頼まれた」
彼が言うには…友紀は今、能力持ちを集めるための面接の準備をしているらしい。
もちろん、3校が奇襲を企てていることは伝えない方向で…。
“鬼ごっこのときのような能力者を募集中。採用すると校長に申請して内申点上げます”
と言う看板を教室の前に置いているとのこと。
「だけど攻撃すること自体ダメなんじゃない? 結局、誰かが犠牲になってしまう」
目的は、大戦を起こさないことや犠牲者を出さないこと。戦いや攻撃自体は結局、それらを招いてしまう。
僕の発言に対して、また人差し指を立てようとしたので彼の手を払った。
ちょっと強く叩いてしまったのかもしれない。彼は叩かれた方の手を抑え、顔をしかめる。
ようやく笑顔以外の表情を見ることができた。
皇「痛ぇな、慰謝料払えよ。安心しろ、傷つけたりはしない。先に仕掛けてこっちに来れないように封じるんだ。今回、探しているのはそういう系の能力だ」
なるほど、それならまだ平和的だ。
能力を持つ生徒か。友紀からちょっと聞いたくらいで本当にいるのかまだ信じがたいけど…。
まぁ、あの人の唾液は確かに普通じゃなかったかも。
僕自身のあれも言ってしまえば能力みたいなものかもしれない。
仕方ない、こんな事態だ。
一応、生徒会長。一応、生徒を守る立場だから。一応、生徒の安全は確保しないといけない…………文月のせいで。
僕も正体を明かして協力するしかないみたいだ。
僕の正体、僕の能力は……。僕は彼の目を見て、ゆっくりと頷いた。
「わかった、僕も協力する。僕が人質を誘導したあのゴリラだ。ただし、誰にも言うなよ?」
僕の能力は、ある条件下で大きめのゴリラになること。
僕がゴリラってことを白状すると、皇は再び悍ましいあの笑顔を取り戻した。
皇「物わかりがよくて助かるぜぇ♪ ようこそ、ジミーズへ。この学校を救えるのは俺らだけだハハッ」
そして、彼は左手を差しだし握手を求めてくる。
口が軽そうで不安でしかない…。
周りに僕がゴリラになれることを知られたら、もう普通の高校生活は送れなくなる。
キレたらゴリラになって殴ってくるみたいな噂が広がったら、みんな怖がって僕を避けるようになるだろう。
「ジミーズって?」
僕は握手に応じながら、その言葉に対して首を傾げる。
皇「地味って意味だよ! お前らみたいな地味な学校生活を送ってる奴らの集まりってこと! 感謝しろよ、俺がお前ら地味メンを先導してやるぜぇ♪」
やっぱりやめようかな……。
地味って……僕は一応、生徒会長だぞ。
なんでこんなのと友紀は組んでるんだ?
そもそも彼には他に1つ疑問がある。
「てか、なんで僕の正体がわかったの?」
彼がなんで僕の正体を知っているのか。
誰にも明かしていないし、友紀たちと一緒に行動しても一切バレなかったのに…。
彼は2、3歩距離をとり人差し指を立てて左右に振った。
あぁ、クソ! 届かない! 腕、引きちぎってやろうか!
皇「チッチッチッチッチ! テキトーだテキトー! 1人1人当てずっぽでゴリラの真似したら釣れるかなってなぁ。まさか1人目で当たりを引くとは思わなかったぜ! 俺、運良すぎヒャハハ」
マジかよ。全校生徒1人1人に何の根拠もなくアレをやろうとしてたのか?
彼には羞恥心というものがないのか。ていうか、一発で当てる辺り何か持ってるな……。
こうして僕は学生大戦の再来を阻止するため“ジミーズ”とやらに加わった。
ちょうどこのとき、次の授業が始まるチャイムが鳴って僕らは一度解散することに。
皇「じゃ、明日の放課後、水瀬の教室集合な!」
そう言って彼は自分の教室へ戻っていった。




