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BREAKERZ - 奇っ怪な能力で神を討つ  作者: Maw
自警部•夏祭り編
265/271

連続奇襲 - 水瀬 友紀❶

ーー


興禅こうぜん「あぁ……クソッ……痛ぇじゃねぇか」


 腕に重度の火傷、首に深い切り傷を負った興禅こうぜん蹌踉よろめきながら呟いた。


 日下部くさかべ放屁ファートを利用した粉塵爆発や、朧月おぼろづきによる時間を飛ばしての奇襲は、即死とは行かずとも彼に致命傷を与えていた。


 故に、彼は直に死に至る。


 最強格の神憑かみつきに敗れた水瀬みなせたちの連続奇襲は、決して無駄打ちではなかったと言えるだろう。


興禅こうぜん(何だったんだ、あの人間どもは…。神の力とは違う…)


 彼らが興禅こうぜんの印象に残っているのが何よりの証拠だ。彼に傷を負わせた人間は姫崎ひめさきひなと“BREAKERZブレイカーズ”一行を除いて居ない。


興禅こうぜん(あぁ……これ死ぬなぁ。まぁ……良いか……)


 意識が徐々に弱まり足取りが覚束おぼつかくなっていく。そんな自身の状態に対して死を悟る興禅こうぜんだが、あまり動じていないようだ。


 そして、彼は先ほど光の異能で殺めた水瀬みなせらに対して違和感を覚えた。


 何故なら…。


興禅こうぜん(奴らの死体がない。そういえばあの女も消えたな。死ねば消えるのか? でも、こいつらは消えてない)


 姫崎ひめさきに続いて致命傷を負った水瀬みなせらも、彼の前で忽然と姿を消したからだ。


 危険を感じた文月ふづきが“RealWorldリアルワールド”で創り出した空間に匿った。


興禅こうぜん(それに、こいつらとは違って()()()感覚がない)


 一命は取り留めたものの、“BREAKERZブレイカーズ”に猶予はなさそうだ。


 まだ仕留めきれていないと気づいた興禅こうぜん。人間に傷を付けられた屈辱を胸に、彼は“BREAKERZブレイカーズ”の虐殺を決意する。


 目を瞑っている興禅こうぜんは視覚以外の五感を研ぎ澄ませ、彼らを捜した。


 虐殺の決意から僅か数秒──。


興禅こうぜん「そんなとこに居たのか…。神に似た力だが、脆弱すぎて気づかなかった」


 身体の向きは変えずに1歩、2歩と前に踏み出す興禅こうぜん


 “RealWorldリアルワールド”で創られた空間に気づいたのだろう。


 彼は手を前に組んだまま歩き、何もない場所に向けて巨大な光を放った。


 血みどろになった祭りの会場。その風景に亀裂が入り、大きな黒い穴が空く。


 黒い穴から興禅こうぜんを覗く真っ暗な空間。水瀬みなせらを匿っていた世界が、彼を前に剥き出しとなった。


 蹌踉よろめきながらも何処か品のある歩調で、臆することなく暗い空間の中に入っていく。


 “死んでしまう前に彼らを仕留めたい”。


 そういった想いが強く在るようだ。


興禅こうぜん(奴らは何処だ?)


 暗い空間の中で更に五感を研ぎ澄ませる興禅こうぜん


 前に進みながら彼らを捜す興禅こうぜんが見つけたのは──。



興禅こうぜん「お前も此処にいたのか。さっきの奴らは何処だ?」



 うつ伏せに倒れた小さな女子生徒、姫崎ひめさきひな


 だだっ広い真っ暗な空間に居るのは、倒れている彼女ただ1人。


 死んでいるのか気を失っているのか、はたまた死んだふりか…。興禅こうぜん姫崎ひめさきの状態を知る術はない。


興禅こうぜん「生きているなら答えろ。もう俺には時間がない」


 彼女に問いただす興禅こうぜんは妙なイラ立ちを覚えていた。


 自身が誇る光の異能で、いち人間を仕留め切れていないこと。


 彼女も自身が手を焼いた数少ない人間であること。


興禅こうぜん(答え次第、この女も殺してやる)


 彼の問いに微動だにしない姫崎ひめさき。呼吸をしている様子もない。


 生死不明な姫崎ひめさきと、静かないかりを胸に反応を待つ興禅こうぜん


 膠着した状態を破って先に動いたのは──。



姫崎ひめさき「…………。」


スッ……



 自身の“”を完全に殺し、死んだふりをしていた姫崎ひめさきだった。


 彼女はうつ伏せに倒れたまま、右手の中指をぴんと立ててこう告げる。


姫崎ひめさき「だったら死んどけ、フxxク野郎」


 再び訪れる静寂。


興禅こうぜん「それはどういう意味だ?」


 言葉の意味が理解できず首を傾げる興禅こうぜん


 しかし、“中指を立てるジェスチャー”を彼は彼なりにこう解釈した。


興禅こうぜん(“上”に居るのか?)


 目を瞑ったまま暗い天を見上げる興禅こうぜん


 彼が見上げた直後、暗黒の空がピカリと光った。



ドオ゛オ゛オオォォォォォォン!!



 耳を劈く轟音。


興禅こうぜん「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁががががが!」


 暗闇にほとばしる蒼い稲妻が興禅こうぜんに襲いかかる。


興禅こうぜん(な、何が…? 身体………キカナイ………!)


 稲妻に打たれた彼の身体は酷く痙攣し、思考もままならない。


 その中で感じ取った新たな気配に、彼は気づいた。


 姫崎ひめさきが中指を立てた方向、真上から降ってくる金髪の不良生徒。


興禅こうぜん(別の………人間…………! 奴が……いかづちを……!)


 真っ赤な目に涙を浮かべながら顔中に青筋を立てている新庄しんじょう篤史あつし


 彼は金属バット“とどろき”を振り上げた体勢で痙攣する興禅こうぜんを見据えていた。


姫崎ひめさき「目には目を…。光にはいかづちを…!」


 うつ伏せのまま誇らしげにそう呟く姫崎ひめさきだが、近くに居る彼女も感電したのか少しばかり痙攣している。


興禅こうぜん(クソッ…! クソッ…! クソがあああぁぁぁぁぁ!!)


 金属バットを構えて振ってくる新庄しんじょうに対し、光での迎撃を試みるがどうやら痙攣している状態ではまともに発動できないようだ。



新庄しんじょう「カミナリ……大根切り゛い゛ぃぃ!!」


ズドオ゛オ゛オオォォォォォォン!!



蒼い稲妻を纏った“とどろき”を、新庄しんじょう興禅こうぜんの頭を目がけて振り下ろした。


暗い空間に行き渡る稲妻。


反動で大きく吹き飛ぶ姫崎ひめさき


RealWorldリアルワールド”の空間そのものを破壊しかねない絶大な威力を誇る一撃を直に受けた興禅こうぜんの身体は跡形もなく消し飛んだ。


ーー



「はっ…! ここは!」


身体に大穴を開けられて意識を失った僕が目を覚ましたのは、けいがアプリで創り出した真っ暗な空間……ではなかった。


星が見える夜空、血生臭い祭りの会場。


けいが瀕死になった僕らを呼び戻したんじゃない…? だけど、身体の穴は塞がっている。


文月ふづき「目を覚ましたか」


仰向けに倒れた身体を起こすと、けいが背中を向けたまま僕にそう言った。


何がどうなっているのかわからない。


ここは現実なのかアプリの中なのか…。


文月ふづき「結論から言えば、君らが戦った興禅こうぜん立休りっきゅう新庄しんじょうがとどめを刺した」


僕が起き上がるや否や、けいはやや急ぎ足で経緯を語り始めた。


僕の要望通りにみんなを転送したけいだったんだけど、彼の独断で“RealWorldリアルワールド”内に残した人も居る。


新庄しんじょうひなさんだ。


奴との戦いが一瞬で終わったのもあって、僕は2人が来ていないことに気づいてなかった。


連続で仕掛けた奇襲の最中さなかに瞬殺されたものだと…。


けいは、僕らが興禅こうぜんに勝てるとは思ってなかったらしい。


彼は彼で奴を仕留める作戦を考えていたんだ。


まず負けた僕らを奴の目の前でアプリ内に転送する。すると、奴はあの空間の存在に気づき入ってくるだろう。


その瞬間に、大本命の奇襲である新庄しんじょうの金属バットによる強力な一撃を喰らわせる。


それが、けいが考えていた奇襲作戦。


確かに、今いるメンバーの中で1番強い一撃必殺を繰り出せるのは新庄しんじょうだ。


けいは僕らを囮にし、確実に一撃を当てられる場所へ興禅こうぜんを誘い込んだんだ。


手負いになって隠れた僕らにとどめを刺す程度の気持ちで入ってきたのなら、当然油断もしていただろう。


そして更に、死んだふりをしたひなさんがギリギリまで気を引きつけた。


結果、けいの作戦は成功。


日下部くさかべ「みんな大好き粉塵爆発も、ただの余興だったというわけさ」


囮にされたのが嫌だったのか、日下部くさかべは不服そうにそう話す。


ひな~! 大丈夫だったの?」


姫崎ひめさき「ちょっとピリッとしたけど大丈夫」


髪の毛がチリチリになって爆発しているひなさんを心配そうにハグする彼女の友達。


見事興禅(こうぜん)を討ち取ったと言いたいところなんだけど、けいの表情はどこか暗い。


文月ふづき興禅こうぜんは倒したが、同時に“RealWorldリアルワールド”も使えなくなった。新庄しんじょうの攻撃で故障したからな」


あぁ、だから僕は現実で目を覚ましたのか。向こうで手当はしたものの、その後の新庄しんじょうの攻撃でアプリが壊れたんだ。


でも、当の興禅こうぜんは倒した。

脅威は去ったんだ。


彼が浮かない表情をしているのは、アプリが壊れたから? 大勢の死を悼んでいるから?


そういった風には見えない。


文月ふづき「負傷者を匿う場所が無くなった。ここから先、命の保障はない」


ここから先…?


けいは言った。

()()は倒したと…。


戦いは……まだ終わってないのか。


あれが………あの最強格の神憑かみつきがただの雑兵だったなんて考えたくはない。


けい…、敵はなんだ? 僕らは……何と戦っている?」


そう問いかける僕の額には、自然と汗が滲み出る。


けいはスマホを片手にこちらに振り返り、神妙な面持ちでこう言った。


文月ふづき「わからない。会場の至る所で誰かが何かと戦っている」



ーー


 水瀬みなせの問いに曖昧に答える文月ふづきけい


 現状そう返すほかないだろう。


 彼の持つスマートフォンに表示されているのは、神対策アプリ“AntiDeityアンチディアティ”。


 水瀬みなせら一行、今の状況を正確に把握している者は1人も居ない。


 興禅こうぜん撃破後、祭りの会場の至る所で計測された異常な神性値。


 文月ふづきは、夏祭りでの戦いはまだ序盤に過ぎないと予見していた。


ーー




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