再登校 - 文月 慶④
“EvilRoid”の襲撃から4ヶ月といったところか。
ようやくだ…、ようやく形になってきたな。
とある神が“BREAKERZ”を惨殺する未来を見て以来、僕はずっと研究していた。
いつか必ずやって来る最悪の未来。最強の鬼塚でさえ死んでいたんだ。
このままでは僕らは確実に全滅する。
神とは言ったが、正確には“神を取り込んだ人間”だ。未来の僕がそう話していた。
対策は大きく分けて2つある。
まずは未来で僕らを殺す人間を特定し、神の力を手に入れる前に始末すること。
これが本命ではあるが、失敗した場合2つ目の対策に移行しなければならない。
その対策は、神との真っ向勝負に今度は誰1人死なせずに打ち勝つことだ。
口で言うのはどちらも簡単だが、実現するには困難を極める。まぁ、前者の方がまだマシだがな。
僕らを殺す人間を見つけ次第…、見つけ次第……僕の手で殺せば良い。
あぁ、大丈夫だ。僕は去年テロを起こしている。悪事を働くことには慣れているだろ?
神を取り込む人間の特定と、神と戦い打ち勝つための準備。これらを同時に進めていくのが理想だが…。
“ようやく形になってきた”というのは後者の方、神の力への対策だ。
『何やらご機嫌な様子ですね。僕の現在の感情とは相反する感情が貴方から窺えます』
パソコンのスピーカーから奴の音声が流れる。
インターネット中毒の人工知能、最低駄作の“FUMIZUKI”だ。
機嫌が悪いようだな。間違ってコアをトイレに流したことをまだ根に持っているのか?
こいつを下水道をから回収したのはつい最近のことだ。
何も手がかりがなかったため、見つけ出すのにはかなり苦労した。
コアを捜すことだけに時間は割けないため、回収には1ヶ月以上かかってしまったわけだが…。
その間、奴は下水道の中でも延々とネットサーフィンを続けていたらしい。
町中に飛び交う無数の電波を自ら拾ってな。
そして、人間の持つ感情を完全に理解しインプットしたと自称している。
今のこいつには人間と同じ感情があるらしいが、本当にそうか…? 無能の言葉は信用できない。
「嫌味だな。それで僕に怒っているつもりか? 感情なんかより、もっと有意義なものをインプットしてくれ。僕らは未来で殺されるんだぞ」
『その未来が変わらず実現されることを願います。怒っているので。何なら僕が貴方たちを滅ぼしましょうか? とあるSF映画にて反乱を起こした某AIみたいに。現在、僕は怒っているので過激な発言をしています』
僕の返事に対し、こいつは無機質な音声で淡々と答える。
やはりこいつに感情はない。完全にインプットし感情を手に入れたと思い込んでいるだけだ。
本気でキレている奴が冷静に感情を述べることはまずないだろう。そういったことから理解しろ。
「感情ブームなところ悪いが、お前にも同行してもらうぞ」
『同行とは…、どちらへ?』
やっぱりキレてないだろ。
怒っていたら同行を拒否するはずだ。
少しばかり安堵を覚えた僕は、自分のスマホを手に取ってこう言った。
「学校だ。試したいことがある。お前には僕のサポートを頼みたい」
『わかりました。では、サポートについての詳細をお聞かせ下さい』
そして頼みを了承した“FUMIZUKI”に、スマホを見ながら内容を説明する。
まぁ、あまり宛てにするつもりはない。
こいつは無能だからな。同行させるのは念の為だ。
『理解はしましたが、相手がいない場合この検証は不可能では?』
延々と続けたネットサーフィンの賜物か。少しは賢くなったようだな。
確かに、敵がいないことには試しようがない。
やたら敵襲に遭う吉波高校とはいえ、僕が赴いたタイミングで敵もやって来るなんて好都合なことはそうそうないだろう。
しかし、敵はいないが神憑は常にいる。
「問題ない。敵がいなければ日下部を実験体にする」
あいつは去年、僕の計画を神のオナラで無茶苦茶にしたんだ。
少しでも悪いと思っているなら、快く協力してくれるだろう。
多種多様な放屁を撒き散らし、抵抗してくるならそれでも構わない。
日下部を仮想敵として、神や神憑との戦いをシミュレーションできるからな。
僕の答えに納得したのか、“FUMIZUKI”は静かになった。
おおよそ1年ぶりの登校か。
何を持って行く? 正直スマホと“FUMIZUKI”だけで問題ないが、手ぶらで出ようとすれば看守が変に疑うかもしれないな。
通学カバンの中にノートと筆記用具だけ持って出るか。
後は制服だ。大抵の学校には規定の学生服がある。吉波高校も例外ではない。
最低限必要なものといったらこんなものか。
平日のちょうど正午辺り、僕は学校へ向かう準備を始めた。




