2日目 - 文月 慶③
「ノオオオォォォォォォン!!」
僕は頭を抱えて絶叫した。今、脳の血管が全てぶち切れてしまってもおかしくない。
モニターには、全ての鬼が壊されると言う地獄の光景が広がっている。
僕の……発明品が………全部。
ありえない…。ありえないありえないありえない!
こちらにある570体の鬼を全て送り込んだと言うのに…!
たった3人相手に全滅だと…。それに剣崎のあのよだれは何だ!
あのバットを持てる新庄篤史と妙に冷静な水瀬も何かおかしい。お前ら今まで普通の高校生だっただろ。
あのバットにあんな破壊力なんてなかったはず。バットを振る前に出した唾液の作用か?
「大声をあげてどうした? 計画に狂いが出たのか?」
後方から、取り乱した僕を案じる声が聞こえてきた。
その声の主は、皇 尚人。
程よいふわっとした生え癖のある髪の毛。面長で平坦な塩顔に、独特な表情を時折見せてくる奴と言った印象だ。
今回の計画を僕に提案した人物。普段から剽軽な奴で何を考えているのかわからないことが多い。
こんな悲惨な状況にも関わらず、こいつは僕の顔を下から覗き込むように見てニヤニヤとし始めた。
皇「それにしても面白い悲鳴だな。『ノンノンノン♪』って叫ぶ奴そうそういないぜぇ?」
こいつは口角を上げて、人差し指を左右に揺らしながらそう言う。
鬼を全滅させられて焦っている僕の顔がそんなに面白いか?
前々からこんな感じに煽ってくる奴で、普段はそれに慣れているが、今は癪に障るな。
「黙れ、たった3人に鬼の大軍が破壊された。それにそんな風に叫んでない。耳鼻科にでも行ったらどうだ?」
マジでどうする? 鬼はあれで全部だった。鬼がいなくなったことを政府に知られたらまずいことになる。
人質をとっている以上、強行突破を仕掛けてくることはないだろうが…。
皇「うわ、マジだ! 爆発してんじゃん! あの金属バットか? あれぇ? 銃火器効かないんじゃなかったのかな~?! ヒャハハッ」
勝手にモニターを覗き込み、両手を広げて歓喜の笑いを起こす皇。
こいつ、マジで殺してやろうか。こんな状況を愉しく笑う奴がどこにいる?
くそっ…。手元に鬼がいないから無理矢理、人質の牢に入れることもできない。
どうして、こんな奴と行動しているのか。こいつと関わることでメリットがあるのかと言うと全くもってない。
こいつとは、絶対に縁を切ることができない理由があるんだ。
その理由とは…………、
「後お前…、いい加減、校章返せよ」
皇を睨みつけながら手の平を前に出し、校章を返すよう言いつけた。
今、直面している問題に比べると大したことないかもしれないが、こいつは1年のときから僕の校章を自分の制服につけている。
体育の授業中、こっそり更衣室に入って盗ったようだ。
僕らの学校は身だしなみに厳しい。校章をつけてないだけでガミガミ怒られる。
こいつのせいで僕は、入学してから今までの1年間そのことで怒られ続けた。
校章を取り返さない限り、こいつとは切っても切れない関係と言うわけだ。
皇「まぁまぁ。今はそれよりあいつらをどう捕まえるかだろぉ?」
こいつは両手の平をこちらを向け、満足げな顔をして僕を宥める。
確かにそうだが…。そういう開き直ってるところも腹が立つ。
僕が発明したのは鬼だけじゃない。今まで色んなものを造ってきた。
その中で今回、使えそうなものもそれなりにある。
「僕が直接、彼らを捕まえにいく」
鬼が破壊された今、それ以外に方法はない。
あの3人に敵うのかって?
こっちはずっと彼らの行動を監視してたんだ。対策は考えている。
それにあの金属バットは人に対して使うと確実に死ぬ。
新庄篤史も人間だ。いくら暴力的な奴だからと言って、同じ学校の同級生を躊躇いなく殺すなんてことはしないだろう。
対人間にとって、あの金属バットはあってないようなもの。あのよだれ野郎さえ何とかすれば勝てると僕は踏んでいる。
皇「いや、でもさぁ、あいつらこっちに向かってね?」
そんなはずはない。ここは誰にも知られていない場所だからな。
僕は彼の指さしたモニターに目をやった。
あれは………何だ?




