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第二巻発売中! ダンジョンマスター班目 ~普通にやっても無理そうだからカジノ作ることにした~  作者: 有山リョウ


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第九十七話

 第九十七話


 カードが配られ、ようやく決勝戦の後半が開始される。

 カイトは自分の手札ではなく、勇者サイトウの仕草に何より注意した。

 すでにサイトウの癖は見抜いている。サイトウが透視のスキルでカイト達の手札を見通した場合、その仕草は顕著に表れる。それさえ見ておけば、サイトウに負けることはないからだ。


 カイトがサイトウを見ると、サイトウは表情を硬直させて手はテーブルに置き、微動だにしなかった。

 前半戦と比べて動きが少なく、癖を少なくしようとする努力が見て取れた。

 癖を見抜かれていると気付いたのだから、当然の行動と言えるだろう。

 大きく隙が減った形となるが、その程度の対抗策は初歩の初歩である。これまでそれすらしていなかったサイトウの方がおかしかったのだ。


 だがサイトウの行動は無意味だった。

 確かに動きを少なくすれば、癖が出るのを押さえることは可能だ。だが無意識に出てしまう癖はその程度で消すことは出来ない。

 コインを賭ける時のわずかな仕草や目の動き、呼吸の仕方など、本人が意識出来ない部分で癖というものは出てしまう。

 サイトウの対抗策は予選程度なら通じただろうが、このテーブルを囲むのは、賭け事ならば間違いなく世界最高峰のジードとマダラメである。

 付け焼刃の技術でどうにかなる相手ではなかった。


 カイトが見つめる中、サイトウはまだ癖の仕草を見せていなかった。透視のスキルをまだ使用していないのだろう。おそらく、ベットする直前までスキルを使用しないつもりだ。

 これならばサイトウより先にベットラウンドが回って来た者は、何の手掛かりもない状況で最初は賭けに出ることになる。

 決勝戦後半の席順は、前半のコイン獲得順位で決まるため。カイト、サイトウ、ジード、マダラメの順番で座っている。最初の一回目であるため、最初にベットするのはカイトからだった。


「カイト様、幾らベットされますか?」

 ディーラーであるアルタイル嬢に問われ、カイトは迷うことなく一万コインを十枚賭けた。

 後半戦は決勝ルールとして最低ベット額が十万コインからなので、様子見として最低額だけを賭ける。


 コインを十枚差し出したカイトは、じっとサイトウを見た。

 次はサイトウのベットラウンドだった。ここでサイトウの癖を見抜けるかどうかが、何より大事だった。


 サイトウはすぐには動かなかった。コインにも手を掛けず、手も動かさない。しかしわずかに口元を動かした。

 これはこれまでに見せたことのない仕草だった。

 次の瞬間、顔がわずかに動いたかと思うと、眉をひそめ表情を硬直させ、体がほんのわずかに震える。

 今までにない仕草を見せたあと、サイトウはコインを十枚差し出した。


 一連の仕草を見て、カイトは小さく息を吐いた。

 サイトウが何をしたのか分かった。おそらく舌を噛んだのだろう。痛みで癖をごまかしたのだ。

 すぐに回復魔法で治療出来るとは言え、涙ぐましい努力と言えるだろう。


 しかしその覚悟もまた無意味だ。

 勝負は長い。分割された呪文書は五枚ある。サイトウが連続で勝利したとしても五十回もゲームをしなければいけないのだ。

 人間は痛みに馴れ、何より避けようとしてしまう。最初の数回は覚悟が出来ても、回数を熟せばどうしても気が緩む。いずれ癖が出てくるはずだ。その時を待てばいいだけだった。


 同じことをジードとマダラメも考えたようで、様子見として十枚のコインを賭ける。

 三枚の共通カードが明らかとなり、ベットラウンドが進む。

 カイトはコイン十枚を賭けて、ゲームを進める。次はサイトウの番だが、サイトウは舌を噛みながらコインを三十枚置いた。


 小さくレイズされたことにマダラメもジードも反応したが、様子見としてコールし、同じ額を賭ける。カイトも初回と言うこともあってコールする。


 だが次のベットラウンドで、サイトウはさらに五十枚レイズした。

 これにはジードとマダラメも目を見合わせる。

 小刻みな賭け方だ。少しずつ掛け金を吊り上げている。

 誘うようでもあり、一方で降ろそうとしているようにも見える。


 ジードとマダラメはここで降りた。

 だがカイトは降りるわけにはいかなかった。

 サイトウの手札を見るためには、ゲームを最後まで進めなければいけない。ベットの順番から、押し付けられた格好となるが、これは必要経費と諦めるべきだろう。

 カイトは仕方なく、コールをしてゲームを進めた。


 最後の共通カードが明らかとなる。最終ベットラウンドで、カイトはまずコインを十枚賭けた。

 サイトウが三十枚レイズした。

 先ほどよりも少ないレイズ。カイトはすぐにコールしようとして、少し考えた後、さらに十枚レイズした。

 サイトウがコールすることは分かっていたが、その反応を見たかったのだ。

 するとサイトウはさらに三十枚レイズする。

 カイトはコールし、ベットラウンドが終了した。


 互いの手札が明らかとなる。

 カイトとサイトウの手札はそろっておらず、役無しとなっている。

 しかしサイトウの手にはKがあったので、サイトウの勝利となった。


 何枚ものコインがサイトウの手元に移動される。

 透視スキルがあるので、サイトウの勝利は驚くに値しない。しかしその賭け方は意外なものだった。

 これまでサイトウの賭け方は、非常に攻撃的で力押しだった。

 もっと言えば子供っぽい賭け方だった。

 とにかく大量のコインを押し付けるように賭けて、相手に駆け引きをさせない。


 主導権を譲らず、一方的に流れをつかみ押し切る戦い方は、正解と言えば正解だ。シンプルに強いだろう。しかしそれだけに分かりやすく、手の内を読みやすかった。

 だが今回は違った。

 小刻みにコインを吊り上げ、ジードやマダラメ達がどの程度で動くのかを見て賭けている。しかも最後のベットラウンドなどは、わざと少なく賭け、カイトのレイズを誘った節すらあった。

 なかなか老練な賭け方と言えるだろう。舌を噛んだことよりも、こちらの方が驚きだった。

 ようやく本格的な戦いになりそうだった。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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