第九十六話
第九十六話
「秘蔵のアイテムを出せか。仕方ないな。では、この雷鳴の剣を賭けるとするか」
勇者サイトウが右手をかざすと、空間に黒い穴が生まれた。初めて見るが、異空間にアイテムを保管する、アイテムボックスのスキルだ。
サイトウは空中に生まれた穴に手を入れて引き出すと、そこには金色に輝く一振りの剣が掴まれていた。
「雷鳴の剣だと!」
カイトは思わず声をあげてしまった。会場も驚きにざわつく。
雷鳴の剣といえば、紫電を纏い、一振りするごとに電撃の魔法を放つことが出来る伝説級の魔法剣だ。
多くの戦士や将軍、英雄の手に渡り、その度に幾つもの逸話を残してきた逸品中の逸品。
冒険者であれば垂涎の品が、造作もなくテーブルに置かれていた。
カイトは生唾を呑み込んだが、ダンジョンマスターマダラメはこの魔法剣を見て顔をしかめた。
「おいおい、そんな物いるかよ」
マダラメは伝説級の魔法剣を切って捨てた。
「お前のことは調べてある。俺の調査では、お前は少なくとも『願いの卵』を除いて、あと他に三つの聖遺物『慈愛の女神像』『転移の宝玉』『力の指輪』を所持しているはずだ」
マダラメの言葉に、カイトをはじめ観衆は息を呑んだ。
流す涙を飲めば、あらゆる病や怪我を癒すと言われている『慈愛の女神像』
すでに人類からは失われて久しい、転移の術を可能とする『転移の宝玉』
そして指にはめた者に、神に等しい力を与えるとされている『力の指輪』
伝説を越え、神話級のアイテムの数々だった。
「そして、お前はこの他にも五つの準聖遺物を所持している。名前をあげてやろうか? あらゆる物を切り裂き、二の太刀いらずと言われている『一閃剣』魔法を弾き、矢を逸らすと言われている『覇者の鎧』身に付けた者の傷を癒やし、体力を回復させる『癒しのルビー』空を歩く力を持つと言われている『空渡りの具足』炎を退け、地獄の猛火を生み出すとされる腕輪『火神宝玉輪』それらの品々をお前は持っているはずだ。その雷鳴の剣は逸品だが、聖遺物や準聖遺物と比べれば位は落ちるなぁ」
マダラメの言葉に、周りの人々がまた息を呑む。
カイトとしても、言葉も出ない。
聖遺物とは神が作り、残した物とされている。そして準聖遺物とは、聖遺物の力を借り、人間が神に迫ろうとした物だ。
誰もが驚く雷鳴の剣は、間違いなく人が作り上げた最高傑作の一振りだ。しかしあくまで人が作り上げたものでしかない。マダラメの言う通り、聖遺物や準聖遺物には劣ると言わざるを得ない。
「お前はラスボスに挑む前に、アイテムをコンプリートするタイプだ。取れるだけのアイテム取ってきてるだろ? それにそうでなければ、ミーオン取られて俺に大口叩けるはずもない」
マダラメはサイトウの性格を見抜いていた。
カイトにはラスボスだとかコンプリートだとかの意味はわからなかったが、マダラメの言うようにサイトウの性格はある程度わかる。
カイトの見たところ、サイトウは自分が絶対的に有利な時でなければ動かない人間だ。ミーオンを失っても、まだここに残っていると言うことは、勝つ方法があることを意味する。
逆にそれらのアイテムを奪えば、仕掛けてはこない。
後の憂いを立つために、マダラメはサイトウの全てを奪おうとしている。
「ふん、いいだろう。だが賭けるのは準聖遺物からだ」
サイトウはアイテムボックスのスキルを使用し、またしても黒い穴を空間に浮かべて手を入れる。
そして手を引き抜くと、手には赤い腕輪が握られていた。腕輪には宝玉がはめられ、揺らめく炎のように輝いている。
初めて見るが、この神々しい輝き、火神宝玉輪に間違いない。
「ああ、もちろんそれでいいさ。全部吐き出させてやる」
マダラメが笑う。
「もう始めてよろしくて?」
ディーラーであるアルタイル嬢が、不機嫌さを隠さずに尋ねた。
長話にうんざりしているご様子だ。
「ええ、申し訳ありません。早速はじめましょう」
マダラメの言葉にアルタイル嬢が頷き、カードを配りはじめた。
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