第九十二話
所で皆さんはカイジ派? それとも嘘食い派?
ちなみに私は堂々と両方って答えます
第九十二話
ワイズマンが席を立ち、決勝戦に残っている人数は、半数の五人となった。
「では、人数が過半数を切りましたので、次のゲームを最後に、前半戦終了といたします」
ディーラーである聖女クリスタニア様が、決勝戦に区切りがついたことを宣言した。
「前半戦終了ののち、一時間の休憩といたします。そして再開後は、決勝ルールが適用となります。よろしいですね?」
クリスタニア様がさらに確認をとる。
カイト他、残りの参加者も全員頷く。
事前の取り決めで、五人以下になった場合、最低ベットコインが十倍となる決勝ルールが適用される。
つまり最低でも毎回コイン十枚を賭けねばならず、降りてばかりいてはすぐにコインが底をついてしまう。さらに掛け金の上限が無くなる青天井ルールも追加される。
全てはゲームを停滞させず、決勝戦を盛り上げるためのものだ。
決勝ルールの同意に頷きながら、カイトは息をついた。
今更ながら、自分がここまで残れたことが意外だった。
当初の予定では、自分は予選で教会勢力をサポートし、そこで役目を終えるはずだったのだ。だが蓋を開けてみれば予想外の連続だった。
勇者サイトウの横槍やジードとマダラメの強さなど、波乱に次ぐ波乱で、この先どうなるか想像もつかない。
しかしよくぞここまでやり切った。と言う達成感はある。自分の様な小物が、こんな大舞台に残っているのだ。大したものと言えるだろう。
あとはなんとかダンジョンマスターマダラメの攻略の糸口、僅かな綻びを見つけ出せる様に動き回ればいい。
見たところジードはマダラメと二人で対決したい様だ。二人とも最高の勝負師であるため、その気持ちはわかるが、神剣ミーオンがかかった決勝戦。個人の愉悦を優先させるわけにはいかない。
うまく立ち回り、二人を早期に激突させるべきだろう。その際ジード寄りに動き、マダラメを倒した後は、ユーリスと組んでジードを倒すべく態勢を整えるべきだ。
勇者サイトウが残っているが、すでに死に体。保有コインは多いが、動けないでいる。
決勝ルールが適用されれば、そのコインすら徐々に溶けていくだろう。
カイトとしては、むしろそのまま動かずにいて欲しい。下手に動かれると、マダラメにコインを奪われる可能性がある。
休憩後の動きを考えていると、前半最後のゲームが始まり、カイトの前に二枚のカードが配られた。
カードを見ると、9と9のペアだった。
いい手札だが、もはやこのゲームは消化試合。コイン十枚をベットすると、ジードやマダラメ、そして勇者サイトウは当然の様に降りた。
カイトはこれで前半戦が終了したと思っていたが、最後の一人が降りなかった。
「レイズ、百枚」
宣言しつつコインを差し出したのは、教会勢力のユーリスだった。
「えっ!」
これにはカイトも驚いた。
言うまでもないことだが、ユーリスとカイトは組んでいる。当然互いに戦いあわない取り決めがされており、どちらかがベットした場合、片方は降りるということで話はついている。
もちろん勝負の行方によっては、取り決めを破棄することも決められていたが、この状況でカイトとユーリスが互いに勝負する理由がない。
「なぜ?」
驚きながらカイトがユーリスを見る。
「カイトくん、私はダメだ。私はついていけない」
ユーリスは諦念の声とともに首をふった。
「私は長く勝負師として生きてきたし、経験もあるつもりだ。この大会も優勝してやるつもりできた。しかしダメだ、私は古いタイプの人間だ」
ユーリスは自らの内心を吐露した。
「君は私を補佐するために残っているつもりだろうが、正直私はついていけていない。この決勝戦で、私は何もできなかった。これからも何もできないだろう。決勝を戦い抜くのは私ではなく君だ」
ユーリスの告白は意外なものだった。
しかし意外と思っていたのは、カイト一人だけだった。
急な予定変更に、カイトの視線はすぐにディーラーであり、教会の聖女クリスタニア様へと向かった。
ディーラーとして中立の立場ではあるが、教会の代表でもある聖女様は、何も言わず目を伏せている。しかしその顔に驚きはなく、ユーリスの意思を尊重する様子が窺えた。
カイトは他の英雄たち三人も見たが、彼らも視線を合わせない。それはユーリスの意見を肯定するものだった。
カイトの視線は宙を彷徨う。
これまでやってこられたのは、自分が本命ではなく補佐役だと思っていたからだ。だから大きく責任を感じず、ある意味気楽だった。しかしユーリスが降り、一人で戦うとなると話は違ってくる。
自分にはできない。
カイトはユーリスに視線で訴えたが、教会の代表は首を振った。
「人生では決断する瞬間、と言うものがやってきます。しかもそれはある日突然、私たちの意思や覚悟に関係なくやってくるのです。大事なのはそのとき、逃げずに決断すること」
ユーリスはカイトに諭した。
「もしあなたが、自分はやらない。と言う決断をされるのであれば、私はそれで構いません。ですが、決断そのものから逃げてはいけません」
ユーリスの言葉に、カイトは息を吐く。
「私が勝てると思っているのですか?」
「まさか、そこまでは期待していません。カイトさんの勝率は、せいぜい一割といったところでしょう」
はっきりとしたユーリスの言葉に、カイトは思わず笑ってしまう。
人に責任を押し付けるくせにひどい言葉だ。しかし正確な読みだろう。
「それでも私に賭けると? オッズの高い賭けでは?」
「大穴狙いが好きでして、それに私がやれば勝率などありません。ゼロです。ならば勝率が高い方を残すしかない」
なんともひどい意見だった。しかしまぁ、そうかもしれない。
「わかりました。受けましょう。オールインで」
カイトは持てるコインの全てを押し出した。
「ええ、後はよろしく頼みましたよ」
ユーリスもオールインに応じる。
互いの手札が明らかとなる。ユーリスの手札は揃っておらず、カイトの勝利となる。
波乱に満ちたギャンブル大会の前半戦は、こうして幕を閉じた。
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