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第二巻発売中! ダンジョンマスター班目 ~普通にやっても無理そうだからカジノ作ることにした~  作者: 有山リョウ


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第八十八話

 第八十八話


 カイトの行動から始まって、突然の三連敗。勇者サイトウは動揺を隠せなかった。

「どういうことだ?」

 勇者がカイトを見る。だが笑うしかない。

「それを敵である私に聞きますか?」

 カイトは勇者に問い返した。答えてあげる理由がなかった。それに聞かずともわかることだった。なぜなら勇者サイトウ以外の参加者達、ワイズマン、エクスト、ダブリスの三人は、三連勝を見て勇者サイトウの弱点をすでに理解していた。


 勇者サイトウの戦術は単純だ。まず手札が配られた時、高額コインをレイズする。

 この時、手札の強弱は考慮しない。

配られるカードは細工の施しようがないため、手札の強弱は偶然に頼るほかないのだが、透視能力で手札が見えている勇者は、問題なく賭けてくる。


 序盤に高額をかけられては、相手をする方としてはよほどいい手札でもない限り、勝負には挑みにくい。ハッタリでコールしようにも、手札が見えている勇者にブラフは無意味だ。

 逆に勇者はブラフが使える。たとえ手札が弱くても強いふりをして揺さぶりをかければ、対戦相手は降りるほかないからだ。

 単純だが、一番強い手でもある。透視が出来るという強みを押し付け、常に一方的に攻撃できる。

 だがそれも、勇者の手札が分かっていない時だけだ。

 勇者はカイトたちの手札を透視しているが、カイト達もまた、勇者の手札を見ていた。


「レイズ、百枚」

 勇者サイトウが懲りずにまたレイズしてくる。

「コール」

 即座にコールしたのはエクストだった。

 残念ながら、これは譲るしかなかった。勇者より強い手札の者がエクストしかいないのだから。

 ほかの参加者が降りる中、勇者とエクストの一騎打ちになる。

 またもや同じ結末になるかと思ったが、違った。三枚の共通カードがさらされたとき、勇者サイトウが左手で口を触る。


「レイズ、百枚」

 勇者がレイズする。だが――

「ドロップ。降りる」

 エクストはカードを投げて降りた。レイズしたコインが無駄になるが仕方ないだろう。なぜなら三枚の共通カードが表になった時、勇者サイトウの手札がエクストの手札より強くなったのだから。


「どうして……そうか、お前ら、僕の仕草を盗んだな」

 勇者サイトウが目を見開き周りを見る。

 正直今頃? と思うほかない。


 ポーカーフェイスという言葉がある。最近カジノで作られた言葉だ。

 ポーカーはとにかく虚実、ハッタリやブラフが重要な遊びだ。

 弱い手を強く見せ、強い手を弱く見せる。そうすることで相手を揺さぶるのだが、一方でこちらの真の狙いを気づかれないように、表情を隠す技術が求められる。


 もちろん顔に出さないことなど初歩の初歩で、卓越した勝負師ともなれば、より小さな変化で虚実を見抜いてくる。呼吸の変化や視線の動き、微妙な表情の変化や仕草など、本人すら認識できない癖を見抜く。

 そしてここに揃っている勝負師達は、皆が訓練と努力を積み重ねた一流の者達ばかり。その彼らの目から見れば勇者サイトウの仕草は筒抜けも同然だった。


 勇者は透視能力でこちらの手札が見えているかもしれないが、勇者の仕草を見れば、勇者の手札もこちらにはわかっている。

 もちろん透視能力のように、カードの数字まではわからないが、誰が強いか弱いか? 勇者が勝っているのか負けているのか? 透視能力が確実であるが故に、正確に勝敗の判定が可能となる。


 ここまでわかれば、あとは確実に勝てるときに勝負を挑めばいい。勝敗の結果は手札を開ける前に、勇者の仕草が教えてくれる。

 なんのことはない、真っ当にポーカーをして、相手の仕草を見ていればよかったのだ。

 逆に勇者サイトウは慢心故の油断が多すぎる。


 いくら透視能力があるとは言え、素人同然の技術で勝てるわけがない。

 ちゃんと準備期間中に信頼できる勝負師を雇い、訓練を重ねて自分の癖や仕草を矯正すれば、有利を有利のままに出来たのに、慢心が過ぎる。

 一方で恐ろしいのはマダラメとジードだった。序盤の動きを見るに、二人とも一回目か二回目の頃には、これが出来たはずだ。

 あえて勇者を放置したのは、ほかの参加者を減らすためだろう。


 二人を観察することで勇者を倒す糸口を見つけたが、二人は遥か先を見ている。

 追いつけないまでも、なんとか食らいついていかなければいけなかった。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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よろしくお願いします。

ロメリア戦記の次回更新は七月五日には更新できると思います

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― 新着の感想 ―
[良い点] 奥の手は残しておくものだよ
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