第六十五話
次回更新は四月四日と言ったが、あれは嘘だ!
エイプリルフールに騙されたな!
第六十五話
カイトは勇者が起こした事件の後始末をするため、必要な指示をとにかく下していく。
当初大きな混乱が予想されたが、カジノの混乱はすぐに終息した。
怪我人の救助や治療、客の避難を行っていると、ダンジョンから大量のスケルトンが現れたからだ。
襲われることを警戒し、四英雄と共にカイトも武器を抜いたが、スケルトンたちに戦意はなく怪我人の救助と客の避難の誘導を開始したのだ。
「このような事態になってしまい、申し訳ありません。カイトさま。英雄の皆様」
服を着ていないスケルトンの一体がカイトの前に着て頭を下げる。
「ダンジョンマスターか?」
その話し方から、カイトはダンジョンマスターがスケルトンを操っていることを看破した。
「はい、対応が遅くなり、申し訳ありません。まずは怪我人の救助と治療をさせていただきたい。またこのような事態ですので、カジノはいったん閉館とさせていただきます」
ダンジョンマスターは大穴が空いたカジノを見る。
さすがに崩落はしないが、穴が広がる可能性はあるし、落ちたりしたら危険だ。
新たにやってきたスケルトンたちは人々を救出する者たちとは別に、空いた穴の周囲に立ち、人が近づかないようにしていた。
スケルトンが避難誘導してくれるのは有難いが、カイトとしては聞かなければならないことがあった。
「あの、ダンジョンマスターマダラメ。ああ、こう呼んでいいですか?」
初めて名前を知り、カイトはダンジョンマスターの名前を呼びたかった。
「ええ、構いませんよ。カイトさま」
マダラメが拒否しなかったので、カイトは続ける。
「その、大丈夫なのですか?」
カイトは穴の開いた扉を見る。あの穴から、勇者サイトウが入っていったのだ。
勇者がダンジョンの攻略に向かったというのに、こんなところで油を売っている暇があるのだろうか。
「確かに、あまり余裕はありませんね、現在かの勇者は扉や壁を破壊してダンジョンの奥に突き進んでいます。せっかく用意した謎を解いてはくれないようで」
残念だと全く残念ではなさそうに言う。
「とはいえ、勇者様のお相手もせねばなりませんので、この場は失礼します。もし何かありましたらただのスケルトンでも構いませんのでお呼びください。できうる限りのことはさせて頂きます」
それだけ言うと、マダラメスケルトンは、ただのスケルトンに戻ってしまった。
「ダンジョンの扉や壁を打ち破って進むのか」
そんなダンジョンの攻略法があるのかと、カイトは言いたい。しかしそれを可能とするのが勇者なのだ。
「ほんと、大したものよね」
スケルトンとの会話が気になったのか、四英雄が集まり、その中でアルタイル嬢が吐き捨てる。
「勇者の力に、神剣ミーオンの力が加われば、できないことなんてないわね」
傍若無人がドレスを着ているようなアルタイル嬢が、素直に勇者の力を認めた。
「それほどですか」
「正面からの力押しで、勝てる人間は居ないでしょうね」
灰塵の魔女、四英雄の目から見ても、勇者の力は尋常では無い。
「では、このダンジョンは攻略されてしまうのですか?」
歴史に残っている限りでは、勇者が訪れたダンジョンは全て攻略されている。
勇者はその力や神剣ミーオンだけではなく、他にもダンジョン攻略に有効なスキルをいくつも所持していると言われているからだ。
大量のアイテムや食料を保管できる、アイテムボックスの能力に。ダンジョンの構造や罠を見抜くマッピング能力。
相手の力量とスキル構成を見抜く鑑定能力に、いちど訪れた場所に瞬時に移動できるテレポートなど、どれか一つ持っていればそれだけで英雄の仲間入りできるような能力を、これでもかと所持していると聞く。
そんな勇者に挑まれて、無事で居られる方が難しいだろう。
勇者を止めることはできないとはいえ、このダンジョンが攻略されては困る。
しかし最早どうしようもない。
「まぁ、そうなってくれると、私たちは楽でいいのだけどね、まぁ、無理でしょう」
アルタイル嬢がキッパリと言い切る。
「あの勇者でも、このダンジョンは攻略出来ないのですか?」
カイトとしては意外だった。
勇者の力に加え神剣ミーオンの力があれば、攻略出来ないダンジョンなどないように思うが。
「あんな隙だらけのやつに、ここが攻略できるわけがないでしょう」
アルタイル嬢は勇者を切って捨てた。
「力は確かに強い。それは認める。力押しなら私でも勝てない。でも、戦いは力の大きさだけでもないでしょ?」
灰塵の魔女は諭すように語る。
「私たちは八大ダンジョンをそれぞれ攻略しているけど、あそこに居た階層主は、どれも力だけなら私たちを超えていた。それでも私たちは彼らを下してきた」
アルタイル嬢を始め、残りの三英雄がうなずく。八大ダンジョンはやはり最高峰だったのだ。
「アンタも気付いていると思うけど、このダンジョンは油断できない」
アルタイル嬢はカイトの内心にある恐れを言い当てた。
ギルド長やメリンダたち昔の仲間にしか言っていない事だが、四英雄は気づいていた。
そして同じく四英雄も、このダンジョンを危険視している。
「このダンジョンは異常よ、八大ダンジョン以上の力を持っているのに、その力の片鱗も見せない。細心の注意を払って隠している」
そう、このダンジョンが恐ろしいのはそこだ。力を隠し、しかもその狙いが読めない。底が見えないのだ。
「そんな相手に、油断だらけの男が勝てる訳がないでしょう」
アルタイル嬢は勇者の敗北を予言した。
「あの勇者がもうちょっと慎重な男だったら、仲間に加えたかったけど、あれじゃあ勝てる相手にも勝てない」
「では、勇者は負けるのですか?」
カイトとしては、勇者サイトウに対しては恨みしかない。だがそれでも勇者の敗北は見たくなかった。神の寵愛を受けた勇者が勝てない相手。一体誰なら勝てると言うのか。
「あの勇者をどう対応するか、これが試金石となるわね」
アルタイル嬢をはじめ、四英雄は勇者を使いダンジョンの力量を見るようだった。
確かにこのダンジョンは、これまでその実力を見せていない。勇者を当てれば何かがわかるかもしれなかった。
「このダンジョンで最初の死者が出るのか」
カイトは少し残念な気持ちになる。
カジノダンジョンの危険性を理解しつつも、それが顕現する事態は見たくなかった。
次回更新は四月四日です
これは本当ですよ。




