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第二巻発売中! ダンジョンマスター班目 ~普通にやっても無理そうだからカジノ作ることにした~  作者: 有山リョウ


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第五十八話

 第五十八話


 メリンダに勇者出現の情報を伝えられた俺は、すぐさまカジノダンジョンを出た。

 ダンジョンの階段を駆け上がり外に出ると、ダンジョンの外には雑多な街並みが広がり、多くの露店が並んでいた。露店の間を様々な人種が行きかい、大きな賑わいを見せている。

 この街の発展は著しく、人の波は絶えない。ギルドの支部に向かうのもこれでは一苦労だった。

 人の波をかき分けるように支部に向かうと、露天ののぼりが目に入ってきた。

 のぼりには迷宮の街メイズ名物、固形食糧と果物詰。と書かれていた。

 もちろん全部嘘っぱちだ。

 売られている固形食糧や缶詰もダンジョンの景品ではなく、店の人間の手作りだ。似たような味付けがなされているが、袋は違うし、果物詰は缶ではなく瓶だ。何より、この街の名前はメイズなんて名前ではない。


「メイズなんて、だれが決めたんだよ」

「誰も決められないからでしょ、いい加減街の名前ぐらい決めないと」

 カイトの小さなつぶやきを、メリンダが聞いて答える。

 確かに、その問題はずっと残っていた。実はこの街の名前は、まだ決まっていないのだ。

 街の未だ名前が決まらぬ原因は、この辺り一帯を支配する東クロッカ王国にある。王国が街の名前をクロロッカという名前にしようと言い出したのだ。

 名前からして、東クロッカ王国が影響力を強めようとしていることは明白であり、この街を三分する冒険者ギルドと商人連合は反発したのだ。

 おかげでクロロッカはなくなったが、その次が決まらない。まだもめにもめている。


「叔父さんをはじめ、みんな頑固で妥協できないからな」

 カイトの叔父であるギルド長は言うに及ばず、商人連合は何かと利益に口を出すギルドを快く思っていないし、最初に否定された東クロッカ王国も自分の意見が通らないなら、どこの意見も通さないと意固地になってしまった。


「私は好きだけどね、メイズって名前」

 メリンダはメイズの名前が気に入っているようだが、カイトとしては誰が決めたかわからない名前を認めたくはなかった。

 いずれ何とかしなければと思いながら、街の中を進み、目抜き通りに建てられた冒険者ギルドの支部に到着する。

 扉を開けて支部に入ると、ギルドでは多くの冒険者が集まっていた。また人が増えている気がする。


「あっ、カイトさん」

 ギルドにいたカル君が声をかけてくる。

 以前は新人だったが、このところ仕事に次ぐ仕事で、最近はいっぱしの冒険者に見えてくるから不思議だ。

「また冒険者になりたいと新人がやってきました。また訓練に時間を割かないと、全然終わらないですよ」

 人が増えたことに、カル君がぼやく。


 伝説に語られた八大ダンジョンの内、四つが攻略され残り三つは突然に転移陣が使用不能になってしまった。そのためここから直通で行けるところは、白銀のダンジョン一つだけとなってしまったが、この街に訪れる冒険者の数は減るどころか増え続けている。特に新人の数が急増した。

 攻略できるダンジョンは一つとなってしまったが、街の規模が増えたため、護衛の仕事をはじめ、薬草の採取や魔物の討伐依頼などが増えたためだ。

 そしてここに来れば仕事にありつけると、農村部から冒険者になろうとやってくる若者が増えているのだ。


「わかった、カル君。また訓練講習を実施しよう。メリンダ、準備を頼む」

 カイトは仕方なく訓練の実施を決めた。

 冒険者は全て自己責任。なるのも勝手なら、やめるのも勝手だ。しかし素人が勝手をやりだせば、割を食うのはギルドや元からいた冒険者だ。

 冒険者が守るべき規則や心得ておくべき知識。そして何より基礎的な実力を身に着けさせるため、ギルド主導で冒険者を育成する訓練講習を開いたのだ。

 それは一定の効果を出したが、おかげで新人がさらに集まってくるようになってしまった。


「シュナイダーさんには俺から話しておこう。魔法使いがいた場合はゲッペルさんに、けが人が出た時のためにフレザンスさんにも来てもらおう」

 カイトは最近この街にやってきた冒険者の名前を挙げた。三人とも腕が立ち、シュナイダーは高名な剣士で知られており、ゲッペルは魔法都市からやってきた熟練の魔法使い。フレザンスは聖女クリスタニア様の弟子にあたる人物で、高レベルの癒しの技を駆使できる。

 三人とも後進の育成にも熱心で、新人講習には知り合いや自分の弟子を引き連れて、指導に協力してくれる。


「お願いします、あとダンジョンのガイドですが……」

 カル君はさらに続けようとしたが、カイトはさえぎった。

「ああ、まってくれ、ギルド長に呼ばれているんだ」

 ここに来た目的がある。だが勇者出現の情報はまだ広まっていないため、カル君は知らないし、教えるわけにもいかない。

「また後で時間を作るから」

 カイトは断りを入れてその場を離れる。

 ギルド長が待つ部屋に向かうが、その途中でも冒険者やギルドの組合員などから声を掛けられる。その話はまた後でと断るが、次々に声を掛けられるので、なかなか部屋に行けない。


「なんでみんな俺に聞きに来るんだ?」

 カイトとしては、事務仕事は人に任せたいのだが、みんなが自分のところに来る。

「人気者ね、旦那様。みんなあなたを頼りにしているのよ」

 隣でメリンダが笑うが、仕事が多すぎてはっきり言って死ぬ。

 何とかギルド長の待つ部屋にたどり着き、ノックをして中に入る。


「遅いぞ、カイト! 何をしていた」

 入るなりギルド長が怒鳴る。仕事ですよと勇気があったら言いたい。無いけど。

「それより、勇者が現れたというのは本当なんですか?」

 カイトは事実確認をする。これまで勇者の名をかたった者は多いからだ。

「ああ、間違いない。サイトウという名前の男が、救済教会の総本山エルピタ・エソ大聖堂にある封印の台座から、オリハルコン製の神剣ミーオンを抜いたそうだ」

 ギルド長が間違いないと話す。


 オリハルコンでできた神剣ミーオンは、神が作った武器とされ、一説によれば神さえも殺すことが出来ると言われている。

 本当に神を殺せるのかどうかはわからないが、過去に国を滅ぼした歴史があり、その力は疑う余地がなかった。

 ただ、神さえもその剣を恐れていたのか、神剣は山の奥地にある封印の台座に突き刺さっており、神が遣わした勇者にしか抜けないとされている。

 救済教会は神剣を管理するため、その山にエルピタ・エソ大聖堂を築き、常に神剣を見守っている。


「ミーオンを抜けたのなら、勇者であることは間違いありませんね。やはり別の世界から来ているのですか?」

 カイトはもう一つ確認した。

 勇者はこの世界の人間ではないと言われており、別の世界からやってくるとされていた。

「ああ、そうらしい。この世界に来たのは一月ほど前だとよ」

 違う世界など信じられないギルド長が、吐き捨てるように言う。


「そして、神剣を引き抜いてその足で、八大ダンジョンに行ったのですか?」

「そうらしい。三日で二つ攻略したそうだ」

 カイトの質問にギルド長が応えるが、それは計算が合わない。

「ちょっと待ってください。攻略されたダンジョンは、そんなに近くに無かったですよね」

 カイトは頭の中で地図を思い浮かべる。八大ダンジョンは世界各地に点在している。攻略された二つの元八大ダンジョンもかなりの距離があったはずだ。

 転移陣でつながっていた時ならばいざ知らず、歩いて旅をすれば軽く一ヵ月はかかるはず。


「召喚術で天馬を呼び出して移動したらしい。片道半日もかからなかったそうだ」

 ギルド長の説明に、なるほどとうなずくしかない。そして勇者の実力も本物のようだ。

 召喚術は稀少で高度な魔法だ。しかも翼をもつ馬である天馬は、一日で大陸を駆けるという伝説級の生物。天馬を召喚できるというのであれば、その実力は疑う余地がない。


「本当に勇者なんですね」

 カイトは短くため息をついた。

 伝説に語られる勇者は、神剣を使えるだけではなく多くの素質を持つと言われている。

 まず元々が強く、大量のマナをその身にため込んでいる。さらに経験を積めば飛躍的に成長したと書物では書かれている。

 ほかにも希少な魔法や技術を持ち、神剣の力も相まって、無双の存在と言われている。


「問題は、その勇者がどういった人間かということですね」

「そうだな。善人であるといいのだが」

 カイトの言葉に、ギルド長が同意した。

 悪人の手に渡らぬように、神剣は封印の台座に収められ、神が遣わした勇者にしか使えないようになっている。

 だが神に召喚された勇者が善人であると、決まっているわけでもないのだ。


「これで勇者は五人目ですか」

 カイトは記録に残っている限りの、勇者の数を数えた。

 過去に勇者は四人現れたと、記録には残っている。だがそれは決して善行の歴史ではない。

 いや、勇者は確かに善行を成す。人々を助け、魔物を倒し、ダンジョンを攻略する。それは間違いない。最初の内は。


 初めは善行を成すが、時が経つごとに勇者の行動には粗暴な面が目立ち、望んでもめごとに首を突っ込み、時には自身が火種となることすらあった。

 子供のような価値観で問題を起こし、力が強すぎるため誰にも止めることもできない。結果国を滅ぼした歴史さえ一つや二つではないのだ。

 気ままにふるまい、国さえ滅ぼす力を持った子供。

 勇者の出現は、強大なダンジョンよりも危険と言えた。


「それで、その勇者サイトウがこちらに来ると?」

 カイトが訪ねると、ギルド長は首を振った。

「さぁな、それはまだわからん。ただ連中、ダンジョンの攻略だけは熱心だからな」

 そう、何をしでかすかわからない勇者だが、ダンジョンの攻略は使命と感じているらしく、現れた勇者は必ず当時最高のダンジョンを攻略している。


 現在最高のダンジョンと言えば、間違いなく白銀のダンジョンだ。

 長い歴史を誇り、幾多の冒険者を飲み込み、過去最高のダンジョンと言われている。


 一方このカジノダンジョンは、生まれてまだ二年と経っていない。歴史は浅く、格も低い。碌なモンスターもおらず、そもそもダンジョンとすらいえない作りだ。

 勇者が求めるようなものはここにはない。

 カイトとしてはそう断言したいが、心のどこかで、その考えは必ず外れるだろうという予感があった。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうござい。

ロメリア戦記の方も更新していますので、そちらもよろしくお願いします。

次回更新は三月十四日土曜日の零時を予定しています。

これからもよろしくお願いします。

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[良い点] 美しい魔勇者鈴木もいたんやろなぁ…
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