魔領域への足がかり
本日二話目です。
異世界転生57日目の昼。
俺はルーメンの山奥に来ている。
長距離砲撃のため、硫黄と硝石から、硫酸を作成している。
硫黄も硝石も、獣公爵領から大量に買い付けた。
まず、炎魔法を用いて、両者を燃やしながら、氷魔法で精製した水蒸気を反応させる。
それにより発生した気体を、氷魔法で冷却すれば完成のはずだ。
それを煮詰めて、硫酸の濃度を濃くする。
次は、硫酸と硝石を、炎魔法と氷魔法を用いて、蒸留する。
なんだか、炎魔法も氷魔法も、同じ分類の魔法のような感じだ。
この液体を濃くすれば、ある程度の濃度の硝酸が完成のはず。
更に、木材を乾留して木酢液を得る。
木酢液から、温度に気をつけながらメタノールを得る。
何を作りたいか分かっただろうか?
大豆などから油脂を渋りだして、炎魔法を用いて高温に熱する。
その中に、高温に熱したメタノールを注入する。
反応気体を氷魔法で冷却し、量子魔法を用いて沈殿させれば、バイオ燃料とグリセリンの完成だ。
硫酸と硝酸の混液を冷却したものに、グリセリンを反応させれば、ニトログリセリンが精製される。
つまり、爆薬の原料だ。
もちろん、バイオ燃料から発電も発動も可能になる。
とりあえず、ルーメンの屋敷の電球に使う予定だ。
まぁ、ディーゼルエンジンを作らないといけないわけだが。
ルーメンの山中に、獣公爵領からやってきた奴隷達の施設を作っている。
前後左右、及び下方が総花崗岩製の要塞だ。
花崗岩の外側は、粘土質の土壌によって囲っている。
更に、その外側は樹脂を塗り固めた。
精製される物質というのは、有害なことが多いからな。
少しでも、地中や海中に漏れ出すのは防ぎたい。
有害物質は、太陽に向けて射出すればいいしな。
製鉄奴隷の数は二百人ほどだが、これに巫女天狗を2048人召喚して、
製鉄技術を進歩させようと考えている。
基本的な化学知識は巫女天狗が持っているが、実経験が足りないからな。
まずは、鉄鉱石と石灰石、あとは石炭を乾留したコークスから、高炉を作らせる。
合金については、精製奴隷の百人と巫女天狗1024人に担当させる。
種類があり過ぎて、用途に適したものを見つけて貰わないといけないからな。
幸い、自然に存在する金属なら無制限に生成できる。
異世界転生58日目の朝。
俺はルーメンの屋敷で起きた。
「ジン、今日は私の相手をして貰うぞ?」
珍しくネプが上に乗っている。
リルエルとララが、悔しそうに自家発電している。
うん、こんな日もいい。
俺は獣公爵領から貰った直轄領に来ている。
ララは、姉妹に会いに行かせた。
もちろん、ネプと奴隷娘達も一緒だ。
港町を含む領地だが、広さはあまりない。
せいぜい、四方20キロだ。
まぁ、直轄領だからいいんだけどな。
「我が神よ。こちらは順調に進んでおります。
食糧供給は他の直轄領に依存して、その他の人員を集めております。」
巫女天狗による改革も進んでいるようだ。
この領地は前線基地とする予定だ。
商人や宿屋を多くして、冒険者の数を増やしたい。
まぁ、量産品では世界一の剣などが、売られるようになるしな。
獣公爵領の南部には、広大な魔領域が広がっている。
その開拓を目指したい。
魔族の国があれば、友好的に接したいしな。
ありがとうございました。
なお、作中の化学は現代化学の礎となった偉人を称える趣旨により記載しており、悪用しないようお願い致します。
科学的には、メタノールと油脂から、バイオディーゼル燃料とグリセリンが得られる画期的な技術に注目して頂ければ幸いです。




