第62話 おっさん侍と日本刀
「ブモオオオ!!」
ゴアキリンはそんな声を上げながら俺に勢いよく突っ込んできた。
俺は突っ込んできたゴアキリンの動きに合わせて、カウンターを入れようと剣を構える。
すると、突然ゴアキリンの骨が光り出した。
「え? なんで光ってるんだ?」
俺が突然の事態に眉根を寄せると、ゴアキリンは二つの角の中央にエネルギー波のようなものを溜めて、俺に向かって放ってきた。
静電気を激しくしたような音を響かせながら、こちらに向かってくるゴアキリンから放たれて一撃を前に、俺は咄嗟にスキル『おっさん』を使って魔法使いのおっさんの力を使って応戦する。
おっさん魔法使いの力と知識が頭と体に流れ込んだ俺は、持っていた剣を地面に突き刺して一気に魔力を流し込んだ。
そして、その魔力を流し込んだ部分の地面を丸ごと持ち上げるイメージをして、大きな土壁を形成した。
「……さすが、おっさん魔法使い。なんでもできるのな」
ガガガッ!
俺はおっさん魔法使いの力に感心してそう呟いたが、ゴアキリンが出したエネルギー波は止まることなく、土の壁を荒々しく削っているような音を立てていた。
「あまり長くは持たなそうか」
どうした物かと考えていると、おっさん魔法使いの知識が俺が次にとるべき一手を教えてくれた。
俺は少し荒々しいその方法に顔を引きつらせながら、刺しっぱなしになっている剣にさらに魔力を流し込む。
すると、土壁は徐々に大きくなっていき、周囲にある木々よりも大きくなった。そして、俺が魔力の込め方を変えた瞬間、土壁が一気に崩れてゴアキリンを押しつぶそうとした。
ズウウウン!
「ブモオオオ!」
ゴアキリンはそんな悲鳴を上げて一瞬土壁に潰されながら、土壁を破って俺のもとに突っ込んでこようとした。
しかし、ゴアキリンが土壁を破ったときには、俺はゴアキリンの近くまで移動していた。
「悪いな。おっさん剣士の間合いだ」
そして、俺はおっさん剣士の力で剣を二度振った。すると、一瞬金属音が聞こえたと思った次の瞬間には、ゴアキリンの角が根元からぽろっと地面に落ちた。
「ブモオオ!」
「これで、さっきのエネルギー波みたいなのは撃てないよな」
俺は角を斬られて暴れまわるゴアキリンを見ながら、再度剣を振るう。
……これで、首元を斬れば終わりだ。
ガギャッ!
しかし、俺が振り下ろした剣は鈍い音を立てて途中で止まってしまった。
「は? 斬り落とせない?」
いつもならどんな相手でも簡単に真っ二つにしていたはずなのに、ゴアキリンの首だけはなぜか斬り落とせず途中で剣が止まってしまった。
こいつ、鱗が異常に硬いぞ。
「ブモオオ!!」
ゴアキリンが暴れたので慌てて剣を引き抜いて、俺は一定距離を保つ。
このまましばらく放置していれば出血だ倒れるかもしれないが、伝説上の麒麟がモチーフになっているような魔物相手にしばらく逃げ回るのも得策とは思えない。
おっさん剣士の力で斬れないとなると、他に倒せる方法なんてあるのか?
俺は日本刀をちらっと見て考える。すると、ふと日本刀が似合うおっさんが別にいたことに気がついた。
「まぁ、日本刀を使ってるわけだし、剣士じゃなくてこっちの『おっさん』の方がいいかもな」
「ブモオオオ!!」
すると、ゴアキリンが角を失った状態で俺にまた突っ込んできた。俺はそんなゴアキリンを正面から迎え撃つように剣を構える。
そして、俺はスキル『おっさん』を使って、とあるおっさんの力で剣を振り下ろした。
シュンッ!
すると、ゴアキリンは剣を振り下ろした先から真っ二つになっていき、俺を挟んで体を左右に分けて倒れた。
「おっさん侍……すごっ」
俺が使ったスキル『おっさん』はおっさん侍の力だった。日本刀の使い手と言えば、剣士というよりも侍かなと思って使ったが、おっさん侍は硬い鱗も頭蓋骨もすべてを真っ二つにしてしまったみたいだ。
どうやら、おっさん侍もただの侍の強さではないらしい。
俺はおっさん侍のあまりの強さに思わず引いてしまうのだった。




