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【書籍化&コミカライズ】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。  作者: ごろごろみかん。
三章:寓話の相違

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目的の先にあるのは何?



──コンコンコン。


考え事をしているうちに、どうやら私は眠りに落ちてしまったようだった。


扉を叩く音で目が覚めた。

ベッドに身を起して、窓の外に視線を向ける。すると、窓の外は既に太陽が地平線の向こうに隠れようとしていた。つまり、夕方である。


(しまった……お昼ご飯食べ損ねた!!)


一番最初に思ったことが食い気なのは我ながらどうかと思ったけど、逃亡生活真っ只中だもの。食べられるときに食べておかないとね……!

と、いうことにしておく。


私はぐっと伸びをしてから、扉に目を向けた。


(ノック音が聞こえたと思ったんだけど……)


と思っていると、扉の外から声が聞こえてきた。


「エレイン?まだ寝てる?」


テオだ。私は焦ってテオに言った。


「起きてる!!起きてます!!おはようございます!」


寝坊助だと思われたくない一心で、起きてますアピールをしたけれど。

それなら起床の挨拶は不要だった!と後から気が付いた。


「なら、入るよ」


「どうぞ!」


鍵は、テオが持っている。

私は足がこの状態なので、鍵の施錠が難しい。そういう経緯からテオに鍵を預けているのだった。

そこでふと、私は気が付いた。


(あら……?私、椅子に座ってたと思うんだけど……)


いつの間にベッドに移動していたのだろう。そう思っているうちに、テオが部屋に入ってきた。


「おはよう、エレイン」


「おはようございます……」


テオの様子から、恐らくテオは起きていたのだろう。

仮眠を取ったとしても、夕方までは寝ていなかったようだ。


(もしかして、夕方まで眠りこけてたのって私だけ??)


答えを知りたいような知りたくないような、そんな気持ちで私はテオに尋ねた。


「テオは寝ました?」


「少しはね」


ということは、私のように夕方まで眠りこけていたわけではない……!


ファーレもきっと同じようなものだろう。疎外感というか、ちょっと残念な人間の気持ちでいると、テオが窓際の椅子に座った。

私が寝落ちた場所だ。

赤い夕陽に照らされるテオを見ながら、私は気になっていたことを思い出して、テオに尋ねた。


「そういえば、セドアの街で」


テオが私を見たので、そのまま言葉の先を続ける。


「……テオが夜、宿を抜け出したのは、妹さんを探すため?」


「うん、そうだよ」


テオは短くもはっきり答えた。

そして、私が何か言うよりも先に、言葉を続ける。


「エレイン。手、出して」


「へ?はい」


言われた通りに両手を揃えて差し出す。

出してから、もしかして片手だけでよかったのかもしれないと思っていると、テオがポケットから何かを取り出した。


それは──きらりと光る、


「小瓶……?」


その中には、個包装された飴と思われるものが入っていた。


「これ、飴ですか?」


「妹が好きだったんだよね、この飴。今はもう、わかんないけど。少なくとも八年前はそうだった」


(テオの妹が行方不明になってから、八年か……)


私は手の中の瓶を見つめながら、テオに尋ねた。

色とりどりの包装紙は、確かに少女が好みそうだ。


「再会したら渡そうと?」


「──そうだね」


「私がもらってもいいんですか?」


「いいよ。そもそもいつ会えるかすらわかんないし」


「でも、テオは会えると思っている。だから、持ち歩いているんですよね?」


私の言葉に、テオはわずかに返答に詰まったようだった。

踏み込み過ぎたかと思ったけど、テオは私の命の恩人だ。

テオがいたから私はウェルランの森を抜けられた。城に連れ戻されることもなかった。

というか、出会っていなかったら死んでいた可能性が高い。


だから、聞きたいと思った。

知ろうと思った。


「ねえ、テオ。聞いてもいいですか?」


私の言葉に、いつものやり取りとは違うと彼も思ったのだろう。

少し間があったけれど、テオは「なに?」と聞き返してきた。


だから、聞いた。

私の推測があっているのかの、答え合わせを。


「テオの目的は……復讐ですか?アルヴェール王への」



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