表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。  作者: ごろごろみかん。
三章:寓話の相違

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/100

爆発&爆発

その言葉に、ジェームズ・グレイスリーはしばらく沈黙していたが、やがて彼は突然笑いだした。


「はは……はははははは!!いや、面白い話を聞きました。良いですね、久しぶりにこんな愉快な気持ちになりましたよ」


「それはどーも。正答者が出て気分でも良くなりました?」


「ふむ。あなたの話は大変面白く、興味深かった。……ですが、そこまで妄想癖が激しいと、日常生活にさぞ苦労するのでは?」


妄想、つまり虚言だと断定されたファーレは、不服そうにくちびるをへの字にしていたが、やがてため息を吐いた。


「そうですか。ま、アンタと押し問答するつもりは無い。聞きたいことは聞けたから、俺は満足。エレイン、アンタは?」


そこで初めて、ジェームズ・グレイスリーの前では初めてファーレに名前を呼ばれたことに気がついた。つまり、彼は意識して呼ばないようにしていたのだろう。


「私も、ないわ」


後はファーレに聞こう。今この場で押し問答している時間は、もとよりない。


そう思ったところで、ジェームズ・グレイスリーが眉を寄せた。


「……エレイン?」


「あなたは、その石を神様からの贈り物のように思っているようだけど……実際は、瘴気を吐き出すだけの毒に過ぎないと。いうことよね?」


そして最後に、念押しで確認する。

今から私のやることが正解か、不正解か、確かめたかったから。


ファーレはそれに頷いて答えた。


「そーいうことです」


(それなら──)


「了解。それなら、話が早いわ。私も、私の魔力が回復(・・・・・)しているか(・・・・・)どうか、確かめたいと思っていたの」


ジェームズ・グレイスリーは、私の魔力が飛躍的に上がっていると言った。

今まで魔力なしだと思われていた私が、だ。

それはつまり、魔力量が回復したと考えられる。


それなら──以前のように、魔法が使えるようになっているはず……!


そう考えた私は、ジェームズ・グレイスリーが何か答えるより先に、呪文を唱えた。


「Εκραγεί……ανάφλεξη……」


冒頭だけで何の魔法つかっているのか察したのだろう。

Εκραγείは爆発、ανάφλεξηは点火を意味する。


つまり、私の使おうとしている魔法は、火魔法の系統だ、と。


「まさか」


ジェームズ・グレイスリーが何か言いかけた。だけど私は、彼の言葉を遮って、最後のフレーズまで口にする。


「──αλλά μόνο εν μέρει!!」


口にした瞬間、久しく感じていなかった魔力の流れと、魔法行使による煌めきがその場を包み込んだ。


「その魔力量、その魔法式──まさか、まさか、本当にエレイン・ファルナー!?いや待て。なぜだ、なぜエレイン・ファルナーが……!!」


伯爵の言葉は最後まで音にならない。

なぜなら、その直後、ジェームズ・グレイスリーの背後の石壁が派手な音を立てて粉砕したからだ。


ガシャアアアアアン!!と破壊的な音が響く。


石壁一面に亀裂が走り、その間を縫うようにして火の粉が踊った。

煌めきを帯びて、石壁が崩れる。

その音にヒッと短くジェームズ・グレイスリーが息を飲む。信じられない、とその顔には書いてあった。


なぜなら──


「な、なぜだ。なぜ、エレイン・ファルナーが……!いや、そんなことより、ひ、ひいいいいい!!」


ジェームズ・グレイスリーは、粉々になったブラウグランツを見て悲鳴をあげた。よほど、大事なものだったのだろう。瘴気を吐き出すその石壁が。


「う、うわあああああ!!」


そして、ふたたび絶叫した。

混乱しているジェームズ・グレイスリーを置いて、私は自身の魔法の威力に頷いて、手をグーパーと開いてみる。


「うん。……よし、問題は無いわ」


以前と同じ。ちゃんと……使える!


それを確認してから、私は素早くファーレに合図を出した。


「ファーレ、例のアレを」


壁の亀裂は広がっていく。そのままみしみしと頭上から音が聞こえてくる。

正常に魔法を展開できたのだ。

上の方から爆発音がいくつも続いた。

それにファーレが緊張感のない声で答えた。


「おーすげー。これが本当の賢者の力ってやつですか!」


「そういうのはいいから、早く!」


私が急かすと、ファーレは私の言葉に頷いて答えた。


「それならとっくに起動してますよ、ほら」


ファーレが片目を瞑って見せた直後、背後の方から凄まじい轟音が響いた。




──ファーレの言う奥の手、というのは落ちてきた穴のすぐ近く。塗り固められた石壁を爆破することだった。


ジェームズ・グレイスリーを待たせている間、私がファーレから聞いたのは、爆弾と煙火筒を仕掛ける、というものだった。


『つまり、ですね』


そう言った後、ファーレがどこからか取り出したのは、複数の爆弾と煙火筒だった。


『これ、魔素爆弾です。こっちは煙火筒。本来は、SOSとか救助信号を出すものですね。これを使って、相手の混乱を誘います』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ