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【書籍化&コミカライズ】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。  作者: ごろごろみかん。
三章:寓話の相違

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アルハラは犯罪です


人質は、牢の中のひと。

どちらにせよ、後ろには謎の集団が控えていて、ここから脱出する手はない。


こうなったらもう、シナリオ通りに進めるしかない。

脚本に従って話を展開する物語とは違い、ここは現実。その通りに振る舞っていたとしても、必ずどこかで漬け込む隙ができるはず──。


その時(・・・)がくれば、必ず。

私は一瞬ファーレに視線を向けてから、顔を正面に向けた。


そして、ジェームズ・グレイスリーに促されるまま、そっと青の輝き(ブラウグランツ)に手を伸ばす。


その瞬間──


「ッ…………!?」


たとえば、インフルエンザ罹患中の発熱時、のような。

たとえるなら、就寝時、目を瞑ったら大きな石瓦に押しつぶされるような圧迫感を感じた時のような。

あるいは、お酒を楽しみすぎた結果、酩酊がいきすぎて世界が回っているように感じられる、ような。


つまり──今私は膨大な情報量……というか、何、これ?純粋に容量の大きな塊を押し付けられているような感覚に陥っていた。


(きっ……気持ち悪い!!吐きそう!!)


本当に、高熱時のインフルだわこれ!!


世界はぐるぐる回るし、膨大な圧力で押しつぶされるような感覚に陥るし、何なら口になにか大きなレンガを突っ込まれているような感覚になる……!!


高熱の時にこんな感覚になるの、私だけ??私だけなの!?


寝ようと思ってもしんどくて眠れない挙句、定期的に吐き気が来るインフルA!!!!何なら吐く!!筋肉痛がしんどくて、丸まって眠ろうとするもしんどくて眠れないという地獄のインフルA……!!!!


この感覚は、あの忌むべき日々を思い出すインフルAに似てる……!!!!


吐きそうになって思わず俯くと──(というか今吐いたらファーレにめちゃくちゃ迷惑がかかるのでは!?)遠くで、ひとの声が聞こえた。


違う。遠いのは私の耳だ……!!




「……すか!?……きは……」


「……………はり……か」


「…え……って……」




(ああああああ、頭がぐわんぐわんする!!)


最悪な進化だわ!!

症状がインフルAから深酒に変化した!!

普通に吐きそう!!世界は回るし、ものすごくフワフワするし、平衡感覚が──


(……あ、れ?)


気がつくと、背後に冷たい感覚があった。

ふわふわとしていな意識が浮上する。頭の後ろに、固い感覚。


「……るんですよ。だから、ここで死なれたら困る」


「安心しなさい。お前の魔力量はごくごく平均だけど、合格だ。しっかり、糧にしてやろう」


「あはは。分かっていましたけど、話が通じませんね。半殺しにすれば、多少はその回路のおかしい思考、治りますかね?」


「おや、反抗するのかい?きみ、ひとりで?」


「あいにく、こういう状況は慣れてるんですよ。逆に、滾ります。俺こういう、追い詰められて──なんつーんでしたっけ?ああ、あれ!九死に一生を得る、ってやつ?好きなんですよ。博打みたいな殺し合い、しましょうよ!」




ファーレの声だ。


(サイッアク……頭、いったい……)


二日酔い??二日酔いなの??というくらい、頭が痛い。

ふざけるなよ……あの電波伯爵……。


何したいのかよく分からないけど、最悪の記憶を思い出したじゃない……。


主に、インフルでトイレの住人と化した記憶と、安酒をカパカパやってこれまたトイレと仲良しになった記憶が……同時に……!!


(アルコールの飲み放題ってだいたいお酒の質、悪いわよね……!!)


特にワイン。ワインはだめだ。

記憶が飛ぶし、気付いたら吐いてる。


(…………最悪)


そうよ。そうだったわ。

前世、会社の飲み会にお偉いさんがやってきて……!!

だいたい飲み会強制参加とかいつの時代よ!?

お酒は断るなよっていう上司の無言の圧力を受けて飲んだはいいものの!!

日本酒ワインビールをチャンポンしたのだ……!!私そんなに強くないのに!!


そもそもの話よ!?

飲みを強要するのってどうなの!?

アル中になって緊急搬送されたらどうしてくれんのよ!!


そういうの、そういうのってね……!!


「そういうの、アルハラって言うのよご存知!?!?」


そして、アルハラは犯罪です!!


……って言いたかった。よっぽど言いたかったわ……!

私に出来るのは(おだ)てて私以上にお偉いさんに酒を飲ませて、できるだけ早急にお偉いさんを潰すことくらいである。

『えーお酒強いの凄いですね〜〜!!あ、ここスピリタスあるんだ!すごーい。私飲めないんですけど……飲めます?』

ってお偉いさんをその気にさせることくらい……!!ちなみにそのお偉いさんは豪語するほど強くはなかったようだ。秒で潰れていた。





「……………アルハラ?」


静かな声が聞こえてくる。

それに、意識がまた浮上した。


(そうだわ。私、電波伯爵に飲まされて……じゃなかった。なんか、変な、石……)


今の私は、エレイン・ファルナー……であることをやめた、ただのエレイン。無理な飲みを強要されて吐いてた社畜じゃない……。


目を開けると、そこは洞窟、だった。


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