最終話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ここが女子寮わよ。まずは荷物を置いてくるのわよ」
緑の芝生の中に立つのはレンガ作りの3階建て。エンタランスも窓の形もドームの形で統一されて、屋根のてっぺんには小さな十字架があしらわれています。こんな建物で暮らせるなんて。ああ、あたし、イギリスに来たんだ――
「ささ、こっちが玄関なのわよ」
サリーの後について高いドームの入り口をくぐる。高い天井が気持ちいい。開放的な空気を感じる。
「何してるのわよ、早く来るのわよ!」
「いやあの僕は……」
「僕は、じゃないのわよ、早く来るのわよ! チトセの部屋は2階の21号室なのわよ」
「いや、だから僕は……」
「日本と違って靴箱はないのわよ。土足でどうぞなのわよ」
「だから、僕は男だから……」
「何ふざけてるのわよ! どうして入寮の申請書もふざけてたのわよ?」
「……へ?」
「だから入寮申請書わよ。チトセ間違えてmale に丸をつけてたのわよ。まあ、ちゃんとアタイが訂正しておいたのわよ。ちゃんと感謝するのわよ!」
「……え?」
サリーはずんずん進んでいきます、立ち止まるあたし達の前に英国貴婦人とシスターが現れました。
「Welcome to our Women's Dormitory, Miss Chitose and Miss Manami!」
「何してるのわよ? こちらが寮長とシスター長よ! ほら早く入るのわよ」
「……マナ、どうしよう」
縋るような千歳の瞳、あたしはにっこり微笑み返して、そしてサリーに聞こえないように日本語で――
「いいんじゃない? これからもずっと一緒にいられるね、Miss Chitose!」
こんなに華麗な美少女が、あたしに恋するはずがない! 完
【あとがき】
ご愛読、本当にありがとうございました。
遊里眞名美です。
あたしと千歳の恋物語、いかがでしたでしょうか?
ふたりはまだ高校生、これからこの英国でも色んな事があるかもですけど、どんな困難だってどんな障壁だって、千歳とだったら絶対大丈夫だって信じてます。小説はここでページを使い切りましたが、この先の、あたしたちの未来を皆さまの心の中で、思い思いに描いてくだされば、これに勝る幸せはありません。
ちなみに、あたしの描く10年後にはふたりの赤ちゃんが泣いたり笑ったりしています。千歳にそっくりな女の子と、千歳にそっくりな男の子。その頃の千歳は…… やっぱり男らしい旦那様のイメージは湧かないかな。
さて、本編更新が最後すごく遅くなったことについて、作者になりかわり深くお詫び申し上げます。ごめんなさい。はいほら、作者さん、逃げてないでこっちいらっしゃい!
と言う訳で、日々一陽です。
最終話をお待ちただいた皆さま、本当にごめんなさい。
ひらにひらにお詫びいたします。
さて、本作は女装ものです。
僕は女装ものの美少女ゲームが好きで、「処女はお姉さまに恋してる」「花と乙女に祝福を」「月に寄りそう乙女の作法」などなど、かなりやり込みました。そんな訳で本作を書いちゃったのかも知れません。
世間には女装もの、男装ものの小説や漫画なんかが大手を振って溢れかえっています。ストレートな男女の恋愛物もいいですが、こういうのもいいんじゃないかと手を出しました。でも書いてみると、これが結構難しいんですよね。女装男子の気持ちとか行動とか言葉使いとか。どうして難しいかって? そりゃあ、僕に女装経験がないからです(あるいはそう言う友達がいないからです)。全部想像で書いてますから――
と言う訳で、次作はそこを反省………… することもなく、今度は完全なる女子校ものを書こうかと準備中です。はい、反省を知らない僕です。
近日中に連載開始できるよう、現在絶賛書き溜め中です。
もしよろしければ、次作もご贔屓にしていただければとても嬉しいです。
ではでは、是非また。




