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第10話

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 何故?

 どうして?

 どうして断ったんだ?

 分からない、僕には分からない。


 なんだかふらふらと歩いてる。どっちに向かってるんだろう。学園長室のドアは閉めたかな? まあいいや。3秒前のことだけど何も覚えてない。それにしても、何故? どうして? 彼女とはちょっとすれ違ってはいたけれど――


 マナは絶対喜んでくれると思った。一緒に行ってくれると思った。だから無茶な交渉も頑張った。留学のための学力試験を受けた後、剛勇が如何に素晴らしい学校であるかをの地の先生方に説明した。いわゆるプレゼンテーションってヤツだ。資料も作って、原稿を何度も練り直し、全部暗記した。勿論、彼の地の言葉で。英語はそれなりに得意だけど、でも実践は初めてで、しかもネイティブのブロンドに囲まれて緊張するなと言うのがどだい無理。以前の僕なら緊張から言葉のひとつも出ないまま終わっていたと思う。しかしこの一年の経験は僕を変えてくれたみたい。「女の子」という皮を被って、バレないようになりきって頑張ってきたんだ。僕は出来る、このプレゼンは成功する、そう思い込み、演者になりきるのなんて、もう朝飯前だ。それもこれも彼女と一緒にいたいから。それなのに、何故――


「姉小路さん?」


 呼び声にビクンと止まる。声の主は音澤くんだった。不思議そうに僕を見ている。普段は無口で、あまり話したこともない彼が心配げに僕を覗き込む。


「大丈夫? 顔、真っ青だよ」


 いけない、笑顔を作らなきゃ。いつものクールな美少女を演出しなきゃ。


「へ、平気よ」

「そう? だったらいいけど」


 部活帰りらしい彼の手には緑色のラケットケース、音澤くんって卓球部だったっけ。

 僕は手を振り、通り過ぎた。

 ダメだ、動揺してる。全然収まらない――


 辿り着いた生徒会室には誰もいなかった。みんなどこにいったのだろう? 彼女はもう寮へと帰ったのか? また僕とすれ違って。

 まだ学校にいるかどうかは下駄箱を見れば分かるはず。急ぎ足で確認すると、既に上履きが入っていた。

 またすれ違い。

 最近はずっとこうだ。


 しかしそれは気持ちの歯車が少しだけ狂っただけのことで、放っておけばすぐ元に戻ると思っていた。だけど、その狂いはどんどん大きくなっていく。


 どうして?

 もしかして、嫌われてる?

 気がつくと寮に向かって走り出していた。


 ハアハアハア……

 いけない、落ち着け。

 どうして断った?

 歩けば5分の道のりを、もがくように走った。


「おかえりなさい」


 聞きたかった声がした。

 彼女は玄関で待っていた。


(どうして――)


 僕の言葉より早く彼女が頭を下げる。


「学園長先生から聞きました。ごめんなさい。あたし、我が儘で――」

「一緒にいこうよ」

「本当に、ごめんなさい」


 色のないくちびる。震える声。彼女の目を見て、僕は言葉を飲み込んだ。




 第9章 さようなら  完


【あとがき】


 こんにちは。お久しぶりです。北丘神愛です。

 このところ更新が遅くなってて、本当にごめんなさい。

 作者に成り代わり、深く深くお詫びいたします(ぺこり)。

 作者さん曰く、もう、完全にスランプなんだそうで。


 別段、仕事が忙しいとか、体調が悪いとか、そう言うことはこれっぽっちもないらしいんですけど、全然キーボードが進まないんだとか。怠けてるつもりはないらしく、毎日仕事から帰ってきたら真っ先にパソコンをポチッと立ち上げて、書きかけの一太郎を開いてると言い訳するのですけど。


 でもね、わたし知ってます。そこからの作者さんの行動を。パソコン放っといてテレビ見ちゃったり、録画したアニメ見ちゃったり、痩せるためと称して腹筋始めちゃったり、挙げ句にそのまま寝ちゃったり―― テレビもプロ野球中継とか、最近だとラグビーワールドカップとか、そんなんばっかりだから、見ながらでもちょっとは書けると思うんですけどね。でも、もう全くダメダメな人で。


 原因? 勿論聞きましたよ。曰く、「自分の小説に対する自己嫌悪」なんだとか。いっちょ前に分かったような口きいちゃって。「このまま書き進めてホントに面白いのかな? こんなので読者さんは喜んでくれるのかな?」とか格好つけて言うんですよ。読者さんのこと考えるんならとっとと書いたらいいのに、ね! 一応、ラストまでの筋書きはあるらしいので、だったらそのまま迷わず突き進めばいいのに、ね。ホントにダメな作者さん。


 と、作者の言い訳はこのくらいにしまして。


 学期末が迫ってきました。

 お兄ちゃんは役目を終えて剛勇を去ります。でも、心残りは眞名美先輩のこと。そりゃあ騙し討ちするみたいにして剛勇に引き込んだのは他ならぬお兄ちゃんなんだから、人として当然の心情とは思うんです。だからお兄ちゃんが眞名美先輩を連れて海外逃亡を図っていると聞いたときには、そう来たかって思いました。あ、これ、母に聞いたんですけどね、絶対秘密だよって。だからここだけの秘密です。でも、一度漏れ出した秘密って、既に秘密じゃないんですけどね。


 ともあれこれで全てハッピーエンド、って思ったんですけど、なんだか眞名美先輩の反応が予想外のようで……


 次話「西へ、西へ、」も是非お楽しみに。


 入試突破してご機嫌爆発中の神愛でした。



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