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水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


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第六話 初日終了

 妙高先生は黙って舞湖の話を聞いている。


「それで我慢できなくなって神田川の水を濾過した物を勢いよく飲んだんです。そこまでは覚えているのですが、気がつくと皆さんが神田山と呼んでいるところで倒れていました。そこを弥七さんに助けられたというか拾ってもらったんです」


 妙高先生は考え込んでいる。舞湖の話はわからない言葉が多かった。ただ嘘をついているようには思えない。それに興味深い話が多かった。大江戸は今、飲み水の問題を抱えている。大江戸城の東と南側はすぐ海だ。城で井戸を掘っても海水混じりのしょっぱい水しか出てこない。もしかしたらこの娘は神様が遣わしてくれた救世主なのかもしれない。


「水野様、神田川と仰いましたがそれは一体?」


「舞湖でいいです。なんか水野様はくすぐったいです。神田山を掘って川を作るのです。水源は井の頭公園」


どこだそれは?


「川を作って水を持ってくる、うーむ。さっきまでいた川久保様もそう仰っておりました。ですが、水源に当てがあるというので聞いてみたのですが、どう考えても間に合わなさそうで。その井の頭公園というのはどこにあるのですか?」


 あっ、この時代には公園はないよね?なんて言おう?井の頭公園まで何kmだろう?吉祥寺だよね?


「ええと、西へ20kmくらいじゃない、確か一里が4kmだから20割る4で五里くらい行ったところの水源です」


「そんなに遠くから川を作るのですか?これは川久保様をお呼びしなければ」


 ところが川久保は北町奉行所へ行ってしまっていなかった。舞湖は小石川の医療所に部屋を借りて住まわせてもらう事になった。妙高の判断だ。



 部屋は大体6畳くらいの一間で、個室といっても鍵はなく襖は自由に開け放題。おいおい、花の女子中学生を泊めるのにそれはないだろ、と思ったが江戸時代、いや大江戸時代かもだから仕方ないかと思うと一応つっかえ棒見たいのがあって外から開ける事ができなくする事ができた。まあ襖簡単に壊せそうだけどね。部屋の中には着替えが置いてあった。とりあえず着替えてみるかと着物を手に取ってみた。


「お祭りの時に着る浴衣だと思えばいいっか」


 着てみるとなんとなく田舎娘になった気分だ。町民の服かと思ったが少し豪華に見える。武家の娘用なのかな?着替えて妙高先生のところへ行くと忙しそうだったので弥七さんを誘って散策に出た。もっと色々調べたかったのだ。


 ここが舞湖の知っている小石川なら川はどこまで続いているのだろうか?さっきの川は平川と言っていた。なら、小石川、いやこの当時は谷端川といったはずだ。文献には谷端川がどこに流れていたかは不明と書いてあった。神田川ができてからは神田川と合流していたそうだが、まだ神田川がない。そのまま日比谷の入江に流れ込む説と、平川に合流して日比谷入江に流れ込む説があるが、当時の記録がないのだ。その当時に来てしまったという事は水博士の本領発揮である。


 ところが、


「すいません。もうじき日が暮れますので外へ出ても何も見えやせん。明日また来ますのでその時にでもご案内致しやす」


 弥七に断られてしまった。そういえば街灯もないし夜は真っ暗なのだろう。仕方ないので部屋に戻ると部屋の前に本が置いてあった。


「そうか、妙高先生が気を利かせてくれたんだ。この時代の事をもっと知らないとだしね」


 そう思って本を持ち部屋に入り、本を開くと


「よ、読めない。なんですか、このミミズのような字は」


 この時代の字は現代人には厳しかった。仕方ないので読んでくれる人を頼むしかないなと開き直る。だって読めないんだもん。もうじき晩御飯よね、なんかお腹が空いてきましたのよ、オホホホホ。なんて独り言で言ったのが聞こえたのか、女中のような人が食事だと呼びにきた。


「水野舞湖と申します。しばらくご厄介になります」


「菊でございます。先生から水野様の面倒を見るよう言われておりますので何なりとおっしゃってください」


「ありがとうございます。今日の晩御飯は何ですか?カレーだと嬉しいのですが」


「か、カレーでございますか?それはどんな食べ物で?魚の名前でしょうか?」


「えっ!そっかー、そりゃそうっすね、ハハハハハ。忘れてください」


 カレーが江戸時代にあるわけないだろ、舞湖のバカバカバカ。



 晩御飯は質素だった。客人の身で文句は言えないがなんか黒っぽい米と汁、漬物みたいな野菜。それと豆腐だった。妙高先生と一緒の食卓だ。と言っても座敷に座布団が敷かれ一人づつお盆に分けられていた物を静かに食べるだけだ。と言うのも食事中は皆、静かに食べていた。品がいいったらありゃしない。


 食事が終わるまでは話しかけ難かったが、終わると妙高先生の方から話しかけてきた。


「舞湖殿、部屋は狭いがあれで勘弁してくれ。それと本を置いたが読まれたか?」


「すいません。部屋はいいのですが本の方が私の知っている字と違いまして。どなたか読める方をご紹介いただけませんか?」


「なんと。其方の国の字と違うのですか?言葉は同じなのに不思議な事です。わかり申した、川久保様に明日頼んでみましょう。明日もここに寄られるはずですから」


 助かる〜!そして部屋に戻ると真っ暗だった。蝋燭の火しか灯りがないなんてもう寝るしかないじゃん。そして大江戸の初日が終わった。明日大事件が起きる事を知らずに爆睡する舞湖であった。



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