第四話 小石川での出会い
舞湖は風車の格さんと弥七と共に、小石川の医療所というところへ向かった。湯島台に神田山、それに小石川とくればここは文京区、勝手知ったる文京区。のはずなのだが道も景色も違いすぎてどこを歩いたのか全然わからなかった。丸の内線も神田川も東京ドームもない。目印になる物がナーンにも無いのです。ただ何となくこの坂があの坂ではと想像して歩く事10分、目指す小石川の医療所に着きました。坂を降りて少し歩いたから距離的には東京ドームを過ぎた辺りな気がします。坂を降りたところにまた小さな川があった。さっきの川と繋がっているようないないような。川には水があまり流れていない。さっきの川の方が水量が多く見えた。こっちの川は小石が多い。上流から流れてきたのかしら?小石が多いから小石川だったりしてなんて考えていたら目的地に到着である。
「水野様、ここで先生に診ていただきましょう。あれ、旦那、医療所に御用ですか?」
格さんが先に医療所に来ていた同心に気付いて話しかけた。うん、八丁堀だ。間違いない。必殺何とか人で見た同心にそっくりな格好をしている。
「格じゃねえか、お前こそどうした?この娘さんは何だい?」
「へい、この人は水野様と仰いまして記憶が曖昧だそうで医者に診ていただこうかと。それと大江戸の水不足に良いお考えがあるそうで」
同心らしき男は舞湖をじーーーーっと見ている。なんせ舞湖は女子中学生、平成時代の制服を着ている。今まで歩いてきた中で女性は皆、着物だった。着物といっても色合いのない浴衣のような、温泉旅館の寝巻きみたいな服だった。こんなスカートに靴下、しかもスニーカー履いてるし見た目はむっちゃ浮いてる。髪の毛も舞湖はストレートで肩まで伸ばしている。そんな人他に居ないのですよ。
「お困りの様ですね。色々興味深いのですがまずは先生に診ていただきましょう。格、先生のところへ。俺は奉行所へ行って水野様の保護をお願いしてくる。お奉行の姓も水野だ。ご親戚やもしれん」
大江戸は治安がいいとはいえ怪しい輩もいる。こんな珍しい女子は危ないのだそうだ。同心は中村多聞という名前だそうで格さんによると婿養子で家では小さくなっているとか。
「人が良すぎるんでさあ。出世よりも皆のため、それは我々にとってはいいんですが、周りが出世してて給金が上がってるのにあの旦那は上がらないから家ではね………」
そう言いながら格は橋を渡った。医療所の中を水の無い川があってその橋だ。その先に池があって水を汲んでいる男がいる。その向こうに櫓があってそこから謎の木の管の様なものが電線の様に伝わって城の方へ向かっている。舞湖は閃いた。
「水道橋!」
水道橋という名前の由来はその名の通り水道の橋。神田川に掛かる水道管の橋です。舞湖の世界ではその跡が残っています。見てもふーん、という感じの跡ですが。これが本物の水道橋なのかもしれないと舞湖はワクワクドキドキ興奮しています。
小石川という聞き慣れた地名が付いた医療所に水の無い川、舞湖は今まで得た知識と見た事から舞湖の育った世界の江戸とこの大江戸は似ていると感じました。やはりパラレルワールドなのだろうか。今までのを繋げて考えるとそうだとしか思えない。
舞湖の世界では小石川は地名こそ残ってはいるが川は全て暗渠になっています。小石川植物園の池がその川につながっているというが、川自体は見ることができない。そう思うとこの医療所は植物園ではなく小石川後楽園の位置の様に感じた。
「雨が少なくて川に水は無いけど池があって水を汲み出してお城まであの木の入れ物の中を通って運んでいるのかしら?」
舞湖はわざと聞こえる様に大声で言った。確か小石川は神田川に流れ込んでいたはずだけど、その神田川がない。神田川のところは舞湖が目が覚めた時にいた丘になっている。
舞湖の声が聞こえたのか、橋向こうの建物の中から中年の男性が現れた。小石川医療所の医師だろうか、なんか知性が感じられる。雰囲気だけだけど。
「あれは実験をしているのです。川はそこの池で止まっている様に見えて地下では繋がっていると思っています。丘の向こうからまた水が湧き出て川となっているのが平川です」
そういえば水道橋は神田川にかかる水道管だった。神田川があったところは丘だった。舞湖がいたところが神田川があったところ、いや、神田川になるところという事なのだろう。今はまだないじゃんね、舞湖は自分のハヤトチリだったと気づいた。大江戸の民は小石川から水を汲んでいるそうだが足りていない。城の近くの川や井戸は海水が混ざっていて飲み水にはならないと言っていた。
中年の男性は川久保信春というらしい。確か江戸の水を担当したのは徳川配下の大久保なんとかだった様な?川久保なんていたっけ?
舞湖は水博士と言われるくらい勉強していたので違和感いっぱいだ。と思ってから気がついた。この人水の担当者じゃなくて医者だった。てへぺろりんちょ!
ところが川久保は医者ではなく、徳川秀長から水をなんとかする係に任命された責任者だそうだ。舞湖の目が輝いた。が、それに風車の格さんは気づかすにまずは医者だと歩きだします。
「み、水の話を」
舞湖は慌てて訴えますが、
「それは後でもできましょう」
と軽く断られてしまった。




