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水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


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第三十四話 神田神社

 御茶ノ水という地名はそういえば将軍様が飲んだお茶の水を汲んだところから来ていると本で読んだ。こいつだったのかよ、お前まだ将軍じゃあないだろ!と心の中で突っ込んでみる。今までの結果から見るとこの大江戸と舞湖の世界の江戸は似ているが明らかに違う。この大江戸では豊臣家は関白で現存だし、帝も大江戸城内の禁裏という場所にいるという。


「そうかあ、御茶ノ水ねえ」


 舞湖の大きな独り言が部屋に響く。


「いい名だろう?そうは思わんか?」


 秀光は自信ありげに言った。舞湖は仕方ねえなこいつ、たまには誉めるか、と


「若様にしては上出来ですわね。オホホホホ。で、それと中村の旦那のなんだっけ、そうそう。若様の案件ってまさか名前付けて終わりじゃないよね?」


「おう、案件というのは土地の守り神の事だ。そのオホホホホが出る時はなんかバカにされている気がするのだが気のせいか?」


「気の所為ですわ、オホホホホ」


この野郎。


「まあいい。この坂東の地では昔、争いがあり時の権力者に立ち向かった民の事を思う男がいたのだが権力者の調略により戦に負けてしまった」


なんかどこかで聞いたような………、


「その男は平将門というのだが」


舞湖はおったまげた。


「ええええええええ!名前おんなじじゃん、なんで!なんで将門さんだけ?????」


 秀光その他大勢は舞湖が何を言っているのかわからなかった。ただ舞湖の慌てようから尋常ではないくらいことだけはわかった。舞湖は考え始めた。遠山の銀さん、風車の格さん、その他大勢の人の名前は舞湖の世界の江戸時代と違っている。それは似て非なる世界だからだと思い込んでいたのだがまさかの将門様。日本の三大怨霊でしたっけ?あの有名な将門様。これは一体意味があるのかないのか???


 舞湖はブツブツ小さい声で独り言を言い始めた。こういう時は考え事をしている時だと周りのみんなは知っているので放っておこうとしたのですが、


「舞湖。まだ話は終わっておらん」


 空気の読めない男が一人いた。そう、秀光は話を続けた。


「お前が出入りしている大江戸城の門は大手門という。昔、大手門の近くに平将門公の首が空から降ってきたそうだ。京で首を切られて晒し首になっていたのだが一月たっても腐らず、眼光は通る人を睨みつけていたという。将門公の首はある日空中へと舞い上がりこの大江戸まで戻ってきたそうだ。大江戸の民は将門公を慕い首塚と神社を作った。それが大手門の横にある。気付いていたか?」


 舞湖はブツブツ言いながらも話を聞いていた。将門公か。動かしちゃダメって芽衣ちゃんが言ってた。


「気付いていました。私の世界でも曰くつきなので」


 秀光は舞湖が知っている事に驚きつつも話を続ける。


「それでだ。大江戸の守り神として大きな神社を豊臣・徳川の手で建てるよう余に指示があったのだ。それで移転場所を探していたのだが、御茶ノ水の井戸の近くに神社を建てようと思う」


 ふうん、移転かあ。まあいいんじゃない。移転ねえ。なんか聞いた事があるような。あっ、それって不味いのでは?


「ちょっとちゃっとちょっと、ちゃっとじゃないちょっと。若様。一応確認ですが首塚は動かさないですよね?」


「いや。丸ごと動かすつもりだが」


「アカーン!それはダメです。やめた方がいいです」


「何故だ?立派な神社を建て、寄進も欠かさず行うのだぞ。年に一度は祭りを開いて大江戸の繁栄を願おうと思うておる」


そういえばお祭りやってた。私は興味なかったけど。


「それはいいのですが、首塚は今の場所に残してください」


「首塚だけ残すのはおかしいだろう」


「おかしくてもダメです。祟られます」


「そこまで言うとは一体何を知っているのだ?」


 舞湖は舞湖の世界の言い伝えを話した。過去に何度も動かそうとして事故が多発したと言う話を。




 結局秀光は関白、将軍と相談して神社のみを移転することになった。将軍が舞湖の言う事を信じたのだ。それ以来、舞湖は大手門を通る時には首塚の前で2礼2拍1礼を欠かさず行い始めた。それは気休めに過ぎないかもしれないがなんとなく名前が同じという事が引っかかっている。


 井戸のある場所、監視所の直ぐ裏手の林が整備されて大江戸の守り神に相応しい立派な神社が建設中だ。神田神社と名付けられ大手門の神社から神主が神様を移すそうだ。ただし首塚はそのまま残され、首塚の管理は神田神社の神主が勤めることになった。


 そう、舞湖の世界でいう神田明神である。


 舞湖は今回の件で秀光を少し見直しました。やればできるじゃんって感じです。その秀光は、ちょくちょく監視所に顔を出して格さんや弥七と話したり中村の旦那に菓子を持ってきたりしています。暇なのか、と聞いてみると、


「まだ鈴木という男に会っておらん。最初ここに来た目的が鈴木に会うことだったのだが神田神社で忙しくなってそれどころではなくなったのだ」


「鈴木殿にですか、なんで?」


 舞湖はすっかり忘れています。仕事ができる男がかっこいい、鈴木はかっこいいというように秀光が受け取るように話をした事を。そこに鈴木が運悪く戻ってきました。舞湖は知らん顔をしますが、真面目な鈴木は、


「舞湖様。堰は田村様の設計によりもう少しで完成出来そうです。堀も舞湖様が飯田橋と呼ばれたところまで進みました。予定通り進行しております」


 その声に秀光が反応し鈴木を見る。鈴木の方は誰だろうこの人、とよく見ると三つ葉の紋がついた服を着ている。すぐさま跪いた。


「伊達家家臣、鈴木宗矩でございます。お目にかかれて恐悦至極にございます」


「舞湖よ、普通こういうふうにだな。敬ってもらえるのだが」


 と言ってから、鈴木?こやつが例の。なるほど、確かに仕事ができそうだ。だが余は偉い、舞湖は渡さん。


「若様、今回の神社の件で若様を少しだけ見直しました。これが続くといいですね」


 当の舞湖は何も気にしていない。大の男達が水面下で争っているなんて考えた事もない。


「そうか。見直したか、惚れ直してもいいんだぞ」


 その言葉に鈴木だけでなくたまたまいた玉井、弥七が反応します。玉井は持っていた道具を落とし、弥七は声を上げ、鈴木は思わず立ち上がります。


「惚れ直すも何も、最初から惚れてないので安心してください。はい、仕事仕事」


 舞湖が監視所から出ていくと男達はホッとしたような顔をして何事もなかったかのように普通に仕事を始めた。秀光だけはその場で固まっていた。







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