第二十話 支援
舞湖は神田山の工事現場の後に次の工事予定場所へ視察に行くつもりだったのだが、伊達宗政を放っていくわけにもいかず監督所で看病をしています。この時代には湿布もCMで見るような塗るだけみたいな薬も売ってないので、とりあえず冷やすしかないっしょ!と水で濡らした布を用意させた。本当は、
「氷を用意して」
と玉井に指示したのですが、そんなの無理ですと目に涙を浮かべて断られた。そういえば冷蔵庫ないもんね。現代がどれだけ恵まれていたのかを改めて感じた舞湖は、玉井に無理難題を言ってごめんなさいと謝ると、やけに嬉しそうでした。なんだろう、この違和感。
「お爺さん。腰にこれを当ててください。今、小石川の医療所に薬を取りに行かせてますのでその間少しでも楽になれば」
玉井に何か薬があるか聞いてこいと指示をすると嬉しそうに駆け出していった。なんか、玉井さんの事がわからなくなってきたが、嬉しそうなんだからいいっかと思った。伊達宗政は、
「おう、すまん。後、これでは帰れぬから家の者を呼んでくれんか?伊達家の屋敷に使いを出してくれ」
舞湖は伊達さんのお家の場所を知らない。川久保に頼むとすぐに用意すると言ってこれまた慌てて出ていった。これもまあいいっかと思いながらお爺さんの看病を続けた。最近まあいいっかが多いけど時代が違うとこんなもんなんだろうと割り切っている。玉井が薬を持ってくる間に独眼竜さんと色々な話をした。
「そういえば妖ってなんのことですか?」
伊達宗政は腰を布で押さえながら、これ効くな、気が利く娘だわいと思いながら妖にしては気が利きすぎる。狸か狐の類やもしれんなと思いつつ、
「妖怪といえばわかるか?」
「ググット木太郎さん。あれは漫画か、ええとぬらりひょんとかろくろ首とかですか?ええ、酷い。こんな可愛い女子に向かって妖怪だなんて、ぷんぷん」
舞湖は怒った振りをするがなんか可愛い。伊達宗政みたいに本当に怒っているようには見えない。だが、伊達宗政は舞湖の様子を見て焦った。
「すまん、女子に妖は失礼であった。この通りだ、いててて」
謝ろうとしてまた腰が痛くなっている。舞湖は、
「怒ってないですよ。大丈夫です。ところであそこで何をしていたんですか?」
怒ったように見えたのかな?お爺さんちょろい。
「ああ、上様にお主の事を聞いてな。会ってみたくなったのだ。ちょうど伊達家は前のお役目が終わって一息ついたところでな。上様にお暇をもらうついでに跡取りに何か手柄を立てさせたいので仕事を貰いに行ったら水野が左遷されて代わりに面白い女子が現れたと。こんな面白そうな話に噛まないなんて有り得ないだろう」
有り得ないのですかね?ただの珍しい物好きのお爺さんに見えてきました。
「お暇って引退するということですか?」
「隠居という。すでにわしは隠居の身なのだが上様が隠居など認めんとうるさいのでな。引導を渡しに行ったのだが、藪蛇になってしまったよ」
「なんでですか?」
「お主を手伝う事にした」
本当は何者か見極めるためだがな。宗政は腹の中で正体みやぶってくれるわ、ワハハハハ、と言ったが舞湖は素直に喜んでいる。だって猫の手も借りたいところだったのです。
「では、早速スコップですが」
道具の説明をしていると伊達家から使者と空籠が届いた。使者は片倉大十郎というやっぱりお爺さんだった。
「大殿、何をしておられるのです。城へ行ったのではなかったのですか?」
「大十郎、煩い。腰に響くわい。この娘は水野舞湖殿じゃ。伊達家の客分扱いとせい。この者に10名ほど付けろ。それと追加支援は惜しむな」
「はあ」
片倉は何を言ってるのかわからなかった。そもそもこの娘は?まさか手を出したわけではあるまい。舞湖は不思議そうな顔をしている片倉を見て、こっちはまともなお爺さんだと思った。だって、普通の反応なんだもん。
「片倉様、大江戸の飲み水確保のために尽力しております水野舞湖と申します。お爺さんじゃなかった、伊達様のご厚意でご支援いただけるとの事でございます。以後よろしくお願いいたしますルルル、あれ?」
「ワハハハハ、う、痛い。舞湖殿。笑わせないでくれ、こ、腰が」
舞湖は精一杯丁寧語を使おうとしたが、結果がこれだった。堅物の片倉も吹き出そうになっている。
「大殿、このお方は一体?」
「上様からの命令だ。伊達家の全力を持って支援しろ、とな」
「承知仕りました。それでは大殿、屋敷へ戻りましょう。籠を用意してございます。それと水野殿」
「はい、なんでしょう?」
「家臣へ紹介する故、一緒に来ていただきたい」
えっと一緒に行くってことは支援に期待していいのかしら?全力でって言ってたよね。舞湖は湿布のような怪しい軟膏みたいな塗り薬を持ってきた玉井と川久保の3人で伊達屋敷へ行く事になった。




