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水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


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第十四話 弁天様

 記憶ではあと1kmくらいで水源地の神社のところまできています。川が氾濫というのは少しオーバーで、水が溢れて横の田んぼに流れ込んでいます。ずっと川の土手を歩いてきたのですが、ここからは進めないようです。


「絵に書いておいて。場所もわかるように」


 舞湖は太田に指示をして水の流れを見ています。こんなところで溢れているから下流に水が来ないのです。しかも、昔歩いた通りに椎名町の辺りで川がUターンしてるし。ん?ターンしてるから溢れてるんじゃないの、これ?


 水がターンしているところは向こう側が丘になっていて川がぶつかっています。そして左側の低い方へ流れようとするのですが、川の容量より水量が多くなり、それがために上流の水も行き場を失い上流側で溢れていました。舞湖はそれを観察して見抜きました。


「こういう仕組みで水は溢れるんだ。いつかきっと参考になるね、これ」


 舞湖達は水源へ向かって迂回しながら歩いて行きます。すると村人と思われる人達が農作業をしていました。


「こういう時に格さんがいれば楽なのに。さっちゃん、話聞けるかな?」


 幸は出番が来たとダッシュで村人のところへ走って行き、少ししてから舞湖達を手招きしています。村人は村長も兼ねている中年のおじさんでした。


「お役人様、要村の太助と申します。こんな辺鄙なところまで調査とはご苦労様です」


 村人は絵師の太田に向かって話し始めました。幸は幕府の調査とか言ったのかな?ならそりゃそうなるわな、と舞湖は村人の対応を普通に感じましたが当の太田は大慌てです。見た目はそりゃそっちにいきますよね。


「太助殿。主人はこちらのお方でございます。水野舞湖様です」


 太田は必死に場を取り繕います。なんかおかしくて笑ってしまいました。幸はひでえな、笑わなくてもいいのにとジト目です。舞湖は、その視線を感じてヤバっと思い


「太助さん。舞湖と申します。ちょっとこの川の事で教えていただきたいのですが、村の名前は要村でしたよね?」


 幸は驚いています。地図にも書いていないのになんで知ってるの?凄い人と聞いてはいましたが本当に凄いんだ、と目をパチパチしています。村長の太助は、それには驚かずへえ、この娘が偉い人なのかいと思いながら答えます。


「そうですじゃ」


 うん。確かこの辺りは豊島区要町だ。多分あってるぞ。でもなんで豊島区なんだろう。


「この先に川の始まりがありませんか?多分谷端川と呼んでいると思うのですが?」


 太助は、川に名前なんぞあったかいのう?でも川の始まりならあそこでは?と少し考えてから答えました。


「弁天様の事でしょうか?」


 あ、それだ。確か石版に弁天様って書いてあった。


「それです。案内していただけませんでしょうか?」




 太助は気前よく案内してくれるというのでここいらの土地の話を聞きながら歩くことにした。


「川はよく溢れるのですか?」


「はい。昔は川はなく水がただあちこちに広がって沼になったり陸になったりしていたそうです。それを新田尊氏というお侍さんがこの水は清らかな水だとこちらを通るたびにお参りをするようになりました。そして神社を建て、地面を掘って川を造られたのです」


 へえ、なんか聞いた事ある名前だけど新田なんとかと足利なんとかが混ざってないかい?あんまり詳しくはないけどなんか微妙に違うよね、全てが。


「弁天様と呼んでいましたね」


「はい。清らかな水が湧く場所ですので女人の神であろうとそう名付けたと伝わっております」


 ふむふむ。この太助さん。なんでも知ってるじゃん。スッゲー!ついでにこれも聞いてみようかしら、なあんて。


「この辺りを豊かな島と書いて豊島と言ったりしませんか?」


「舞湖様。それをどちらでお聞きなさったのでしょう?」


 舞湖は焦る。


「いえ、なんかどこかで聞いたような、あははははは」


「言い伝えによりますと、ここら辺一体は昔海だったそうでございます。ご覧の通り土地が高いところと低いところが入り組んでいる場所でして、昔は土地が高いところが島に見えたそうです。島が豊かにある場所という意味で豊島と呼んだそうです。これは代々村長にしか伝えられていないはずなのですが、都の方がご存知とは。驚きました」


「いえ、こちらも驚きました。ここいらが海ですか。でもこの水は飲めますよね?」


「はい。海だったのは物凄い昔の話だとか。今はかけらも残ってはおりませんのでただの言い伝えかもしれません」


 ただの言い伝えだったら現代までその名が残ったりはしないでしょうよ。名前にはやっぱり意味があるんだね。ただ、この水源と海は関係なさそうなので安心しました。飲めなかったら最悪なので。


 溢れているところを過ぎると普通の川になっています。なかなかの水量で流れています。そして川は池から始まっていました。舞湖はそれを見て、


「えっ、全然違うじゃん。どういう事?」


 つい大声で叫んでしまいました。そこにあったのは池が縦に2つ並んでいて途中に橋がかけられています。池と池の間の高いところに祠がありました。前に見た粟島神社の面影は全くありません。完全に別物というか何がどうしてこれがああなるのか???


「どっちが北ですか?」


「こちらでございます」


 太助が答えたのは川から見た池の方向だ。以前は神社があってお参りしたところは川から見て北西側に立っていた。今は川から見てそこにあるのは池が2つ。手前が少し濁った少し小さい池で奥が水が澄んだ大きい池になっている。奥の方から水が沸いているという事だろう。


「………、マジか。ええと、こういう時なんていうんだろ」


 舞湖はしばらくぼーっと奥の大きい方の池を見つめていた。その時、何かと目が合った気がした。そして池に近づいて水面を見た。




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