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水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


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第十三話 チン チン電車

「そうなのよ。あそこで疲れ切ってベルがチン チンて鳴る電車で大塚駅まで行って帰ったのよね。あれは疲れたわ。芽衣ちゃんがチン チンで受けてた、って何の話よ」


 舞湖は小石川の縁を歩きながら昔の事を思い出していたのです。あの時は水源池から小石川に向かって下って巣鴨新田で諦めました。あそこに駅があったら、疲れ切って重くなった脚が駅を見て急に軽くなったのだから電車に乗っちゃいますよね。今は逆に小石川から川上に遡っています。多分歩いた距離感から小石川植物園の辺りに来ていると思います。川はそこだけ広くなっていました。よく見ると洪水防止なのか土手が高く作られています。


「ここはなんか変わってますね」


 舞湖は格さんに聞きました。格さんは、


「へえ、ここはなぜか水が多くて民家が浸水するんでさあ。川久保様が土手を高くして被害を防いだんです」


 その割にはこの下流は水が少ない。そう思ったら上流もそんなに水量が多くない。ここから湧いているのかもしれない。舞湖は太田に地図を書いて印を付けるように言います。太田が少し止まって欲しいと言うので絵を描き終わるまで休憩にしました。舞湖は土手に登り川を眺めます。


「とはいえこれっぽっちの水じゃあどうしようもないか。やっぱり神田川かなあ」


 舞湖は小石川の水を一時凌ぎに拡張し、その後神田川をなんとかしようと考えていました。一気に進めればいいのですがただ人手が足りません。それに記憶だけで作るのは不可能です。地盤の調査や、今行っている土地の高低差等、やる事をやらないと失敗で終わってしまいます。地道に一日一歩、三日で三歩です。


 小石川が通っているところは台地と台地の間の標高が低いところです。以前歩いた時には建物が多く坂が多い町という印象しかなかった文京区ですが、この時代は野っ原で高低差がすごくわかるのです。


「あっちが上野でこっちが池袋よね。こんなにここが谷になってたんだ。なあるほどって感じ」


 格さんは意味がわからないのか、聞いてきました。


「何がでしょうか」


「川は高いところから低いところへ流れる。あとは水の勢いって事」


「それはわかります。あっしは見た事はありやせんが、滝ってえのもあるようで」


 川久保様に習ったそうだ。あのおじさんはこの時代では間違いなく物知りだからね。舞湖達は地図を描かせながら進んでいきます。舞湖だけは舞湖の世界の現代と頭の中で照らし合わせながら。


 小半刻ほど歩いたところで2つの川が合流している所につきました。こんなところあったんだ、と思ったら100mくらい向こうで小石川が2つに分かれていました。一時的に分かれた川がまたくっついていただけでした。


「なんでこうなるのだろう。水が少ないと一個になって多い時に分かれるって事か。あっ、これ洪水防止に使えるね」


 格さんは驚きます。確かにそうです。この仕組みをうまく活用すれば大江戸の洪水被害を防げるかもしれません。


「水野様、すいません。あっしはこれで」


「格さん、急にどうしたの?」


「この事をすぐにお奉行に知らせてまいりやす。後の事は娘に任せますので。おい、幸、頼んだぞ」


 返事も聞かずに駆け出していってしまいました。私の護衛はいいのかよ。幸に聞くと荒川の水害対策の方も上手くいってないようで、岡っ引き仲間が苦労しているとのことでした。それはわかるけど、両方は無理でしょ。そっちはそっちに任せないと。これがきっかけで荒川から隅田川が分岐したのですから不思議なものです。


 舞湖の記憶では荒川の流れを千葉の方へ移したのと飲み水の部隊は別の人が担当していました。舞湖はそっちに手を出す気はありません。こっちだけでもまだどうなるかわからないのですから。


「まあ知恵は貸してもいいけどね。余裕があればだけど。さて、多分ここが大塚駅だね、こりゃ」


 チン チンと鳴る電車で巣鴨新田から一駅、そうです。山手線の大塚駅で降りたところが谷橋川の横でした。真っ直ぐ川が進まずになぜか路面電車の線路を横切って横に川が曲がってから、数字の5みたいに川が進んでいたのです。舞湖は大塚駅で降りてから重い足を引きずって少しだけ川沿いに歩きました。今、そこに立っています。


「5のところは水量が増えると6みたいになるのか。舗装された地面だとそういうのがわっかんないんですよ、奥さん」


 舞湖は絶好調だった。聞いている周りは唖然としています。父親に後を頼まれた幸は、どうしていいかわからないなりにコミュニケーションを取ろうと、


「水野様、何かわかったのでしょうか?」


「幸さん、面倒臭いからさっちゃんて呼ぶね。私も舞湖でいいよ。一歩前進ってとこね。まだまだ歩くわよ」


 幸は舞湖の言っている事が全くわかりませんでした。ただ父親から任された以上、付いていくしかありません。


そして昔歩いたところを今度は実際の川沿いに歩いて行きました。曲がったところが板橋駅。畑しかないけど。そして川は方向を変えて遊歩道だったところへ。今は畑しかないけど。この横に環状6号線が通るなんてだーれが想像するんでしょ。


 そして例の椎名町です。川幅が狭くなり水量が増えました。


「あっ、こうなるんだ。川幅が広くなるわけじゃあないんだ。あれ、なんか不味くない?」


 この先は例の神社に続いているはずです。ですが、上流を見ると川が道に溢れていました。


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