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それから僕たちは、魔法倶楽部の人と話をした。
いろいろな話をしたけれど、一番盛り上がったのは、今までの大陸で起きた出来事だった。
「やっぱり魔法を使う時って……、詠唱とかいるの?」
「私は意識を集中する時間があれば、無言でも使えるよ」
「おおー!」
その中でも特にリリィお姉ちゃんは魔法が使えるということもあって、魔法倶楽部の三人の注目の的だ。
「ところで、どうして魔法を研究しているの?」
話が盛り上がり、みんなが打ち解けたと思った僕は、気になっていた事を聞いてみた。
「元々、この大陸でも魔法は使われていたんだ」
眼鏡の女の子が発した言葉は僕にとって意外で、思わず息を大きく吸い込んでしまった。
「でも、ある日を境にみんな変わってしまった」
「変わった……?」
「町のみんな、魔法を捨てて機械を使うようになったの」
技術の進歩で精霊や魔法を崇拝する社会から脱して、代わりに革新的な技術を信奉するというのは、ゲームやアニメでもよくある展開だけども……。
ある日を境って事は、じわじわそうなったというより一気に変わったのかな?
「どうして……」
「あいつのせいだ。マキナのせいだ」
「ああ、間違いないな」
「マキナ?」
「技術の伝道師マキナ。この大陸に機械を持ち込んだ奴だ」
僕はここで第三の大陸で起きた、ある事を思い出す。
それは”僕以外の異世界転生者がこの世界にいる”という事だ。
魔法全盛だった時代を、機械の時代へ急進させたその技術の伝道師マキナという人。
もしかして、異世界転生者なのかもしれない……?
「ねえタロ君」
「うん、分かってるよ」
リリィお姉ちゃんは、僕の方を向いてほのかに口角をあげながら声をかけてきた。
僕と同じ事を、リリィお姉ちゃんも気づいている様子だ。
「そのマキナって人に会うにはどうすれば?」
「この大陸の賢者として扱われているから、多分偉い人専用の居住区に居るんだろうけど……。俺達じゃ近寄る事すら出来ないよ」
実際に会って話が出来れば、分かるかもしれないのに。
また第三の大陸みたいに無理矢理入りこむ……?
……やめておこう、騎士団副長に散々やられた時の二の舞になるのはもうごめんだ。
「うーん……」
僕は考えた。
その人に会うためにどうすればいいか悩んだ。
でも情報があまりにも少なすぎる事を悟り、首を何度か横に振って考えるのを中断した。




