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でも、魔法を研究しているのにどうしてあんな名前なんだろう?
「ここが”あほうくらぶ”……?」
その理由が気になっていた僕は、町人が言っていた蔑称と思われる言葉を口にしてしまった。
しまった、考えていた事を言ってしまった。
そう思った時には遅かった。
「なんだこいつら……」
「お前……! 喧嘩売ってるのか!」
男の子二人は身をのりだし、今にも掴みかかってきそうな様子を見せた。
「……あの、わたしたちの邪魔をしないでください。迷惑です」
ちょっとでも好意的だった眼鏡の女の子も、口調自体は大人しいものの僕へ向ける視線はとても冷たい。
「ねえタロ君。あれって……」
リリィお姉ちゃんは僕の肩を叩くと、そう言いながら館の入り口の上部を指さす。
僕はそこを見ると……。
”魔法倶楽部”
古ぼけた木製の看板に、そう書かれていた。
ああ、なるほど。
魔法とあほうをかけていたわけか……。
倶楽部って事は、魔法が好きな人達が集まっているんだなぁ。
「ここは魔法を調べるとこなのかな?」
でもどうして、こんなに文明が進んでいる中で魔法なんだろう?
僕は笑顔で、敵意が無い事を示しながら改めて聞いた。
「……出てって」
「はぁ? 別にあんたらには関係ないだろ」
「いい加減にしろよお前」
だが、一度与えた悪い印象はそう簡単には覆らなかった。
やっぱり、さっき”あほうくらぶ”って言っちゃったのがまずかった。
自分の言ったことを猛省しつつも、どうにもこの人達には分かってもらえないと察した僕は、この館から出ていくしかないと思い、身を翻そうとした。
その時だった。
僕の後ろで今までの状況を見守ってきたリリィお姉ちゃんは、何も言わず僕の前へと進むと……。
「私は魔法が使えるよ」
そう一言だけ、いつもの笑顔で言った後に手から小さな炎を出した。
「えっ……」
「おお!!」
「まじか!!!」
リリィお姉ちゃんの言動は、今まで敵意一色だった魔法倶楽部のメンバー全員の目の色を変えた。
「あなた達、何者……」
眼鏡をかけた女の子は、瞳に不安を宿しながら問いかけた。
「え、えっと、別の大陸から来たんだ」
僕はさっきの失言を踏まえ、ここは正直に話すべきだと思い、多少戸惑いつつも自分たちがこの大陸の住人ではない事を告げた。
「…………」
「…………」
「…………」
魔法倶楽部のメンバー全員は、僕の発言を聞いた後、まるで時が止まったかのように何も言わず固まっている。
町の人の反応もそうだったけれど、信じて貰えないだろうなぁ。
「すげえ! ミオリーゼの言ってた通りだ!」
「本当かよ!!」
えっ、信じるの?
というか、言ってた通りって……。
別の世界があるって意味なのかな?
それとも……。
「……良かったら、話を聞かせてください」
まさかこの子も……と、僕が思っていた時。
眼鏡をかけた女の子は、上目遣いで少しもじもじしながら僕たちへお願いをしてきた。
僕はそんな彼女の仕草に、ちょっとキュンっときてしまった。
「リリィお姉ちゃん、まふにゃん、クス子、みんないいかな?」
悪い人ではなさそうだし、僕たちの事を伝えても問題なさそうだと思い、僕は三人に期待に笑顔を見せた。
「うん、みんなとお話ししたいな」
「おいらもにゃー!」
「あたしもだよ! 仲良しだねっ」
それに対して、みんないつもの優しい表情で快諾してくれた。
最初は僕の失敗で拗れちゃったと思ったけれど、無事に修復できそうで助かった。
ありがとうリリィお姉ちゃん、みんな。




