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これで……、三回目かな。
また僕は眠り、過去の記憶が呼び覚まされていく。
それが意味するのは何か?
そんなのは分からない。
だって、この状態になると何も考えられず、一切抵抗できず回想が始まってしまうからだ。
転生前。
僕が中学生になった頃だった。
「あははははっっ!!」
「こいつおもしれえ!!!」
家庭での居場所を失った僕は、それを学校に求めた。
才能も誰かに愛される能力も無い僕だけど、必死になって好かれようとした。
クラスメイトに受け入れられるためなら、普通の人なら蔑むような事も、言葉じゃ言えないくらい屈辱的な事も、笑いながらやり続けた。
その結果、僕は多くのクラスメイトから受け入れられた。
汚れ役として……。
「山田ー! もっとやれー!」
「おうよ!」
また今日も僕は、相方の鈴木と一緒に教室内で馬鹿な事をやっている。
男は笑ってくれるが、女はまるで汚物見るような目で見ている。
「ぎゃははははっっ!!」
「お前ら最高だな!!」
でも僕はそれがとても居心地良かった。
だって、何も持たない僕が周りから注目されているのだから!
「俺達、親友だからな!」
「そうだな!」
この鈴木だってそうなんだ、僕と一緒なんだ。
直接言葉では言わないけれど、なんとなく分かり合っているんだ。
だから僕は肩を組んだ。
鈴木も同じように肩を組んで、体を寄せ合あった。
僕は今とてもキラキラしている。
なんて最高な気分なんだ。
間違いなく僕はこの時、充実していたと思っていた。
そんなある日の事。
いつも通りお調子者としての学生生活を送っていた時だった。
「おい、お前」
僕はある人に呼び出された。
それは、スクールカーストでも最上位に居る金子君だ。
「な、なんですか?」
「ちょっと来い」
見た目もかっこよく、芸能事務所からスカウトされたとも噂されている。
ガールフレンドが途切れた事もなく、横にはまず間違いなくクラスでも指折りの可愛い子が居るし、セフレが二桁居るとも、僅か九歳で初体験を済ませたとも言われているくらいモテる。
「わ、分かりました」
だが彼は、”札付きのワル”だった。
僕の近所で有名な暴走族の頭なのだ。
だからそんな人物像のせいで、クラスの一部の人ら以外は彼に近づかなかった。
彼もまた、自分の仲間や喧嘩相手以外に興味を示さない。
その結果、クラスの中でも孤高の存在となっている。
そんな人間に声をかけられたのだ。
いよいよ僕も、本当の人気者として認められたのか!
あの人と友達になれたら、僕の人生は約束されたも同然だ!
だが、呼び出されてまで言われた言葉は……。
「あのさ、お前もう見たくないから学校来ないでくれる?」
その一言は、僕にとってあまりにも辛かった。
「ごめんなさい、それは出来ません……」
でも僕は勇気を出して断った。
唯一の居場所である学校生活を、どうにか守ろうとした。
「そう」
そんな僕の必死の思いが届いたのか?
彼は、表情を変えずにそう告げて僕から去っていった。
ゆ、許された……?
良かった、助かった……!
てっきり殴られるかと思ってたから、泣きそうだったよ!
僕は心から安堵した。
本来なら理不尽な要求をされて、絶対に許されないにも関わらず、暴力を振るわなかった彼に感謝すらしていた。
だが、翌日。
僕は思い知る事となる……。




