91
それから数日後。
体力と気力も回復した頃。
身支度を終えた僕たちは、宿を出て王都を抜ける事にした。
「じゃあ次の大陸に行こう」
「はい」
「はいにゃ!」
「うんうん」
リリィお姉ちゃんもまふにゃんもクス子も、僕を笑顔で見てくれている。
もう僕と付いてきてくれる人たちとの、わだかまりは無い。
僕は、仲間たちの笑顔に満足すると、気持ちを新たにして新大陸への道のりの一歩を踏み出した。
それから少し歩いた後。
都から離れた、人気のない平原へ到着した僕たちは……。
「じゃあ呼ぶにゃ」
まふにゃんはぱたぱたと小走りで僕たちから少し離れると。
「飛び神さまー! おいら達を運んでにゃー!」
息を大きく吸い、大声でそう叫んだ。
すると、白い毛で覆われた巨大な鯨のような生き物が、甲高い鳴き声をあげて空から僕たちのもとへ降りた。
「おー」
「すごい」
あらかじめ聞いていたとはいえ、本当に呼んだだけで来るなんて。
まふにゃん凄いなぁ……。
「うわあ! な、なななななにあれ!」
当然、初めて見るクス子は驚いていた。
身をのけぞらせているし、飛び神さまをさしている指がぷるぷる震えている。
「飛び神さまって言って、まふにゃんの大陸で祀られていた神様なんだ」
正直、僕やリリィお姉ちゃんや、呼んだまふにゃんも飛び神さまについて詳しくは分からず、雑な説明だなと思いながらそう告げた。
「お、おお……、すごい!」
その説明を聞いたクス子は、目を輝かせながらまふにゃんを見た。
そんな彼女の反応に対してまふにゃんは、得意げに両手を腰に当てて鼻を一つ鳴らした。
「じゃあ行こう」
「えっ、これに乗るの?」
「そうだよ」
「……乗れるの?」
「意外と乗り心地いいよ、みんな横になって寝れるし」
リリィお姉ちゃんはそう言うと、クス子に見本をみせるかのように、飛び神さまの白い毛をつかんで上へと昇って見せた。
僕も、お姉ちゃんの後を追うように登っていく。
ふと上を見ようとしたが、ぎりぎりのところで踏みとどまった。
「う、うーん……、分かった」
僕のいけない思考とは関係なく、クス子は戸惑いながらも見よう見まねで飛び神さまへと昇っていく。
やがて背の上に到着すると、寝そべってふわふわの毛並みを楽しんだ。
その様子が、なんだか可愛いと思ってしまった。
「いくにゃー!」
「出発だー!」
「ふふ」
「おー!」
そして、まふにゃんは大きく跳躍して飛び神さまの頭の上へ立つと、大空に向かってびしっと指をさしながらそう叫ぶ。
すると、飛び神さまは甲高い鳴き声と共に、第三の大陸から飛びたった。




