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「じゃあ、僕たちが来た町は……?」
「俺は、自分以外の異世界転生者がここへ来た時、俺の地位を脅かされないようにしたかった」
「だから、そういう人だけに幻が見えるように?」
「そうだ」
この瞬間、リリーシアの言っていた事が本当だったのを確信した。
「まぁ、今じゃそれも使えないけどね」
「どうして?」
「力を使えたその人の対価は、自分の命だったんだ」
さらっと言ってるけど、異世界転生者どんだけいるの!
この世界でそういう人は自分だけだとずっと思ってたけど、知らないだけで実はかなりの人数が居る……?
「それに気づかず、俺の都合で死なせてしまった」
この時、今までひょうひょうとしていた国王の態度が、少し変わったような気がした。
きっとその人は、国王にとって大切な人で、そのタイミングでスキルの対価について知ったんだろうと僕は思った。
それにしても、僕のような異世界転生者限定で効果がでる幻かー。
なら現地民である、リリーシアやマーフィは何で騙せたんだ?
……ああ、そうか。
僕の能力を受けていたからか。
それで、僕やその二人が惑わされたのは分かったけれど……。
「じゃあ、クスクスは?」
彼女はこの大陸の出身だ。
今までの話が本当なら、既に国王の力の犠牲になっている。
このままじゃ、幻の中から出てきたって事になってしまう。
「ああ、それに関してはよく分からない。俺のスキルの代価で町は滅ぶけど、稀に生き残りが居るみたいだ」
この国王のスキルは完璧ではないって事かな?
まぁ、よく分からないな正直……。
「なるべく見つけて口封じはしてたけど、それでも生き残っていたか……」
「お前……!」
この時、最初の町を滅ぼそうとした騎士団を思い出した。
こいつ……、酷い行いをなんでこうも軽々と言うんだ?
やっぱ好きになれない。
「まあまあそんな怒るなって! もうこの大陸は平定したし、俺は大陸外まで支配したいなんて思ってないし」
当たり前だ。
これ以上、お前の好き勝手になるかよ。
「それに、次スキルを使ったら大陸の町人が全滅してしまうんだ」
その言葉を聞いた僕は、”生き残りは王都に住んでいる人だけ”というのを察し、なんともいえない気持ちになった。
「最後に、騎士団副長も異世界転生者か?」
「そうだよ。あらゆる剣術をマスターしているってスキルを持っている」
これも僕の予想通りか。
そのスキル内容じゃ、確かにマーフィでは勝ち目はないだろうな。
「他にはないかい?」
「いや、もうない」
まぁ、今まで謎だった事は分かった。
もうこいつと話す気もない。
これから、どうするかな……。
僕はそう思いながら、一人で城から出ていった。




