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「あのねタロ君。あなたは私たちと一緒にここから出られるの」

 何言ってるの。

 もうわけわからないよ。


「えっ……、今なんて……?」

「もう一回言うね、みんなここから出られるよ」

 駄目だ、やっぱり意味が分からない。

 お前は一体何を言っているんだ?

 出られるって何だよ、僕は王様直々に処刑って言われたんだぞ?


「取り込み中悪いね」

「お前……!」

 僕が戸惑っていた時だった。

 部屋の扉がゆっくりと開いていくと、そこから玉座に座っていた男が現れた。


 謁見の間で見た時はまじまじと見れなかったけれど、年は僕と同じか、少し上くらいか。

 こいつが、僕と同じ異世界転生者……なのか? 


「はぁーあ、俺も可愛いヒロイン欲しかったなぁー。ついてきたの剣豪のおっさんだもん」

「…………」

 一緒についてきた騎士団副長は、何も言わず国王の方を見ている。


 そんな二人のやり取りを見た僕の率直な感想は……。

「みんなの言ってる事が分からない」

 だった。


「じゃあ、順を追って話していくから、ちゃんと聞いてね」

 リリーシアは穏やかな笑顔でそう告げた。

 昔ならその笑顔に救われていたけれど、今となっては弱者の憐みとしか感じられず、僕は再び泣きそうになった。


「……うん」

 でもここで泣き叫んでも、何も変わらない。

 そうやって言い聞かせ、何度も目をこすった。


「私たちが、国王に会うためにこの城へ入って、騎士団副長との戦いになった」

 結局、黒穢病とか、国王の正体とか、この大陸の謎は分からずじまいだった。


「あなたは、自分の身を犠牲にしてクス子ちゃんを守った。覚えている?」

「……なんとなくは」

 僕はもう大切なものを手放したくはないと思った。

 でも、結局離れていった。

 全部無駄な努力だった……。

 こんなことなら、見捨てて僕だけでも逃げれば良かった。


「その後ね、私たちも捕まってしまったの」

 あの副長の強さは本物だ。

 あいつも言っていた通り、僕自身が強いわけじゃない。

 この三人も、そんな僕から生まれた所詮は欲望の産物でしかないのだから……。


「でね、私たちはそこに居る王様から聞いたわ。あなたの持っている力について」

 そっか。

 それで僕に失望して、国王に寝返ったわけか……。

 まぁ、そうだよね。

 こんな気持ち悪い奴となんか、一緒に居たくないよな。


「……隠しているのが気に入らないなら最後に教えるよ」

「うん」

「確かにリリーシアの言うとおりだよ。僕の力は、僕が気になった異性を僕の好きなフィクション上の登場人物と同じにする。服装だけじゃなくて、能力や性格、口調とかちょっとした癖も……」

 僕は今まで隠していた事を、うつむきながら話した。

 そして隠していた理由が”理解されないから”ではなく、”自分の気持ち悪い趣味を知られたくない”からだという事を、再確認させられた。


「横から悪いね。興味深い話だから参加させてもらうよ」

 今まで聞いていた国王が話しかけてきた。

 そんなに僕の性癖が気になるのか?


「君が”あの場所”で欲したスキルは、”好きな女の子を自身に振り向かせ、その子を自分好みにコスプレさせる”じゃないのかな?」

 他の人から見たらそう思えるし、実際そうだと思っているけれど。


「史上最強のスキル」

「ん?」

「僕が願ったのは”史上最強のスキル”だ。そこまで具体的な事は言ってない」

 僕があのクソビッチ女神に言ったのはそうだ。

 それがまさか、こんな形で実現するとは想像もしてなかったけど……。


「……なるほどね」

 国王は、腕を組んで僕の方を見ている。

 これからどうする気だ?

 処刑するならさっさとしろよ、散々恥かかせたからもう十分だろ……。

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