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 町の人の無事な姿を見て胸を撫でおろす僕とは逆に、リリィお姉ちゃんもまふにゃんもクスクスちゃんも全員が悲しんでいる。


「ねえ、なんで……?」

 そうだよ、みんなまだ生きている。

 騎士の人に殺されずに済んだんだ。

 それなのに、どうしてそういう反応をするの?

 分からないよ……。


「なんでって……。君には見えないの?」

 リリィお姉ちゃんは、泣きながら声を裏返らせてそう告げた。


「そんな、こんなに平和なのに……」

「よく見てよ……」

 僕はまだ分からなかった。

 だから、お姉ちゃんの言葉を半分疑いながら、再び穏やかな町の風景を確認しようとした。


「ん?」

 人々が笑顔で、何の不幸もない生活……。


 あれ?

 僕の視界に、ノイズのようなものがざざっと何度か入った。

 気のせいかな?


 僕は再び町の景色を見つめた。

 人々が幸せに……、えっ?


「うそ……、これって……」

 目の前に広がっていた光景。

 壁が崩れたまま、雨風にさらされて続けてぼろぼろになった家。

 朽ちて骨だけになってしまった町人。

 死がはびこる場所に点在する、灰色の水溜り。


 それは、先ほど騎士達に連れていかれた町と同じだった。


「ねえリリィお姉ちゃん! なんで!」

 さっきまで見ていたのは何だったの?

 どうして僕は今まで気づかなかったの?

 誰が、何のためにこんなことをしたの……。


「落ち着いてタロ君。多分だけど、君だけが見間違えるように仕組まれたんだと思う」

 僕だけが間違える……?

 そんな馬鹿な!

 ありえない、だいたい僕とリリィお姉ちゃんと何の違いが……。


 僕は考えた。

 悲しみにくれるお姉ちゃんを見ながら考えた。


 そして、気づいた一つの答え。


 それは”転生してきているかそうでないか”だ。


 でも、そんな事が可能なの?

 というか、なんで僕だけにかかる力なんてあるの?

 そもそもそれって、僕のような転生者を知らないと出来ない……。


 いや、待てよ……。

 確かちょっと前に……。


 ”その力……、まさか王と同じか”

 ”ここは手を引こう。町人の命よりもやらねばならない事がある。さらばだ。”異世界の力”を受けし者たちよ”


 って言ってたような。

 ……まさか!!!


 この時僕は、頭のてっぺんから足先まで衝撃が走ると共に、ある仮説が頭の中で組み立てられていく。


 騎士団副長の言葉から、国王は僕たちと同じ力を所有している。

 僕たちの力は、本来ならばこの世界には存在しない、あり得ない力だ。

 転生前の世界、つまり現代を生きてきた人間じゃないと到底思いつかないような事象ばかりだ。


 つまりそれって、国王も僕と同じ異世界転生者……!?


 それでさっきの現象は、自分のスキルで王様になって楽しく暮らしているのを邪魔されないように、他の転生者を騙す罠だったら……。


「……お姉ちゃん」

「はい」

「一刻も早く、クスクスちゃんを連れてこの大陸から出よう」

 僕はこの大陸じゃ、間違いなく邪魔者だ。

 このままじゃ、国王の手で殺されてしまう。

 どうにか早く、ここから逃げ出さないと!

 第二の大陸のケガレなんて比べものにならないくらい、やばい相手だよ!!


「あたしはやだよ!! 死んじゃった家族や町の人はどうするの!」

 クスクスちゃんの叫びが、僕の浮き足だった心に響く。


「ご、ごめん……。怖くなったんだ……」

 そうだ、僕は何を言ってたんだ。

 冷静じゃなかったとはいえ、あまりにも身勝手すぎたよ。


 僕は何度か深呼吸をすると。


「……こうなった理由を調べよう。町の人の為にも真実を明らかにするんだ」

 目に溜まっていた涙を、腕で拭ってそう言った。


「分かったわ」

「にゃー!」

「うんっ!!」

 全員、そんな僕の言葉に快く元気に返事をしてくれた。


「怖いの、わかるよ」

「うん……、ごめん」

「ずっとついているよ」

 そして、リリィお姉ちゃんは僕の背中から抱きつき、そう優しく告げた。

 ほんの少しだけ、気持ちが熱くなった気がした。

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