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 吹き抜ける風が気持ちいい。

 全身ぽかぽかしてて温かい。

 こんなに心地よい感覚は初めてだ、こういうのを極楽っていうんかな?


 じゃあ、僕は死んでしまった?


 まぁ、もう一度死んでしまった身だからなぁ……。

 今更驚くこともないや。


「ん……、んん……」

 あれ?

 指も動くし、というか息している?


 そうなると、目も開きそう……。


「リリィ……おねえちゃん?」

 ぼんやりとした視界に入っているのは、長い銀髪が素敵な美人でお胸の大きいお姉さん。

 間違いない、リリィお姉ちゃんだ。

 ということは、ここは転生後の世界だ……って。

 あれ、死んでないけど僕は一度死んでいて転生しているから、結局死んでいないって事になって。

 うーん、わけわからなくなってきた……。


「本当に良かった……、生きててくれて良かった……」

 極楽にいる時よりも幸福な瞬間があれば、きっと今なんだろうな。

 前の世界では得られなかったものが、ここにあるんだもの。


「心配かけちゃ駄目なんだよ……?」

「う、うん。ごめん」

 表情こそ笑顔だけど、潤んでいる琥珀色の瞳を見た僕は、すかさずお姉ちゃんへ謝った。


「おお! タロ起きたにゃー!」

「おはよー!」

「まふにゃん、クスクスちゃん、おはよう」

 お姉ちゃんだけじゃない。

 僕を心配してくれる人が二人もいる。


 そう思うと胸が熱くなって……。

 ううっ……、なんだか僕まで泣けてきちゃったよ。



 それからしばらく経った後。

 傷が完治して気力を取り戻した事を告げると、三人は代わるがわるに僕が刺されてから以降の出来事を話してくれた。


「とりあえず、町へ戻ろう。あそこにいる人たちが危ない」

 黒穢病が嘘で、何も知らない住民の命を奪うなんて!

 正直わけわからないし、滅茶苦茶だ。

 こんなん見過ごせないよ……!


「そうね」

「はいにゃ!」

「うんうんっ」

 でも、あの騎士団副長すごい強いみたいだし。

 また出会ったら今度こそやばいかも……。


 僕はそんな不安を抱えながらも、三人の女の子達の快活な返事を聞くと、急いで元居た町へ向かった。



「着いたにゃ!」

 たまたま道中で馬を見つけたのが幸運だった。

 僕たちは日が沈む前に、町へ戻る事が出来たのだ。


 そして目の前に広がる光景は……。


 日々の勤めを終えて、教会へと戻ろうとしている神父。

 赤子を背負ったまま、いそいそと洗濯物をしまう女性。

 建物の修繕作業を終えて、酒場へ向かおうとする工夫。


 それらは紛れもなく、平和な光景だった。


「よかった……、まだ町は無事みたいだ」

 あの騎士団が、町の人を襲っていたらこんな光景は無かった。

 あとは僕たちがこの人達を逃がせば……。

 そう思っていた時だった。


「…………」

「リリィおねえ……」

「みんなぁ……、うぅっ……」

 えっ、どうして?

 なんでそんなに悲しんでいるの?


 だって、こんなに平和じゃないか……。

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