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「随分強引な事を言う婦人だ……」
騎士団副長は首を横に振りながらそう言うと……。
「ならば、これからここでする事も分かってもらえるね?」
腰に下げていたサーベルの持ち手をぐっと握り、いつでも居合斬りが出来る体勢をとった。
それと同時に、他の騎士達も自らの得物を鞘から抜いて、僕たちへゆっくりと迫ってくる!
「数が多い、どうにか逃げないと」
相手は十人以上居る。
いくらまふにゃんが功夫の達人である白昼猫と同じ動きが出来たり、リリィお姉ちゃんが女神セレスティーネと同じ力があったとしても、不利な事に変わりはない。
「大丈夫よ、もう魔法を打つ準備は出来ている!」
そう言うと、リリィお姉ちゃんは両手を勢いよく騎士達の方へ向ける。
すると、地面から炎がわき立ち、僕たちの周りを取り囲んでいた騎士達を吹き飛ばしたのだ。
リリィお姉ちゃんの魔法は、発動するのに時間がかかるはずなのに。
こんな事になるのを予想していなきゃ、絶対に出来ない事だよ。
やっぱりお姉ちゃんは凄いや!
「さあ、こっちへ!」
魔法によって、包囲に穴が開いた!
炎が目くらましにもなっている、逃げるなら今のうち!
そう思っていた時だった。
「ぐぁっ……!」
僕の横から突如サーベルが現れると、僕の脇腹に深く突き刺さった。
「っ!! タロ君!!!」
「お、おねえ……ちゃん……」
あれ、なんでだろう、全然痛くないや。
その代わり、すごく寒い。
周りはこんなに燃えてるのに、不思議だなぁ……。
「あ……、あぁ……、そんな……」
おねえちゃん、ないてるの?
なかないで。
ぼくは……わらってるおねえちゃんが……す……き……。
「痛いの苦しいのとんでけー!」
「クスクスちゃん……」
「少し眠れば、元通りになるよ」
「ありがとう。お姉ちゃんなのに泣いちゃったね、えへへ」
目の前は真っ暗だけど、声だけはどうにか聞こえてくる。
「よくもタロをー! ていやあああ!!!」
「面白い力を使うんだな」
「えっ……」
まふにゃんが戦ってるのかな?
目は……、やっぱ開かないや。
「その力……、まさか王と同じか」
「にゃ、にゃんでおいらの攻撃が効かないにゃ!?」
まふにゃん、苦戦している?
「ここは手を引こう。町人の命よりもやらねばならない事がある。さらばだ。”異世界の力”を受けし者たちよ」
「いせかい……?」
「何言ってるにゃ……?」
駄目だ、もう思考がぼやけてきて……。
「とりあえず、タロ君が休める場所を探そう」
「はいにゃ」
「うんうん」
騎士達との戦いは、彼らが撤退するという形で終わった。
この時僕の意識は既になく、回復のために深く眠っていた。




