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それから数日が経った。
「ねえクスクスちゃん」
「うん?」
「その服、着替えないのかなーって」
あれだけ嫌がっていたのに、クスクスちゃんは今も”巫女ぷりの主人公まりあ”の格好をしている。
どうしたんだろう?
「何言ってるの。これがあたしのアイデンティティなのに?」
「えっ?」
「それに、あたしは二つの神様に祈りを捧げているんだよ? だから相応しい格好じゃないと失礼だね」
衣装が変わった時から、まるで違う答えになっているし、教えたはずなんてないのに作中のキャラクターの設定まで真似ている。
「クスクスちゃん、とてもかあいいね」
「そうにゃ、よくにあってるにゃ」
「ありがとう♪」
これってやっぱり、僕の史上最強のスキルのせいだよね……。
元々の人格を塗り替えてしまい、僕の好みにしちゃうかぁ。
ここで本当ならば、罪悪感や背徳感から強い嫌悪の気持ちを抱くのが普通なのかもしれない。
けれども僕は、変わってしまったクスクスちゃんを見て、精神の昂ぶりを実感した。
……我ながら変態すぎる。
「なんだお前ら! もうここには用はないだろ!!」
そう思っていた時だった、宿の入り口の方からクスクスちゃんの父親の声が聞こえてくる。
僕たちは、急いでそちらへ向かった。
そこには、かつてクスクスちゃんを殴った町人が、父親と出会っている光景があった。
「違うんだルワルさん、別に責めに来たわけじゃないんだ」
「じゃあなんだ?」
でも、今回は前回と違ってやけくそになって来たわけではないらしい。
僕たちは、二人の様子を黙って見守ろうとした時だった。
「おお、あんた達。ちょうどいい」
僕と目があった町人は、両手を広げながら話しかけてくる。
……武器を持っていない、危害を加えるつもりじゃないって言いたいのかな?
でも、慌てている感じはするし、なんだろう?
「クスクスとあんた達の言った通りだ。黒穢病が治ったんだ」
「!!」
それは、僕が予想した通りの結果だった。
でも、実際に言われるとやっぱりどきっとしちゃう……。
「それだけじゃない。ルワルさん、スラムに居た病気の子が居ただろう?」
「ああ、あの身寄りの無い女の子か。治すにも大金がいるから、ずっと一人で耐えているって話だが……」
「その子の病気も治ったんだよ!」
「う、うそだろ!?」
「というか、病気にかかってた他の人も全員治っているんだよ!」
「馬鹿な……」
クスクスちゃんの父親が茫然としている。
まぁ、無理もないよなぁ……。
それだけ、”巫女ぷりの主人公まりあ”の能力は凄いんだもの。
「だから町の人達みんな、クスクスと旅芸人さんたちにお礼を言いたくって。頼む来てくれ!」
「分かりました」
クスクスちゃんの力が示された。
もうこれで誤解されることも、あんな扱いをされることもないはずだ。
この時僕はリリィお姉ちゃんの方を見た。
お姉ちゃんもまた、僕の方を見ていて、目線が合うとお互いに一度だけ頷いた。
そしてその後、四人は町人の案内で広場へ向かった。




