66
僕たちは町の中央にある広場へ到着した。
「ああ、もう終わりだ……」
「俺の人生が、こんなとこでお終いなんて」
「神様、どうかこの子だけはお救いください……」
そこに広がっていた光景は、町人達がこの状況を悲観して絶望している様だった。
「ありゃぁ、すっかり町は大混乱だね……」
僕はふと、衣装の変わったクスクスちゃんを見る。
あれ、意外にも落ち着いている……?
どうして他の人とは違って、パニックにならないんだろ?
「クスクスちゃんは、病気怖くないの?」
「んー、多分実際に見たら怖いって思っちゃうけど。今はなんだろう……、あんまり現実味がないというか、まぁあたしは大丈夫だよ」
たしかに、周りは騒いでいる人だらけで、実際に発病した人は居なさそうだ。
うつったら、すぐに症状が出るとかではないらしい。
ともかく、今はいろいろと考えるよりも、病気を治すのが先だ。
「ところでクスクスちゃん、やり方わかる?」
もしも衣装のキャラクター通りの能力なら、ある言葉を言わないと病気を治す力は出ない。
普段のクスクスちゃんは、その言葉なんて到底思いつかないだろうから、教えないといけないと思って僕はそう話しかけたが……。
「……なんとなくだけども」
僕の史上最強のスキルが効いているらしく、どうやらその言葉を知っていそうだ。
この能力も見た目こそは即座に変わるけど、能力とか人格とか口調とかは遅れて変わっていくからなぁ。
まぁ、とりあえずは知っていて何よりだ。
「すぅ~……、ふぅ……」
僕がそう考えている時、クスクスちゃんは何度か深呼吸を繰り返すと……。
「痛いの苦しいのとんでけー!」
町中に響くくらいの大声でそう叫んだ。
「……本当にこれで治るかにゃ?」
何も知らない人なら、そう思うのは当然だよね。
実際、町の人も”こいつら馬鹿じゃないのか?”みたいな感じで見てるし。
「もう、治ったから」
疑っているまふにゃんに対してクスクスちゃんは、そう自信満々に告げた。
「にゃにゃっ?」
それでも信じられなかったのか、まふにゃんは軽く飛び跳ねて驚いていた。
当然、僕は信じていた。
何故なら、クスクスちゃんが叫んだ言葉こそ、能力発動の鍵となる言葉だからだ。
一字一句間違いない、イントネーションも完璧。
もうこれで、この町の人たちは安心だ。
「この町居る人の黒穢病はすべて治ったから、もう慌てなくても大丈夫だよ!!」
だから僕は、クスクスちゃんにも負けないくらいの大声でそう叫んだ。
「本当か?」
「あの人ら、旅芸人だよな?」
「デマじゃないのか?」
”変わった格好をした女の子が、叫ぶだけで病気が治る”
町の人はそんな事信じられるわけもなく、疑いと憐みのまなざしをこちらを向けながら、ひそひそと話をしていた。
「あとは様子を見よう。どっちにしても出れないみたいからね」
「はいにゃ」
「うんうん」
治るにしても、治らないにしても、今ここでぱっと効果がでるわけではない。
実際に見に行ってはいないけれど、出入り口が封鎖されているのじゃ身動きもとれない。
僕はそう思いながら、三人の女の子たちと、宿へ戻った。




