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”巫女ぷりの主人公まりあ”の衣装を着たクスクスちゃんは、何度も自分の格好を見返しながら。
「それでさ、この格好は何なの……? 旅芸人さん何かしたの?」
まさか”史上最強のスキルで僕好みの格好にしました!”なんて言えるわけもなく、言っても分かってもらえないと思ってしまい、どう答えていいか困ってしまう。
「あのねクスクスちゃん。一つずつ説明していくね。それはタロ君がくれたものなんだよ」
そんな時、優しい笑顔でリリィお姉ちゃんが話しかけてきた。
「やっぱり旅芸人さんのせいかー! 戻してよー!」
「えぇ……」
お姉ちゃんの時は、ちょうど服を変える必要があったから都合がよかった。
まふにゃんの時は、最初こそ違和感を訴えていたが最終的には気に入ってくれた。
でもクスクスちゃんは、はなから全力で否定した。
それが本来あるべき答えと再確認させられてしまい、僕は面を食らってしまった。
「大丈夫だよ。とっても似合ってるし、すごくかあいいよ」
「あ、ありがとう……ってそうじゃないよ! 周りと違うから浮いちゃってるもん!」
リリィお姉ちゃんの率直な意見も、クスクスちゃんには通じず、彼女は誰も居ない宿屋の周囲を見回しながらそう訴えた。
「タロ君はね、能力のある女の子だけにそういう服を渡しているの」
そういえば、リリィお姉ちゃんにもまふにゃんにも、僕のスキルについて何も言っていなかった……。
なるほど、そういう解釈も出来る。
「実はね、私は魔法が使えるし、まふにゃんは殴ったり蹴ったりするの得意なんだよ」
「そうにゃ!」
「だから、あなたにもきっとすごい力があると思うの」
「す、すごいって言われたって、あたし何も出来ないよ……」
僕は、クスクスちゃんの反応を見てふと思った。
もしも能力や口調さえもコピーしちゃうなら、何故今の段階で”主人公まりあの能力”を知らないんだろう?と。
まふにゃんの時も、服装が変わって直後の語尾は普通だったし。
もしかして、少しずつ変わっていく……?
ま、まあ今は考えるよりもやる事がある。
「ねえ、クスクスちゃん」
「うん?」
「クスクスちゃんなら、きっと黒穢病治せる」
「えええええ!? あたしそんなん無理だよー!」
ううん、違うよ。
今のクスクスちゃんなら出来る。
だって、主人公まりあの能力は、”どんな傷や病気も治す力”だから。
たとえそれが、治療法のない病気であったとしても。
「ううん、きっと出来るから」
だから僕は自信をもって、強く彼女に言い続けた。
「うーん……、分かった。やってみる」
その気持ちに根負けしたのか、クスクスちゃんは自身の柑橘色のスカートの裾をぎゅっと握りながら、そう答えてくれた。
「ありがとう!」
「でも、出来なきゃ服元に戻してよね?」
「う、うん」
そこまで嫌わなくてもいいのになぁ。
リリィお姉ちゃんの言うとおり、その格好とても似合ってるもん。
僕はそう思いながら頷くと、クスクスちゃんを連れて町の中心の広場へと向かった。




