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僕は気がつくと、泣き伏せってるクスクスちゃんと、暴力をふるう町人の間に入っていた。
「うぐっ……」
当然、失意の少女に当たるはずの拳は僕に命中する。
すごく痛いけれど、最初の大陸で修道院を襲ったごろつきに比べれば大丈夫だ……!
「おい! 邪魔するな!」
「うるさい!」
僕は許せなかった。
健気な彼女をぞんざいに扱う悪童達が。
今まで慕ってきた人々が、手のひらを返すように彼女を裏切ったことが。
……本当は助けて欲しいと願っているクスクスちゃんを、今まで見過ごしてきた自分に。
「やめろよ……」
「ああ? 旅芸人は黙って見てろ!」
「もういいだろ!」
「だいたい、お前らも被害者じゃないか? 何故自分の人生滅茶苦茶にした奴をかばうんだ?」
「うるさい! うるさい! 僕はもうこんなのたくさんだ!!」
だいたい、何でこんな目にあわなきゃいけない?
クスクスちゃんはただ、みんなと仲良くしたいだけなのに。
そもそも、デマにこれ以上踊らされないでよ!
「おやめなさい」
「そうにゃ、やめるにゃ」
リリィお姉ちゃん、まふにゃん。
僕に力を貸してくれるの……?
「はぁ? 旅芸人風情が調子に――」
「これ以上手を出せば、あなた達にも相応の対価を払ってもらいます」
「ごーんってしちゃうにゃよ!」
リリィお姉ちゃんは手のひらから炎を出しながら、まふにゃんは腕をぐるぐるさせながらそう告げた。
「クソッ、いくぞ」
「ああ……」
「でも、これからどうすれば……」
死が目前に迫っているとはいえ、痛い目にあうのは嫌なのかな?
町の人たちは不満げな表情のまま、宿屋から次々と離れていった。
父親はそれでもめげずに説得しようと、離れていく人々の後へを追いかけていき、残ったのは僕たちだけになった。
僕は、泣いているクスクスちゃんの背中を何度かさすって、彼女の気持ちを落ち着かせようとした。
「うわぁっ!」
すると突然、彼女の着ているワンピースが輝きだした。
「これって!」
この現象、間違いない。
リリィお姉ちゃんやまふにゃんと同じで、僕の史上最強のスキルが発動したんだ。
「ね、ねねねええ! あたしどうなってるの!」
「大丈夫だから、しばらくしたら落ち着くから」
僕の言葉の通り、光はたいした時間を待たずにおさまっていく。
そして完全がおさまると、クスクスちゃんの服装はがらりと変わっていた。
「あ、あれー? なんでこんな格好になってるの?」
基本的な作りは巫女さんの装束だけど、本来朱色である掛襟等の色はオレンジ色で、袴ではなく大きく広がった膝丈のプリーツスカートになっている。
また首には、本来長い髪を結うための和紙と水引を、チョーカーのようにつけている。
巫女服は和装だけど、肩の部分が膨らんでたり、袖の部分がフリフリだったりで、所々和洋折衷な要素が入ったこの衣装。
間違いない。
僕が転生前の世界で、人気のあった美少女ゲーム”巫女ぷり(ぷりはプリンセスじゃない、プリーストだよっ!)”の主人公まりあが着ている衣装そのものだ。
僕はそのゲームが大好きで、セリフを一字一句暗記しているくらいだし、主人公まりあのフィギュアは限定品や同人作品を含めて全部集めているくらいだ。
やっぱり僕が与えられた史上最強のスキルは、”気になる女の子を、僕の好みの二次元キャラに変える”で間違いないや。
あれ、そうなるとひょっとして……。




