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 僕たちが宿に着いた時に見た光景。

 それは、怒っている町の人の群れだった。


「ここから黒穢病が流行ったらしいじゃないか!」

「全部お前たちのせいだ!」

「この疫病神め!」

 町の人の怒っている声を聞き、僕は少し前にクスクスちゃんが悪童にからかわれていた事を思い出した。


「何かの間違いだ! そんなわけがないだろう!」

 クスクスちゃんの父親が、どうにか町人を説得しようとそう訴えているが、まるで効果は無い。


 この瞬間、僕の考えていた最悪な状態になってしまった事を思い知った……。


 それにしても、物事が進むには早すぎるような気はする。

 もしかして、別の理由があるのかな?


 そう思い、僕は無言のままリリィお姉ちゃんと無言のまま視線を合わせると、怒号を浴びせていた町人へと近寄り……。

「どういう事ですか?」

 今何が起きているかを聞いた。


「……ついさっき、王府からの伝令で、この町の放棄が決まった。ここに居た者は全員この町から出られない」

「えっ」

「うそ……」

「元はといえば、こいつらが黒穢病を持ちこんだのが原因だからな。だから俺は死ぬ前にこいつらへ仕返しをするんだ。ここに居る奴らはみんなそうだ。あんたらもそうなんだろ? 旅芸人さん」

 見捨てられた町。

 あとは病気で苦しんで死ぬだけ……。

 それが人々を駆り立てている理由なのは分かった。


 というか、それって僕達もやばいような!


「おい! 来たぞ!!」

 そう思っている時、宿に集まった人々の一人が指をさしながら大声でそう言った。

 僕もその指さす方向を見ると、そこには自宅へ帰ってきたクスクスちゃんが居た。


「わっ、な、なに……?」

 当然クスクスちゃんは何も知らない。

 そんな彼女に対して、町人の一人が何のためらいもなく近づいていき……。


「とぼけやがって、このガキ!!」

「きゃあっ!」

 そう悪態をつきながら、クスクスちゃんを殴り倒した。


「ね、ねえ……、なんであたしを叩くの?」

 どんな仕打ちを受けても、どんなひどい扱いをされても明るかった彼女の顔から笑顔が消えた。

 青くなった頬を手で当てながら、体を震わせつつそう言った。


「こいつ、自覚がないのか。つくづく腹立つガキだ!」

「あぁっ!! いたい! いたいよう!!」

 町人は、諸悪の根源が何も知らないわけがないと思いこんでいるらしく、彼女のそういう態度が余計に鼻についたのか、再び拳を振り下ろした。


「助けて! 助けてよお!」

 クスクスちゃんは助けを求めていた。

 目線の先に居るのは……、父親と他の町人かな?

 多分、彼女が信頼している人たちなんだろう。


 だが、それら人々は誰もクスクスちゃんを助けようとはしなかった。


「……誰が病気持ちを助けるかよ」

「えっ……」

「二度と話しかけるな」

 それどころか、暴力をふるっていた町人と同じ様な怒りと蔑みの視線を向けながら、彼女の救いを求める手を払いのけたのだった。


「うっ……、うぅっ……」

 クスクスちゃんは、その場でうつむき泣いた。

 彼女の泣き叫ぶ声が周囲に響いていた。


 それでも町人は、無情な仕打ちを続けようとした。

 その時だった。

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