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町に滞在して数日が経った。
リリィお姉ちゃんやまふにゃんの言う、違和感の正体を探るべく、僕たちは一日も欠かさず町の人たちの話を聞いたり、怪しそうな場所を調べたりしてきた。
だが、手掛かりになりそうな情報はまるで見つからなかった。
「そ、そんな馬鹿にゃ~……」
「うーん、私たちの勘違いだったのかな」
あれだけ断言していた二人の心も折れかかっている。
こういう時こそ、僕は何か言わないと……。
「みんな頑張ったよ。そういう時もあるし、そんな気にしなくてもいいよ!」
「……そうだね。タロ君の言う通りだね。あまり気にしても仕方ないよ」
「そうにゃ、悔しいけど諦めるにゃ~」
どうやら、二人とも元気を出してくれたようだ。
こうして僕たちは、調べるのを中止して、町から出る準備をするために宿へ戻ろうとした。
「そういえば、町の人なんか少ないね」
「今日はお休みの日にゃ~?」
宿へ帰る道、それは町の大通りでいつも人が賑わっている場所でもある。
それなのに、今日は半分も居ないような気がする。
まふにゃんの言う通り、休みの日でもあるのかな?
だが次の瞬間。
僕たちの予想を超える言葉を、耳にする事となる。
「大変だ! 黒穢病がこの町にも来たぞ!」
町の若者が、走りながら大声でそう叫んでいた。
「くろえびょう……?」
「なんにゃ?」
僕が前居た世界でも、聞いたことのない名前の病気だ。
リリィお姉ちゃんやまふにゃんも知らないみたいだし……。
「聞いてみよう」
とりあえず、近くに居た自警団の人を捕まえて、黒穢病について聞くことにした。
「あの、さっきいってた黒穢病ってなんですか?」
「そんな事も知らないとは、クスクスの言ってた通り旅芸人さんなら各地を回っているから、知ってそうだと思ってたんだが……」
僕たちはすっかり旅芸人として、この町の人達に定着してしまったようだ。
なんだか複雑な気持ちだけど、その事は今はおいといて……。
「この大陸に流行っている病の事だよ。一度かかったら治る事は無い、何でも肌が黒くなって肉がドロドロと溶けていく病らしい」
転生前の世界で、ペストに似た症状なのかな。
あれが流行ったのも中世後期だったような気がするし、世界観的にはありそうだけども。
「その病のせいで、西方の大きな町が一つ滅んでしまった。ここでも病気にかかっている人の検疫はしてきたはずだが、遂に突破されたようだな……」
もしかして、お姉ちゃんやまふにゃんの言っていた違和感の正体って……。
この病気の事だったのかな?
あれ?
検疫……、してたっけ?
「俺もこの仕事辞めてどこか安全な場所へ行くか。あんた達も逃げなよ、じゃあな」
自警団の人はため息まじりにそう告げると、手を軽く振って僕たちから去っていった。
僕は再び町を見回した。
今なら、リリィお姉ちゃんやまふにゃんが言っていた違和感の理由が分かるような気がした。




