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結局、違和感の正体を知る事は出来ないまま、僕たちは宿へと戻った。
僕は食事をとった後、ベッドの上で目を閉じて体を横にしながら、ある事を考えていた。
第一の大陸では、リリィお姉ちゃんが暴漢にさらわれようとした。
それは僕が転生前の世界で、ユリお姉ちゃんが柄の悪い大人に連れていかれた時と、よく似た場面だった。
第二の大陸では、まふにゃんが父親の期待を応えられず、悪態をつかれていた。
それは、僕の転生前の日常と、よく似ていた。
そしてこの第三の大陸では……。
「タロ君、タロ君」
「ん?」
僕がある仮説を立てていた時だった。
だけど僕は、リリィお姉ちゃんが僕の体を揺らして起こそうとしているのに気づき、考えるの中断して目を開けた。
「どうしたの?」
お姉ちゃんは、僕が目を開けるとどこかほっとしたような表情をした。
ただ目を閉じていただけなのに、そんなに心配かけちゃったかな?
「何か悩み事でもあるの?」
「うん? うーん……」
さっき考えていた事は黙っておこう。
お姉ちゃんに心配かけるのも嫌だし、過去を引きずっているなんて、なんだか格好悪いや。
「リリィお姉ちゃんやまふにゃんが言ってた、違和感って何かなーってね」
「なんだか心配かけちゃったね。ごめんね」
「お姉ちゃんがあやまることじゃないよ!」
やっぱり心配かけちゃった……。
お姉ちゃんの心配している顔は、笑顔とは逆にとても不安になってしまう。
どうにか明るい話題を考えないと……。
うーんと、えっと……。
僕はどうにかリリィお姉ちゃんを、笑顔にしようと考えている時だった。
「タロ君」
「なに?」
「ここまで私と一緒に居てくれてありがとうね」
そんな僕の考えを見透かしたかのように、お姉ちゃんはいつもの優しい笑みを見せてくれた。
「な、なななにを急に言いだすの!」
唐突な笑顔と、思いがけない感謝の言葉は、僕を動揺させるには十分だった。
しかもそれだけじゃなかった。
「お姉ちゃん、タロ君が大好きだからぎゅーってしてあげる」
「えっ? うぐっ!」
「ぎゅー」
リリィお姉ちゃんは、僕を包み込むように強く抱きしめたのだ。
そしてほんの少しだけ腕の力緩めて僅かな距離が出来ると。
「これからもずっと一緒に居てね」
そう、ささやくように僕へ告げた。
お、お姉ちゃん……。
顔が近いよ……。
うう、胸がドキドキする。
「もちろんだよ! 僕はリリィお姉ちゃんが居なきゃ嫌だ!」
それでも僕は、勇気を振り絞って自分の思いを告げた。
お姉ちゃんは、そんな僕をもう一度強く抱きしめた。
柔らかいけど、く、くるしいっ!




