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集落の人に、見つからないよう歩くこと半日。
僕たちは、まふにゃんが言っていた飛び神さまが祀られている丘陵へ到着した。
「おおー」
今まで通ってきた密林や、集落があった場所が全部見えるや。
「いい景色ね。風も気持ちいい」
この時、僕はリリィお姉ちゃんの方を見た。
風になびく長い銀髪、その髪をかき分けるしなやかな指、優しさと憂いを感じさせる遠いまなざし。
前にも見たけれど、やっぱり素敵だ。
魅入っちゃうなぁ……。
「そんなに見ても、何もないよ?」
僕の視線に気づいたお姉ちゃんは、こちらを向いて笑顔でそう言った。
「何もなくていい……」
そうだ、僕にはリリィお姉ちゃんが居ればいい。
こんなに綺麗で優しい人とずっと一緒だったら、僕は……僕はっ……!
「タロ、顔が赤いにゃよ?」
「うぅっ……」
改めて自分が言ったことと、まふにゃんに指摘されたことを振り返った僕は、思わず顔が熱くなってしまった。
「……まふにゃん、ここがその場所なんだよね?」
これ以上つっこまれたら、僕はこの場所から逃げてしまうかもしれない。
そう思い、本来の目的である飛び神さまが祀られている場所について、慌てて聞いた。
「そうにゃ」
「なんもないけれど……」
「んー、おいらも数えるほどしか行ったことなかったからにゃぁ~」
「詳しい事は分からないって事かー」
「何か書いてあるね。どれどれ……」
僕とまふにゃんが話している時、リリィお姉ちゃんは草に隠れていた石碑を見つけ、そこに書いていた模様を読み上げていく。
”理を知りし命を生み出す者よ、願いを捧げた時、空の神は汝に翼を授けん”
なにいってるか分かんないや……。
翼を授けんってことは、リリィお姉ちゃんみたいに空を飛ぶ能力がもらえるのかな?
でもそうなると、理を知りし命を生み出す者って誰だろう。
「まふにゃんは、何か分かりそう?」
「ごめんにゃ、おいらも分からないにゃ」
「うーん……」
まふにゃんは、集落では”一応”巫女だった。
その巫女が分からないとなると、どうしたものか……。
「なあ、リリィおねえって空飛べるんにゃ?」
「うん」
「じゃあ、リリィおねえが”飛び神さまお願い!”ってやったらどうかにゃ?」
なるほど、理を知りし命を生み出す者=お姉ちゃんってわけだね。
「ほおほお、やってみるね」
リリィお姉ちゃんは、何度か頷くとその場で深く呼吸をした後……。
「…………」
リリィお姉ちゃんが胸の前で手を組み、目を閉じて祈った。
う、美しい……。
幻想的で、神秘的で、なんかこう……、やばい。
これなら飛び神さまも満足だよね?
「…………」
だが、僕の期待とは裏腹に、何か起きる気配はまるでない。
相変わらず、気持ちのいい風が吹き抜けるだけだ。
「ふぅ、何も起きないね」
「んー、無理かにゃー」
あんな清楚で神々しいお姉ちゃんが祈っても駄目とか……。
”理を知りし命を生み出す者”って何者だよ!!
「もう一度考えてみよう」
「分かったにゃ」
「そうね」
僕は、飛び神さまを呼び出す条件を考えようとした。
その時だった。




