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翌日。
「僕たち、この大陸から出たいんだ」
「ほおーほおー」
結局、この大陸にも居られなくなってしまった。
どうにか出て、また別の大陸へ行かないといけない。
「だから船とか必要なんだけども……」
ここへ来る時に使った船は、今頃沈んでいるだろうな。
だから出るためには海を渡るものが欲しい。
「船? 魚を捕るときに使う奴ならあるにゃ?」
この時僕は、ここへ来た時の船を思い出すと……。
「それはもういいかな……」
視線を落としながら、そう答えた。
というか、あんな夜を過ごしたから、てっきり嫌われると思ってたのに。
マーフィちゃんはまるで気にしていない……。
僕と同じくらいの年なのに、不思議な子だ。
「でも困ったわね」
そう思っている時、リリィお姉ちゃんは自分の頬に手を当てながらそう言った。
これだけ文明が遅れている場所じゃ、海に行くのも難儀なのはわかる。
リリィお姉ちゃんの魔法じゃ、お姉ちゃん本人が飛べても僕とマーフィちゃんを連れていくのは無理だし……。
今度こそ、ピンチかも……?
「じゃあ飛び神様にお願いしてみたらどうにゃ?」
「とびがみさま?」
「集落じゃあ空の神様って言われていて、困っている人を助けてくれるって話にゃ」
まさか、そんな神様が居るなんて。
「他にあてもなさそうだし、行ってみよう?」
このままふらふらしても、集落の人たちにつかまってしまうし……。
ええい、こうなりゃ困った時の神頼みだ!
「うん」
僕はそう腹に決めると、リリィお姉ちゃんの方を向いて頷いた。
そのしぐさをみたお姉ちゃんは、いつもの笑顔をしてくれた。
飛び神様が祀られているという、丘陵へ向かう道中にて。
突然、先頭をきって歩いていたマーフィが、僕たちの方を振り向くと……。
「ところで」
「うん?」
「マーフィちゃんなんて、よそよそしすぎるにゃ」
「そ、そうかな?」
この時僕は、異性に対して”ちゃん”付けしか出来ない自分の未熟さを恥ずかしいと思いながら、彼女が満足しそうな呼び方を考えた。
「まふにゃん……?」
そして、その答えを恐る恐る告げた。
「…………」
「…………」
な、なんで二人とも黙ってるの。
「……タロ君」
「い、いや! な、なななんでもないよ! 気にしないで!!」
猫っぽいし、語尾ににゃってつけてるからと思ったけれど。
あああああああもう!!!
やっぱり駄目だーー!!
僕は慌てて言った言葉を訂正し、再度まともな呼び名を考えようとした。
「それ気に入ったにゃ!」
「”にゃん”なんて、タロ君ったらかあいい」
嘘でしょ!
い、意外とうけてる……?
「これからはおいらの事、まふにゃんって呼ぶにゃ! 分かったかにゃ?」
「は、はい」
「ええ」
じゃあさっきの間は何だったんだろう……?
まぁ、本人がいいって言うならいいのかな。
「かあいい呼び名いいなあ。よし、じゃあ私もリリにゃんって――」
「お姉ちゃんはお姉ちゃんってこれからも呼ぶね!」
なんだかからかわれているように思えた僕は、リリィお姉ちゃんの言葉を遮り大声でそう言った。
「はいはい。しょうがない子ね、うふふ」
「と、ともかく、その飛び神さまの居る場所へ行こう!」
「おー!」
「ふふ」
そして、この変な雰囲気から脱するため、知らないにも関わらず先頭をきって歩いて行った。
二人はそんな僕に対して、特に何も言わずついてきてくれた。
だが、少し歩いた後に道を間違えている事をまふにゃんに言われると、僕は恥ずかしさで熱くなった顔を、リリィお姉ちゃんへ抱きつくことによって隠した。




