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二人の拳が激突し、一瞬の静寂が訪れた後。
巨人の拳にゆっくりとヒビが入っていく。
ヒビは腕から体の方へと伝っていき、全身が覆われた途端。
「グオオオオオオオ!!!!!」
巨人はひと際大きな悲鳴をあげながら、崩れ落ちてしまった。
…………。
…………。
…………。
火口に静けさが訪れる。
僕は巨人が居た場所に、炭のようなものが積もっているのを見て勝利を確信した。
「はぁっ……、はぁっ……」
よほど疲れたのだろう。
マーフィちゃんは、その場で座り込み肩で呼吸をした。
「とーちゃん。おいら……、やったよ!」
そして、目に涙を溜めながらそうつぶやいた。
僕とリリィお姉ちゃんは、マーフィちゃんが立ち上がるまで待った。
日も暮れて、空が赤く焼けた頃に彼女は立ち上がって吹っ切れた表情を見せると、三人で簡素な墓を作り、その場を後にした。
集落に帰る道中にて。
「ところでマーフィちゃん」
「んー?」
「巨人を倒したときのセリフ、あれどうして知ってたの?」
マーフィちゃんが、戦いの最中に言い放った言葉を、僕は知っていた。
あれは彼女と同じ服装のキャラクターが、最強の奥義を放つ時の口上だ。
好きな作品だから聞き間違える事は無い。
僕の史上最強のスキルって、服装や能力や口調だけじゃなくて、そんな口上までコピーしてしまうのかな?
「ん? なんか言ったかにゃ? 無我夢中で分からなかったにゃん」
「そ、そう……」
その質問に対してマーフィちゃんは、首をかしげてそう答える。
この時僕は、少し可愛いと思ってしまいつつも、史上最強のスキルの可能性を改めて確認した。
僕たちは、来た道を戻っていった。
やがて夜は更け、リリィお姉ちゃんが魔法で明かりを出さないと周りが見えないくらい、暗くなった時だった。
「マーフィと天の使い殿が帰ってきたぞ!!」
集落の方から大声が聞こえてきた。
見張りの人が僕たちを見つけたのだろう。
その僕の予想は当たり、集落へと入った途端に手厚い歓迎を受けた。
「みんな、ただいまにゃっ!」
集まった人々に、マーフィちゃんは笑顔でそう答えた。
「大丈夫か?」
「無事にケガレが倒せたのか?」
だが、”落ちこぼれのマーフィ”がケガレを倒したとは信じられず、すっかりスク水姿が馴染んだマーフィちゃんを、集落の人々はまじまじと見つめた。
そんな中、人の波が二つに割れていき、そこから集落の長が現れた。
「ご苦労だった。その様子だとケガレを仕留めたようだな」
「うん!」
「ふむ……。リュートとリラ、ヤドガは逝ったんだな……」
この場に勇者達が居ないことが、どういう意味かを悟った長は、深くため息をついた。
「ごめんよう、守り切れなかったにゃ」
「ごめんなさい。私がもっと強かったら……」
「リリーシア殿、別にあなたのせいではない。むしろ協力感謝する」
そうだよ、二人とも頑張ったよ。
この二人じゃなければ、あのケガレは倒せなかった。
むしろ、僕が何も出来なかった……。
リリィお姉ちゃんの時もそうだ、僕はいつも足手まといで傍観者だ。
史上最強のスキル”好きなキャラクターの見た目と能力のコピー”が、自分にも使えればなぁ……。
「マーフィもよくやってくれた。流石はヤドガの娘だ」
「えへへ……」
「宴の準備……といいたいところだが、今村を救った者に必要なのは祝杯ではなく休息だろう。今日はもう休むがよい」
「はい」
「ありがとうございます」
僕は自分の無力さをかみしめながら返事をすると、僕とリリィお姉ちゃんはマーフィちゃんと別れた。
それにしても、僕の能力って本当にこれだけなのかな。
自分以外の誰かに頼った能力が史上最強……なわけない。
もっと何かあるはず。
そう思いながら、リリィお姉ちゃんの手を握り、客人用のテントに戻った。




