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 雄叫びをあげた巨人が、どしりどしりと地面を揺らしながらこちらへ向かっている時だった。


「おい、リュート。これを使え」

 マーフィの父親であり集落一番の狩人でもあるヤドガさんが、低い声でそう言いながら自身が持っていた槍をイケメン戦士リュートへ手渡そうとする。


「ヤドガさん、いいのですか?」

 槍はそれぞれ一本ずつしか持っていない。

 つまり、渡してしまえば自分が丸腰になってしまう。

 あのイケメンが負けるなんて想像もつかないけれど、もしも何かあったら……。


「おいらがいくよ! おいらなら武器がなくても大丈夫だよ!」

 そうだよ!

 武器が無くても、ケガレを一撃で倒したマーフィちゃんならきっと何とかしてくれるかもしれない。

 ここはマーフィちゃんに任せるべきなんだ。


 僕は、何も言わず何度か頷いた。

 その時だった。


「お前は下がってろ!!」

「ふひぃっ」

 ヤドガさんは、大声をあげて娘の言葉を封じた。

 怒鳴られたマーフィちゃんは、体を震わせて今にも泣きそうだった。


 どうしてそんなに厳しく言うんだろう。

 ましてや女の子なのに……。

 僕はそう思いつつも、マーフィちゃんを慰めようと彼女の肩に手を置いた。


「リュート、集落一の戦士として、しっかり戦ってこい」

 ヤドガさんは傷心の娘を無視して真剣な面持ちのまま、イケメン戦士に再び自身の得物を差し出した。

「分かっていますよ。もう遅れはとりません」

 戦士リュートも、口角をあげて瞳に強い輝きを宿しながら、ヤドガさんの槍を受け取った。


 その後、二人は無言で頷くと……。


「全員リュートとリラから離れろ!! 残りの者は俺について来い!!」

 ヤドガさんの合図と共に、広場に戦士リュートと巫女のリラお姉ちゃんを残し、僕とリリィお姉ちゃんとマーフィちゃんはヤドガさんについて行った。


 集落の勇者とヒロインが広場に残ってくれたお陰か、僕達は難なく近くの岩陰に身を隠せた。


 その直後、今までこの状況を見守っていたリリィお姉ちゃんは、いつもの穏やかな表情のままヤドガさんに話しかけた。


「あの、ヤドガさん」

「どうした? リリーシア殿」

「私が不思議な力で、あの巨人をどうにかしてみます」

 リリィお姉ちゃんの魔法なら、きっとあの巨人だって倒せるはずだ。

 根拠は無かったけれど、そんな気がしてならなかった。

 だから僕は、無言で何度も頷いた。


「……あなたも戦士の誇りに傷をつける気か?」

 リリィお姉ちゃんの提案を聞いた瞬間、ヤドガさんは眉をひそめながら目を細めて……。


「そこで見ていて欲しい。我々がケガレを打ち倒すところをな」

 ヤドガさんはそう一方的に告げた後に、リリィお姉ちゃんから背中を向けた。


 そのやり取りの直後、リリィお姉ちゃんは僕の耳へ顔を近づけると……。

「タロ君」

「うん?」

「私、魔法の準備するから、何かあったらお願いね」

 そう耳打ちをして、にこッと一回だけ微笑みかけた後、目を閉じて真剣な表情をした。


「いくぞ! リラ!」

「ええっ!」

 広間に残ったイケメン戦士と美人巫女が、互いを鼓舞しあう様が見える。

 怪我も治ったし、二人ともやる気に満ち溢れている。


 この調子なら、案外巨人を倒してくれるかもしれない……?

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