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僕はそう叫ぶと、ゆっくりと立ち上がりリリィお姉ちゃんへと近づいていく。
「ねえ、なんで……、どうして……」
今まで僕に攻撃をしてきたお姉ちゃんの手が止まった。
冷徹な表情には、明らかな動揺と困惑があった。
だがそれでも、いやそうだからこそ僕は前へ前へ進んだ。
「私なんか放っておいてくれればよかったのに……」
ここで手放してしまえば、また昔の僕に逆戻りだ。
お姉ちゃんも救えない、僕も納得がいかない。
だから、僕は見過ごさない。
逃がさない。
お姉ちゃんの手をしっかり取るんだ。
「あなたさえ……、あなたさえ居なければ!」
僕はそう思いながらゆっくりと近づいていく時、今まで攻撃を躊躇っていたお姉ちゃんは、遂に腕をあげて振り下ろす。
蛇のようにうねる刃が、僕の体を切断しようと襲い掛かってきた。
しかし、それはわずかに残っていた鎧の破片によって阻まれてしまい、僕は血を流しながらもどうにか攻撃に耐える事成功した。
「…………っ!!」
そして距離を詰めた僕は、お姉ちゃんを両手でぎゅっと抱きしめた。
「お姉ちゃん、大好きだよ」
この温もり、優しさ。
僕はお姉ちゃんが大好きなんだ。
だからもう離さない。離してたまるか。
死んだって、殺されたって、二度と……。
二度とッ……!!!
…………。
…………。
…………。
…………。
あたりは静かだった。
鞭を振るう風切り音も、鎧に当たった時の金属音も、声も無かった。
…………。
…………。
…………。
…………。
それからしばらくの沈黙の後。
僕は、お姉ちゃんの腕に抱かれるような感覚に包まれると……。
「……ありがとうね」
そうそっと告げられた。
「お姉ちゃん!! 元に戻ったの?」
僕は慌てて離れて、お姉ちゃんの顔を見た。
姿こそは今までと同じだけど、表情に冷たさは一切ない。
僕と一緒に旅したリリィお姉ちゃんであり、僕に唯一優しかったユリお姉ちゃんのものだ。
「うん」
「良かった……、本当に良かった……」
駄目だ、優しいお姉ちゃんをもっとみたいのに。
涙が止まらなくて、目の前ぼやけてなんもみえないよ……。
そうだ、願いはかなったんだ。
僕の史上最強のスキルによって、お姉ちゃんは元に戻ったんだ。
これで全てが解決した、ようやく……。
「最後に、あなたに抱かれて良かった」
そう思った時だった。
お姉ちゃんは、くしゃくしゃになった僕の髪をなおしながら、そう言った。
「最後? お姉ちゃんが戻ったら全てが解決する、世界の崩壊も……」
「…………」
「そっか、世界が消滅するのが本来の流れで、僕はそれを捻じ曲げてしまった。その矛盾を正すために結局……」
「うん。もう私やタロ君じゃどうしようもないの」
僕の史上最強のスキルのリスク。
それが原因で世界は滅茶苦茶になってしまった。
そしてそのリスクは消えない。
それどころか、本来消滅するお姉ちゃんを救ってしまったのだから、どんなしっぺ返しが待っているか想像もつかない。
このまま、世界は終焉を迎えてしまうのか?
折角お姉ちゃんを取り戻せたのに、ここで終わってしまうのか?
お姉ちゃんと世界の両方は無理なのか?
結局、大きな力には抗えないという事か……?
「くそっ! くそっ……!!!」
僕は無慈悲な世界の仕組みを呪った。
こんな世界を創った神を恨んだ。
「……っ!!」
だが、それと同時にある一つの閃きがあった。
「タロ君……?」
「……一つだけ、方法があるよ」
僕の予想が正しければ、リリィお姉ちゃんも世界も両方救える。
唯一無二の方法。
「今度はリリィお姉ちゃんの願いをかなえるからね」
それを行うために、僕は史上最強のスキルを使った。
意識は白くなり、僕はその場に倒れて動かなくなった。




