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翌日。
支度を終えた僕とリリィお姉ちゃんは、一足先に集落の入り口で待っていた。
朝も早いせいか、まだ他の集落の人は居ない。
「ねえお姉ちゃん」
「うん?」
今度の相手は人間じゃない、正真正銘の怪物だ。
昨日はあんな強い事言っちゃったけれど、やっぱり怖いし不安だ。
だから僕は、リリィお姉ちゃんの胸へと飛びこんだ。
「よしよし、甘えたさんだね」
そんな僕の不安を、リリィお姉ちゃんは優しく受け止めてくれた。
ほんの少しだけ、僕の心の震えがおさまった気がした。
「お待たせしました! リリーシア様」
もっとお姉ちゃんとくっついていたら、不安も完全にとれていたのかもしれない。
だが、イケメン戦士と美人巫女の二人が来ると、僕はリリィお姉ちゃんから離れた。
「おまたせだにゃー」
「待たせてすまなかった」
間をおかずに、マーフィちゃんとその父親、そして集落の長やその他の人々も到着する。
「じゃあ頼むぞ」
『はい!』
長は神妙な面持ちのまま、真っ直ぐ僕達の方を向いたままそう告げると、僕達は一言返事をした後に集落の人々に見送られながらケガレ討伐へと向かった。
ケガレが現れたと言われている、火口へ向かう道中にて。
「ここから道なりに歩いて行けば、ケガレが現れた火山へ到着します」
イケメン戦士リュートが、僕達(主にリリーシア)に案内をしながら歩いて行く。
とても爽やかで感じがいいけれど、やっぱり僕はこの人が好きになれない。
「奴等が現れてから、集落の者は誰一人近づいておりません」
「つまり、今はどうなっているか分からないって事ね」
「はい」
きっと転生前の世界だったら、リリィお姉ちゃんはこういう人と付き合うんだろうなぁ……。
僕になんか目もくれずに。
はぁ、何考えてるんだろう……。
もっと別の事を考えよう、この人を見てるとどうも気持ちが暗くなってしまう。
「それにしても……。マーフィちゃんはその格好のままなの?」
僕は、相変わらず猫猫拳夢に出てくる白昼猫の格好をした、マーフィちゃんを見ながらそう言った。
「変かにゃ?」
「ううん、似合ってるよ。でも最初違和感があるって言ってたから」
「そりゃあ、最初はぴちぴちしてて変な感じだったにゃ。でも今はこっちの方がおちつくにゃ」
「俺は着替えろと言ったのだが……」
「嫌にゃ! おいらはこの格好がいいにゃ!」
どうやらこの服装が気に入っているようだ。
僕が変えたなんていったら、きっとこの父上に怒られるんだろうな。
黙っておこう。
「口調もおかしいし、おじじ様に聞いても原因が分からなかった。病や祟りではないとは言われたが、やれやれどうしたものか……」
「あはは……」
というか、史上最強のスキルでフィクション内のキャラクターを再現しましたなんて、言っても分からないよね。
そう思いながら、困り果てるマーフィの父親を見つつも、僕は苦笑いをした。




